News Release

2009年9月16日


大幅な低電力化が可能な光電子融合型光パケットルータを開発
〜光信号と電気信号の利点を活かした新型ルータ〜


 日本電信電話株式会社(以下:NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺)は、将来の高速大容量光パケットスイッチネットワークを目指し、消費電力ならびに遅延を大幅に低減させる、光の高速性と電気の機能性を融合した光電子融合型光パケットルータ技術を確立し、同技術を用いて作製したプロトタイプにより消費電力の低減、および信号変換に伴うデータの遅延の大幅な低減を実証しました。
 今回作製したプロトタイプは、今までにNTTのフォトニクス研究所(以下、NTTの研究所)が開発した様々な光デバイス技術を集積して光ラベル処理器、波長ルーティング型光スイッチ、光電子融合型共有バッファを実現しており、光信号のもつ高速大容量、低遅延性と電気信号のもつQoSサービスやマルチキャストなどの高機能性を効果的に融合した特徴をもっています。
 これにより、現在の電気ルータでは全ての光パケットを電気に変換して処理する必要があるのに対して、本技術では、光電気変換を最小限に削減できるため、将来的に消費電力(1/10)ならびに遅延(1/100)を大幅に低減できる可能性があり、将来の高速大容量光パケットスイッチネットワークの実現に大きく前進することが期待されます。

 本成果は、9月15日からイタリア(ピサ)で開催される国際会議Photonics in Switching(PS2009)および9月21日よりオーストリア(ウィーン)で開催される国際会議European Conference on Optical Communication(ECOC2009)にて発表されるとともに、ECOCの展示会にて本パケットルータの動態展示を行う予定です。
 なお、本プロトタイプの構成要素の一つである光電子融合型共有バッファは、独立行政法人情報通信研究機構(NICT、理事長:宮原 秀夫、本部:東京都小金井市)の委託研究の成果を用いております。


【背景】
 今日、IPTVやビデオオンデマンドなど、大容量データ通信サービスの利用が急速に進み、ネットワークを流れるトラヒック量は爆発的に増加しています。このような情報通信環境の変化に対応するため、サーバやルータなどのIP系装置の処理能力の高度化が進んでいますが、装置の消費電力や遅延時間、サイズなどが大きな課題となっています。また、膨大なデータのやりとりを行うストレージエリアネットワーク※1(SAN:Storage Area Network)や、ネットワーク上にある分散したコンピュータ資源を活用するグリッドコンピューティング※2などでは、遅延の少ないネットワークが求められています。
 これらの期待に応えるため、高速な光処理技術を導入した光パケットスイッチング技術※3、光パケットルータシステムの研究開発が世界中で進められています(図1)。


【成果のポイント】
 光電子融合型光パケットルータ(図2)は、それぞれ4つの入出力ポート(1ポートあたり4波長)を持ち、光パケットのラベル部分を電気信号に変換して書き換える光ラベル処理器、光パケットのまま波長変換技術を用いて出力ポートを制御する波長ルーティング型光スイッチ、高速な光信号を電気の並列信号に変換し電子メモリで処理する光電子融合型共有バッファで構成されています。
 今回、非同期任意長の10Gbpsバースト光パケットに対する8x8のスイッチング動作を実証しました。(フル実装時には16×16のスイッチングを実現する事が可能です)。

1)光ラベル処理部
 光ラベル処理部(図4)では、NTTの研究所が独自に開発した光クロックトランジスタアレイ(OCTA:Optically Clocked Transistor Array)と呼ばれる光電子回路を用いております。OCTAは、クロック再生機能※4・シリアル信号からパラレル信号への変換機能・パラレル信号からシリアル信号への変換機能を1チップの光電子回路で実現したデバイスであり、極めて高速かつ低消費電力にラベル処理を行うことができます。

2)光スイッチ部
 光スイッチ部(図5)では、二重リング共振器型※5波長可変レーザとAWG※6を用いて波長ルーティング型光スイッチを実現しました。二重リング共振器型波長可変レーザは当研究所で独自に開発したものであり、微小な二重リング共振器を搭載することによって、小さな駆動電流で高速な波長スイッチングと小さな波長ドリフトを実現しました。

3)共有バッファ部
 共有バッファ(図6)では、NTTの研究所が開発した全光シリアル-パラレル変換器で、光パケットを電子回路に書き込みできるレベルまで低速な並列信号に変換します。
 また、衝突回避のための「バッファリング機能」をはじめ、波長レイヤ間をスイッチする「波長変換機能」、パケットを複製する「マルチキャスト機能」、「QoSサービス」、TTLカウントを用いた「3R再生機能」※7などの高度な機能を持つことができます。


【ルーティングの概要】
 入力光パケットは、まず光ラベル処理部に送られ、そこでラベルに付与されたアドレスやQoS、TTL※8などの複数の情報を読み取り、新たなラベルに交換するとともに行き先を切り替えるための制御信号を光スイッチに送ります。光スイッチ部では、ラベル処理部から送られた制御信号により、光パケットの波長が変換され、AWGにより行き先の出力ポートに転送されます。このように光パケットの衝突がない場合は、光のままバッファを通ることなく、極めて小さい遅延時間でルータから出力されます。そして、衝突が起こった場合のみ、一方のパケットを共有バッファで保持することで衝突を回避します。
 このように本ルータでは、光電気変換および電子回路での低速なパケット処理を最小限に削減しているので、従来の電気ルータに比べ、将来的には大幅な低消費電力化(約1/10)と低遅延化(約1/100)が可能となります。


【今後の予定】
 本ルータは、アルカテル―ルーセント(本社:フランス、パリ、CEO:パトリシア・ルーソー)のベル研究所と、昨年5月に締結した共同実験契約に基づき、相互接続のためのインターフェース仕様が設計されています。今後、動作検証のため相互接続実験を進める予定です。
 また、NTTの研究所が開発をしている、個々の光デバイスおよびサブシステム技術では、40Gbps以上の動作実証がすでに得られており、デバイスの更なる高速化・低消費電力化を進めるとともに、光パケットルータシステムの高性能化の研究開発をさらに進展させ、超大容量光パケットスイッチネットワークの実現を目指します。


<用語解説>
※1 ストレージエリアネットワーク
 ハードディスク装置や磁気テープ装置などのストレージと、サーバなどのコンピュータをネットワーク化したシステムであり、膨大な量のデータファイルを保存・活用・一括管理するために使用されます。

※2 グリッドコンピューティング
 インターネットなどの広域のネットワーク上にあるコンピュータ資源を結びつけ、ひとつの複合したコンピュータシステムとしてサービスを提供するものです。一台のスーパーコンピュータでは処理することのできない大規模な計算や大量のデータを保存・利用するための手段として開発されています。

※3 光パケットスイッチング技術
 光通信ネットワークにおいて光信号の切り替えを行う光スイッチ技術の一つです。光通信における最も小さい単位である「光パケット」毎にスイッチングすることで、光ネットワークの帯域を最大限かつ柔軟に活用できる方式です。

※4 クロック再生機能
 処理の同期を取るために光信号からクロック信号を作り直す機能です。

※5 二重リング共振器
 微小な2つのリング状の導波路で構成され、2つのリングの共振が一致した波長で共振が生じ、光のフィルタや反射器として機能します。

※6 AWG
 アレイ導波路による回折現象を利用して、波長によって光の行き先を変える事ができる素子。通信システムにおいて波長合分波器として幅広く用いられています。

※7 「3R再生機能」
 ファイバ伝送などにより劣化した光信号を増幅、タイミング再生、波形整形してきれいな光信号に再生する機能です。

※8 TTL
 Time To Liveの略でパケットの有効期間を表します。ルータはこの値を使ってパケットの転送や破棄を制御します。



図1 電気ルータと光電子融合型光パケットルータの比較
図2 光電子融合型光パケットルータとキーデバイスの外観
図3 光電子融合型光パケットルータの構成図
図4 ラベル処理部の構成図
図5 光スイッチ部の構成図
図6 共有バッファ部の構成図



<お問い合わせ先>

日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所
(NTTフォトニクス研究所)
企画部 広報担当
TEL046-240-5157
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact.html


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