2009年12月9日

日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社


衛星通信を用いたセンサ情報集信システムの実証実験に成功
〜山間、海洋上もカバーするセンサネットワーク実現に前進〜


 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦惺、以下「NTT」)と、NTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和才博美、以下「NTT Com」)は、平成18年度から総務省より「衛星通信用中継器における周波数高密度利用技術の研究開発」*1を受託し、衛星通信を用いたセンサネットワークを構築するための基盤技術開発を進めてきました。
 本研究開発を通じて、NTT、NTT Comの両社は、全国に多数散在するセンサからの様々な観測データを、衛星中継器の限られた周波数帯域を無駄なく利用し、低コストで集信できる「多地点データ集信型衛星通信システム」(図1)を開発しました。このシステムの技術確認を目的として、今回、技術試験衛星VIII型「きく8号」*2を用い、実際の通信衛星を介してデータ集信を行う実験(図2)を行い、洋上を航海する船舶からの各種観測データを集信することに成功しました。
 この実証実験の成功により、「安心・安全な地域社会」、「耐災害社会」を支える基盤を実現する衛星通信を用いるセンサネットワーク構築に向け、大きく前進したと言えます。


1. 本実験の背景
 センサネットワークは、さまざまなセンサをネットワークに接続し、それぞれのデータを組み合わせることでより有益な情報としてデータを活用するための仕組みです。山地、海洋上を含め様々なエリアからの気象、海象、地震などの地球観測情報を集約し、災害予測や復旧に役立てるといった用途などが期待されており、安心・安全な社会を実現するための基盤として注目されています。
 このような全国規模のセンサネットワークの通信手段としては、現在利用されている地上の無線通信に比べて遥かに広域をカバーできる衛星通信が適していると言われています。一方で、多種多様なセンサからのデータは、観測周期やデータサイズ、センサ全体の数が膨大になることから、個別の通信チャネルを割り当てることになり、非常に多くの周波数帯域を必要とします。しかしながら、衛星中継器の帯域幅は限られており、その利用コストは帯域幅に応じて高額となります。また、集信したセンサデータも、個別に監視するだけでは有益な情報とならない場合もあります。
 こういった課題を解決するため、使用する周波数帯域を減らし、多くのセンサデータを集信可能で、かつ集信した多様なデータを組み合わせて利用しやすく加工、配信できる低コストで実用性の高いセンサネットワークの構築が求められていました。


2. 開発技術の特徴
 NTTとNTT Comが開発したシステムは、「(1)高効率チャネル割当技術、(2)高精度周波数同期技術、(3)動的一括復調技術」(図3)などを実装することにより、限られた帯域幅で多様・多数のセンサデータを集信可能とし、衛星中継器利用コストを削減できます。
 また、「(4)環境情報実用化技術」(図4)によって、あらゆるセンサデータに基づく環境情報をインターネット上にて取り扱い可能とするため、利便性の高いサービスを提供可能とします。

(1) 高効率チャネル割当技術
 多様・多数のセンサデータを、それぞれの性質(観測周期やデータサイズなど)に基づいて予めスケジューリングし、高密度にチャネル配置する技術です。各チャネルの帯域幅を動的に変化させることによって、センサデータを隙間なく配置し、帯域幅あたりの集信センサデータ数を最大化できます。

(2) 高精度周波数同期技術
 各地のセンサデータを衛星に向けて送信する観測局の送信周波数誤差を低減することで、チャネル間隔を狭め、帯域幅あたりのチャネル数を増加する技術です。観測局および衛星中継器で生じる周波数誤差を補正することで、周波数誤差を従来技術の1/50以下に抑圧します。

(3) 動的一括復調技術
 高密度にチャネル配置され、動的に帯域幅が変化する多数のチャネルに乗せられたセンサデータを一括受信する技術です。処理対象の帯域幅に応じ、適応的に信号処理能力配分を変更する機能を備えた周波数領域信号処理*3型の回路構成により、任意の帯域幅の100チャネル以上で同時に送信されたセンサデータを1台の装置で受信できます。

(4) 環境情報実用化技術
 衛星で集約される多数・多様なセンサから得られる情報をオブジェクトモデリング手法を用いて任意に加工、抽象化、意味付けをするコンテクスト化技術及びこのコンテクスト情報を統一的なセマンティック記述により表現し蓄積する技術によって、様々なセンサ情報に基づく環境情報をインターネット上にて取り扱い易くし、Webアプリケーションに容易に取り込み利用ができます。


3. 各社の役割
NTT、NTT Comは下記それぞれの研究開発を担当しました。
NTT(アクセスサービスシステム研究所):衛星通信回線の管理や信号伝送等に関わる下位レイヤ部分
NTT Com:主にセンサネットワークの管理やアプリケーション提供に関わる上位レイヤ部分


4. 実験概要および成果
 千葉県館山市(東京海洋大学 館山ステーション)と京都府けいはんな学研都市(NTT京阪奈ビル)に設置した観測局からのセンサデータを、技術試験衛星VIII型(きく8号)を介して神奈川県横須賀市(NTT横須賀研究開発センタ)に設置した集信局で集信する実験を行いました。開発技術を適用した試作装置により、高密度にチャネル配置され送信されたセンサデータが、良好な品質で集信できることを実証しました。
 また、センサデータを実際に利用するアプリケーション例として、海洋上を航行する船舶からのセンサデータを利用し、運行管理等に役立つ情報として可視化する実験を行いました。この実験では、館山局から東京湾を航行する船舶に設置した気象センサ、GPS、WEBカメラ等からの実観測データを、けいはんな局からは、予め取得した船舶模擬データとWEBカメラの実画像データを送信しました。これらのセンサデータから、船位航跡データを電子航海海図上にリアルタイム表示するとともに、予測船位を計算処理し海図上に表示する、等のコンテクスト化*4機能を検証し、良好な結果を得ました。


5. 今後の展望
 衛星センサネットワークの新しい市場の開拓と、新事業の創出を目指し、実証実験の成果を活用して実用化に向けた検討を進めていきます。

<本実験は、総務省からの委託研究「電波資源拡大のための研究開発:衛星通信用中継器における周波数高密度利用技術の研究開発」の一環として実施されました。>


<用語解説>
*1 衛星通信用中継器における周波数高密度利用技術の研究開発
 衛星を利用したセンサネットワークなど、増大する様々な衛星通信への需要に対応するほか、周波数有効利用のためのアクセス制御技術やチャネル間隔圧縮技術等の研究開発を実施。

*2 技術試験衛星VIII型「きく8号」
 今後の衛星移動通信サービスや測位サービス等を支える基盤技術の実証を目的に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、情報通信研究機構(NICT)、NTTが共同開発し、2006年に打ち上げられた8番目の技術試験衛星。

*3 周波数領域信号処理
 取り扱う信号の時間波形をフーリエ変換によって周波数領域の波形に変換し、周波数領域で各種の信号処理(フィルタリング、等化、等)を行う方法。

*4 コンテクスト化
 複数の情報を組み合わせて、それらの情報が意味する状況等を抽出すること。



図1:多地点データ集信型衛星通信システム
図2:実証実験の全体概要
図3:従来技術の課題と開発技術の効果(1)
図4:従来技術の課題と開発技術の効果(2)



<本件に関するお問い合わせ先>

NTT情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当
TEL:0422-59-3663
E-mail:islg-koho@lab.ntt.co.jp

NTTコミュニケーションズ株式会社
広報室
TEL:03-6700-4010


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