NTTエレクトロニクス株式会社(以下NEL、本社:東京都渋谷区道玄坂、代表取締役社長:戸島知之)は、日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦惺)が研究開発した、高速高周波半導体集積回路の技術開示を受けて、超高速スイッチングが可能なインジウムリン(InP)系1×4スイッチICチップおよび8×8スイッチモジュールを製品化し、6月1日よりサンプル販売を開始します。
本製品は、NTTが開発したInP系高速トランジスタ技術と、回路構成技術を用いて実現されたデバイスの小型集積化技術を基に、NELが今までに培ってきた製造技術により、デバイスの信頼性を確保して製品化したものです。
本製品を用いることで、ルータなどの高速ネットワーク機器や計測機器、ハイビジョン映像を伝送するミリ波無線通信装置などに使用されている、数Gbpsから40Gbpsに至る広帯域電気信号を数μW(マイクロワット:100万分の1ワット)程度の低消費電力で高速にスイッチングできます。 |
1.開発の背景 |
 | スイッチは、通信ネットワーク機器において、信号の経路切替を担う重要な部品であり、情報通信システムの一層の高度化を実現するためには、スイッチの高速化・大容量化が強く求められています。FET(電界効果トランジスタ※1)を用いた半導体スイッチは、消費電力がほぼゼロであるという特徴があるとともに、デジタル・アナログを問わず電気信号の経路切替えもできるため、携帯電話などの無線通信機器の送受信切替えなどを担う重要な部品として多く利用されています。
現在使われているシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)を素材としたFETを用いた半導体スイッチでは、スイッチON時の抵抗とOFF時の静電容量がそれぞれ大きいため、動作帯域や端子数が制限されていました。そのため、10Gbps級の大規模マトリクススイッチや40Gbps級の広帯域スイッチの実現は非常に困難でした。
NTTでは、これらの問題を解決するために、ON時の抵抗を増大させず、且つOFF時の静電容量を減少できるデバイスの開発を進めてまいりました。 |
2.本製品の特徴 |
 | (1)消費電力がほぼゼロ |
|  | FETを用いた半導体スイッチのため、消費電力はほぼゼロで信号をオン・オフすることができます。 |
 | (2)信号プロトコル/フォーマット無依存 |
|  | アナログスイッチですので、入力された信号をほぼそのままの形態で出力します。あらゆる信号プロトコルやフォーマットで利用することができ、無線信号も扱うこともできます。 |
 | (3)スイッチの広帯域化と接続端子数の増加に成功 |
|  | InP‐HEMT(※2)デバイスを用いたことで、従来のシリコンやガリウム砒素を材料に作られたスイッチと比較して、2倍以上の広帯域化および接続端子数の増加が可能となりました。 |
 | (4)高速切替えが可能 |
|  | InP‐HEMTスイッチの高速切替え特性により、モジュールレベルでも10ns(ナノ秒:ナノは10億分の1)以下の高速切替えが可能です。 |
 | (5)高信頼性を実現 |
|  | スイッチICの通信用部品レベルの信頼性を実現しています。 |
 | これらの特徴により、本製品によって、ハイビジョン映像の信号を無線で伝送するシステムの信頼性向上や、ルータ等高速ネットワーク装置の小型化・低消費電力化を実現するとともに、10Gbpsを超える超高速信号の伝送特性を評価できる計測機器などへの適用が期待されます。 |
3.本製品の概要 |
 | (1)計測器用1×4スイッチICの概要(別紙1)回路構成:図1、IC概観:写真1 |
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InP‐HEMTによる広帯域特性 >40GHz |
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低損失 <1.5dB(DC〜10GHz) |
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小型(外形寸法:1.5mm×2mm) |
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(2) |
8×8スイッチモジュールの概要(別紙2)モジュール構成:図2、モジュール概観:写真2 |
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低損失 <6dB、高アイソレーション(OFF遮断特性)>25dB(0.1-4GHz) |
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高速切替え:切替え時間<10ns(ナノ秒) |
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信号端子(入力8、出力8、SMAメスコネクタ) |
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制御信号インターフェース(LVDS※3) |
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4.販売時期および販売価格 |
 | 6月1日より、サンプル販売開始
| (1)1×4スイッチICチップ |
: 13万円 |
| (2)8×8スイッチモジュール |
: 250万円 |
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5.利用例 |
 | (1)高精細ハイビジョン映像無線伝送カメラシステム(別紙3) |
|  | 複数のアンテナから、受信状態の良好な信号を高速で選択できるため、移動するワイヤレスカメラからの高精細映像信号を、途切れることなく無線伝送することが容易になります。 |
 | (2)ルータなどの高速ネットワーク機器 |
|  | マルチレート対応且つ、低消費電力であるため、高速ネットワーク機器の汎用化や小型化などに貢献します。 |
6.技術のポイント |
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| (1)デバイスとしてInP‐HEMTを適用 |
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InP‐HEMTは、電子輸送特性の優れたインジウムガリウム砒素(InGaAs)チャネル層を備えているため、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)素子の基板上のFETと比較して、スイッチ素子としてのON時の抵抗を約半分以下に下げることができます。これにより、スイッチの動作帯域を1×2スイッチで2倍、1×4スイッチで2.5倍、1×8スイッチで3倍以上にすることが可能です。例えば、1×4スイッチICでは、40Gbps級動作が可能な超広帯域特性を実現しています。 |
| (2)入出力スイッチを従来より大幅に小型化できる回路構成を実現 |
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n入力n出力スイッチを従来の1/2nに小型化できる回路構成を考案し、8×8スイッチを0.4mm2の領域(従来比のわずか6%)に集積化することを実現しています。また、複数の超小型2×2スイッチ(0.09mm2)を集積化した大規模スイッチICも実現しています。 |
(3) |
ナノ秒(ns)オーダーでの高速切替えが可能な多端子スイッチモジュールを実現 |
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所要制御端子数を削減し、且つ、制御タイミングを均一にすることができるモジュール構成技術を適用することで、汎用的な制御インターフェースであるLVTTL※4信号でナノ秒(ns)オーダーの高速切替えが可能なスイッチモジュールを実現しています。 |
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7.今後の展開 |
 | NELでは今回のサンプル販売を通じてお客様からの要望をお聞かせいただき、スイッチの高速性・広帯域性を活かしたさらなる利用分野に応えられる製品の開発に取組んでいく予定です。 |
【用語解説】 |
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| ※1 |
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FET(Field Effect Transistor) |
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ゲート、ソース、ドレインの3端子からなる電界効果トランジスタです。ソースからドレインに流れる電流をゲートに印加する電圧で制御する電圧制御型トランジスタです。半導体スイッチでは、ソース−ドレイン間を等電位で使用するため、消費電力がほぼゼロのスイッチを実現できます。 |
※2 |
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InP‐HEMT |
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InP(Indium Phosphide)は、化合物半導体の一種でインジウム燐の略です。材料物性的な特徴を活かして発光受光素子などの光デバイスや超高速高周波電子デバイス用の半導体基板などに使用されています。 HEMT(High Electron Mobility Transistor)は、高電子移動度トランジスタのことです。電子供給層と電子走行層を分離することで超高速高周波動作を可能にしたFETです。 |
※3 |
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LVDS(Low Voltage Differential Signaling) |
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低電圧差動信号インターフェイスのことです。米National Semiconductorがフラットパネルディスプレイ用に開発した高速ディジタル伝送方式です。 |
※4 |
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LVTTL(Low Voltage Transistor Transistor Logic) |
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低電圧トランジスタ−トランジスタロジックの略です。電源電圧を3.3VとしたTTL(Transistor Transistor Logic)であり、0.8V以下の電圧を論理「L」、2.0V以上を論理「H」として扱います。各種ICやインターフェースレベルに多用されています。LVTTLとLVDSは市販部品を適用することで互いにレベルを変換することが可能です。 |
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