News Release

2007年12月10日


準ミリ波帯高速無線用高集積3次元MMICを開発
〜 従来のMMICの20倍の集積度を実現 〜


 日本電信電話株式会社(以下、NTT、東京都千代田区 代表取締役社長:三浦惺)は、準ミリ波帯※1無線機に使用される高周波送受信部の約30回路をわずか3mm角に高集積化した3次元MMIC (Monolithic Microwave Integrated Circuits)※2図1)の開発に成功しました。
 NTTの未来ねっと研究所(以下、NTTの研究所)が開発した3次元MMIC(図2)は、従来のMMIC上に、多層の誘電体と金属配線を設け、この金属配線を電磁的に結合、あるいは分離することで極めて集積度の高いMMICを実現する技術であり、今回、本技術を用いて従来の約20倍の高い集積度を実現しました。アナログ高周波回路であるMMICは、デジタル回路と比較して高集積化が非常に難しいという課題がありますが、この技術により、準ミリ波帯無線装置の無線部をわずか数個のICで構成できるようになり、装置の小型化、経済化が可能となります。
 今回の成果は、マイクロ波分野の主要国際会議であるAPMC2007※3にて発表を行います。


【開発の背景】
 現在ブロードバンドの普及に伴い、高速なデータ伝送が可能な、準ミリ波帯やミリ波帯と呼ばれる非常に高い周波数帯の使用が注目を集めています。NTTでも準ミリ波帯固定無線アクセス(FWA※4)システム(図3)を開発しています。このシステムは、電柱などに設置されるアクセスポイント(AP: Access Point)とお客様宅のベランダなどに設置される加入者局装置(WT: Wireless Terminal)から構成されるP-MP(Point-to-MultiPoint)タイプのシステムで、光ファイバと無線を組み合わせてブロードバンドサービスを提供するものです。
 しかし、この準ミリ波帯のような高い周波数帯の信号は、波長が短いためプリント基板上の線路が分布定数線路として作用して回路の特性に影響を与えることがあるなど、その取り扱いが難しく、装置の小型化、低価格化が困難でした。このため、準ミリ波帯の信号をIC内部で処理できるよう、高周波部の抜本的な高集積化が求められていました。


【技術のポイント】
1. 準ミリ波帯無線機に使用される高周波送受信部の約30回路を、3mm角に高集積化した3次元MMICを開発
2. 局部発振器※5用の周波数4逓倍器※6およびドライバ増幅器を集積化した3次元MMICも同時に開発
3. 従来技術の約20倍の高い集積度を実現。

 アナログ高周波回路は、雑音や妨害信号に弱く、またインピーダンス整合※7を行う必要があるため、デジタル回路に比べ小型・高集積化が困難でした。NTTの研究所では、このアナログ高周波回路の高集積化を実現する技術として、3次元MMIC技術の開発を行ってきました。この技術は、従来のMMIC上に多層の誘電体と金属配線を設け、電磁界を狭い範囲に閉じこめることにより線路間隔を従来の約1/10に狭めることが可能な伝送線路(図4)、多層化して電磁界結合させることにより小型化した結合線路(図5)、多層化し小型化したインダクタ※8等、立体的な構造を利用した素子を作成し、非常に集積度の高いMMICを実現しています。3次元MMICは、準ミリ波帯低雑音増幅器、受信用周波数変換器、および、中間周波数帯の信号を増幅するマイクロ波帯増幅器等の受信用の回路、ならびに、電力増幅器前段の準ミリ波帯ドライバ増幅器、送信用周波数変換器等の送信用の回路に加え、局部発振器用の周波数逓倍器等も含め、高周波送受信部のほぼ全ての回路をわずか3mm角に集積化しています。また、回路的な工夫により電圧反転回路をMMIC上のトランジスタと抵抗で実現することに成功し、内蔵ステップアッテネータを制御することで、受信利得制御や送信電力制御にも対応可能となっています。
 さらに、低価格な部品が入手しやすい3GHz帯の電圧制御発振器を利用できるよう、局部発振器用の周波数4逓倍器およびドライバ増幅器を集積化した3次元MMICも同時に開発しました。
 従来の方法で作成したMMICでは、例えば60GHz帯(波長5mm)でほぼ同じ機能を実現したものが合計チップ面積約46mm2であったのに対し、今回開発した3次元MMICでは、26GHz帯(波長12mm)において合計面積約12mm2に集積化し、波長が2倍以上であるにもかかわらず、従来の約25%という極めて小さな面積を実現しており、波長で正規化した集積度は約20倍になります。また、送信利得20dB以上、受信利得40dB以上、雑音指数3.4dB、消費電力約0.5Wと、優れた高周波特性を達成しています。


【今後の展開】
 準ミリ波帯・ミリ波帯の無線機がIC数個で構成出来るようになるため、FWAシステム加入者局装置の小型化・低コストが可能となります。これにより、光ファイバの導入が困難な場所でも、安価にかつ短期間でブロードバンドサービスの提供・利用が可能となるため、デジタルデバイドの解消にも貢献できます。
 また、WPAN※9などの個人向け近距離高速無線端末の実現も可能になります。


【用語解説】

※1  準ミリ波帯:
  波長がミリメートル単位になる手前の周波数帯。概ね18GHzから30GHzまでをさす。なお、波長がミリメートル単位になる周波数帯(30GHzから300GHz)をミリ波帯と呼ぶ。

※2  MMIC (Monolithic Microwave Integrated Circuits):
  半導体基板の上に能動素子(トランジスタやダイオードなど)と受動素子(伝送線路、抵抗、容量、インダクタなど)を一体化したマイクロ波回路。

※3  APMC (Asia-Pacific Microwave Conference) 2007:
  マイクロ波分野の主要国際会議の1つ。年に1回、アジア・太平洋地域各国の持ち回りで開催されており、2007年はタイ(バンコク)にて12月11日から14日まで開催。

※4  FWA (Fixed Wireless Access):
  固定無線アクセス。基地局と固定場所に設置した加入者局装置を接続する無線システム。有線システムと比較して、迅速かつ低コストにネットワークを構築できる。

※5  局部発振器:
  周波数変換器において周波数変換を行う際に必要となる信号(局部発振信号)を生成する発振器。

※6  4逓倍器:
  信号の周波数を倍の周波数に変換することを逓倍といい、信号を4倍の周波数に変換する回路を4逓倍器という。

※7  インピーダンス整合:
  インピーダンスとは、交流回路における電圧と電流の比であり、直流回路における電気抵抗に相当する。高周波回路では、インピーダンスが合っていないと信号の反射が起こり、うまく伝達されない。このため、回路同士のインピーダンスを合わせる(整合する)必要がある。これをインピーダンス整合という。通常は50Ωに整合する。

※8  インダクタ:
  高周波回路において、いわゆるコイルの働きをする素子の総称。

※9  WPAN (Wireless Personal Area Network):
  数m程度の狭いエリアで超高速な無線接続により構築される無線ネットワーク。



図1 開発した3次元MMICの写真とブロック図
図2 3次元MMICの構造
図3 固定無線アクセス(FWA)によるブロードバンドサービスのイメージ
図4 立体構造を利用し線路間隔を狭めた伝送線路
図5 多層化した結合線路



<本件に関する問い合わせ先>
NTT先端技術総合研究所
(NTT未来ねっと研究所)
企画部 広報担当
飯塚、河合
TEL:046-240-5157
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact


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