News Release

2009年7月16日
日本電信電話株式会社


7.22皆既日食のライブ中継伝送にNTTの伝送技術を集結
〜 日食を遠隔地で高臨場体感・体験 〜


日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦惺)は、超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(以下:URCF)と協力して、7月22日(水)に奄美大島で観測される皆既日食の模様を、HD映像と世界初の試みとして4K超高精細(以下、4K)全天映像でライブ配信します。NTTは、次世代映像コンテンツ伝送技術を実現するための研究開発を推進しており、4K解像度からモバイルサイズにわたる映像を、様々な映像再生環境とネットワーク環境に応じて最適に伝送できる高精細映像伝送システムを開発しました。本ライブ配信において開発したシステムの実証実験を行います。


【背景】
 NTTでは、インターネットの普及により、高まるIPサービス環境の実現に重要となる、セキュアかつ高品質な次世代映像コンテンツを流通させる技術として、4K映像※1からモバイルサイズにわたる映像を、高効率に伝送する画像圧縮技術や高品質な大容量画像データを素材として加工せずに伝送する非圧縮映像伝送技術などの研究開発に取り組むと共に、商用IPネットワークなどを用いた実証実験を進めています。
 今回、7月22日に奄美大島で観測される皆既日食の4K全天映像を天空丸ごと再現する超臨場感プラネタリウムであるドームシアター(ABCホール(大阪市)、大阪市立科学館(大阪市)、けいはんなプラザ(京都府)、つくばエキスポセンター(つくば市))へJGN2plus※2やSINET3※3などで構築されたIPネットワークや広帯域無線で配信し、日食の瞬間を高臨場体感していただく他、皆既日食のHD映像伝送やワンセグ端末に日食映像を配信する実験を行います。


【伝送実験の概要】
 NTTの4K解像度からモバイルサイズに対応した種々の映像コーデック技術と映像伝送技術、広帯域無線伝送技術を結集し、映像の再生環境に適した解像度の映像を、ネットワーク環境に応じた速度や方式で最適に伝送できる高精細映像伝送システムを開発しました。また朝日放送株式会社(大阪市)内のJGN2plus-PAP (Partnership Access Point)に「映像素材交換拠点(大阪)」を設置する事で、中継先からの映像素材を集約し、多地点の上映箇所への効率良い配送を行える他、映像コーデック変換や他の日食撮影プロジェクトとのライブ映像素材の相互交換を可能としました。

(1) 映像素材交換拠点(大阪)の構築
 高速IPネットワークと「4K非圧縮映像伝送装置i-Visto Gateway XG-1」※4や「HD非圧縮映像伝送装置 XG-2」※4を用いて、4KやHDの非圧縮映像や各種圧縮形式に対応した映像素材交換拠点(大阪)を構築しました。映像素材交換拠点(大阪)では、奄美大島からの4Kライブ映像およびHDライブ映像をはじめ、各地の日食撮影プロジェクトから6本の映像ストリーム(計6.6Gbit/s)を集約し、14本の映像ストリーム(計18.2Gbit/s)として各地の上映拠点に配送します。

(2) 4K全天映像の多地点配信
 奄美大島で、魚眼レンズをつけた4Kカメラで撮影した全天映像を、ABCホール、けいはんなプラザ、つくばエキスポセンターの3地点に同時配信し、ドームシアターで上映します。
 4K全天映像は、奄美大島と鹿児島のネットワーク帯域に応じて「4K映像IPストリーミングシステム」※5で6 Gbit/sから90 Mbit/sにリアルタイムで圧縮され、4K映像ストリームとしてネットワークに送出されます。この4K映像ストリームを「広域自律分散マルチキャスト技術Flexcast」※6を用いてネットワーク内で分岐し、映像素材交換拠点(大阪)、けいはんなプラザ、つくばエキスポセンターに配信します。配信先の映像素材交換拠点(大阪)とけいはんなプラザでは「4K映像IPストリーミングシステム」を使って4K全天映像を伸張し、ABCホールの4Kドームシアター、けいはんなプラザの4Kドームシアターで上映します。また、つくばエキスポセンターでは、「4K映像IPストリーミングシステム」で4K映像ストリーミングからHD成分を抽出してHD全天映像に伸張し、HDドームシアターで上映します。

(3) HD皆既日食映像の多地点配信
 奄美大島で撮影したHD解像度の皆既日食映像をABCホール、けいはんなプラザ、つくばエキスポセンターの3地点に同時配信し、HDプロジェクタでの上映とワンセグ配信を行います。
 HD解像度の皆既日食映像を奄美大島と鹿児島のネットワーク帯域に応じてH.264コーデックを用いて圧縮し、奄美大島から映像素材交換拠点(大阪)まで伝送します。映像素材交換拠点(大阪)で一旦伸張されたHD映像をNTTが開発した「スケーラブル映像圧縮リアルタイム処理ソフトウェア(SVC)」※7(2009年2月報道発表)を用いて再圧縮し、圧縮した映像ストリームを「Flexcast技術」を用いてネットワーク内で分岐し、ABCホール、けいはんなプラザ、つくばエキスポセンターに配信します。各配信先では、受信した圧縮映像ストリームをHD解像度の映像とSD解像度の映像に伸張し、HD解像度の映像はHDプロジェクタに上映し、SD解像度の映像はワンセグ配信を行います。また、本ソフトウェアには、ネットワークのパケットロスに対応するために高能率低負荷を特徴とするLDGM-FEC技術※8も用いています。

(4) 4K全天映像とHD映像の非圧縮多重無線伝送
 映像素材交換拠点(大阪)で伸張された4K全天映像とHD解像度の皆既日食映像は、「4K非圧縮映像伝送装置i-Visto Gateway XG-1」、「HD非圧縮映像伝送装置 XG-2」と「120 GHz帯ミリ波伝送システム」※9を用いて、川、道路などを越えて約400m離れた大阪市立科学館に無線伝送を行います。4K超高解像度とHD解像度の日食映像を非圧縮(4K:6Gbit/s、HD:1.5Gbit/s)のまま多重し無線伝送しており、1対向の無線装置を設置するだけで画質劣化なくリアルタイムに大阪市立科学館に高精細日食映像を伝送しています。大阪市立科学館で受信された4K全天映像はドームシアターで、HD解像度の皆既日食映像はHDプロジェクタで上映します。
(120 GHz帯ミリ波伝送システム研究の一部は総務省からの受託研究【電波資源拡大のための研究開発】として実施しています。)


【今後の予定】
 今後も、商用ネットワーク上での実証性の検証を行い、ネットワーク環境や再生環境に応じた、最適な伝送方式で最適な映像を配信する、高品質な次世代映像コンテンツ流通技術の確立を目指していきます。


<用語解説>
※1 4K超高精細映像
 4K映像とは、横方向に約4000画素、縦方向に約2000画素で1画面あたり約800万画素からなる映像のことで、1920x1080の画素数で規格化されているHD映像に対して、その四倍角に当たる3840x2160画素の映像と、デジタルシネマ規格での4096x2160画素の映像の二種類がある。本実験は前者を用いている。またデジタルシネマ規格の2K映像は画素数を2048x1080と定めている。

※2 JGN2plus
 独立行政法人情報通信研究機構が、運用する研究開発テストベッドネットワーク。

※3 SINET3
 日本全国の大学、研究機関等の学術情報基盤として、国立情報学研究所が構築、運用している情報ネットワーク。

※4  4K非圧縮映像伝送装置i-Visto Gateway XG-1、HD非圧縮映像伝送装置 XG-2
 IPネットワーク技術を用いて4KやHDの映像を非圧縮のままリアルタイム伝送可能な装置。映像素材を非圧縮のまま扱えるため、映像符号化による品質劣化や処理遅延がないのが特徴。

※5 4K映像IPストリーミングシステム
 4K映像信号をリアルタイムに符号化・復号しIP伝送するシステム。映像符号化方式にはJPEG 2000を用い、遅延の少ない映像伝送が可能。JPEG 2000方式によるスケーラブル伝送機能があり、圧縮された4K映像ストリーミングからHD解像度の映像を復号する。また、内蔵ストレージを利用して録画ができ、録画した映像の再生や配信機能も有する。また、パケットロスに対応するために超高速エラー訂正技術LDGM-FEC※8を搭載している。

※6 広域自律分散マルチキャスト技術Flexcast
 NTTが開発した、通常のIPユニキャスト網上で自律的に経路を構築してマルチキャスト機能を実現する技術。ネットワーク内にFlexcastストリーム分岐装置を配備し、ストリームを構成する各IPパケットについて、パケット内容を必要な分岐数分だけ複製(コピー)し、それぞれに異なる配信先アドレスを付与して送出する。

※7  スケーラブル映像圧縮リアルタイム処理ソフトウェア(SVC: Scalable Video Coding)
 スケーラブル映像圧縮とは1つの圧縮データから異なる複数の解像度やビットレートの圧縮データを取り出すことができる技術。NTTが開発した「スケーラブル映像圧縮リアルタイム処理ソフトウェア」(2009年2月報道発表)は、フルHDからモバイルまでの様々な解像度映像をリアルタイムで1つの圧縮データにすることが可能。

※8 LDGM-FEC技術
 パケット損失を修復するための誤り訂正技術の一つ。大きなデータ単位で高速に符号化処理を行うことが可能。

※9 120GHz帯ミリ波無線伝送
 商用で未利用な120GHz帯を用いた最大10Gbit/sのデータ伝送が可能な無線伝送技術であり、非圧縮4K映像信号(6Gbit/s)と、非圧縮HD映像信号2ch分(1.5Gbit/s×2)を多重して伝送する。川、道路越えといった光ファイバの敷設が困難な場合でも、本無線を利用することにより短時間でポイント-ポイント間の大容量伝送回線の構築が可能。



別紙 <全体構成図>



<本件に関する問い合わせ先>
日本電信電話株式会社
広報室
Tel:03-5205-5550
<技術に関する問い合わせ先>
伝送実験技術(1)(2)(4)について
NTT先端技術総合研究所企画部広報担当
Tel:046-240-5157
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact.html

伝送実験技術(3)について
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所
企画部広報担当
Tel:046-859-2032
E-mail:randd@lab.ntt.co.jp


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