平成8年4月17日 高臨場感マルチメディア通信会議システムを開発 ─遠隔地との自然で円滑な会議環境を実現─ NTTでは、お互いの距離を意識することなく、自然で円滑な対話が可能な臨場感あ ふれるマルチメディア通信会議システム「パノラマコンファレンス(仮称)」を開発し ました。 今回開発したシステムは、遠隔地にいる複数の人物が、等身大であたかも同じテーブ ルについているかのような高い臨場感を実現し、同時にデータの共用等により協調作業 効率の高い会議を行うことができます。 本システムの構成は、110インチの超高精細大画面ディスプレイとマルチチャネル 音像定位システム、協調作業支援環境「COGENT(コージェント)」、HDTV映 像符号化伝送装置およびATM*1伝送システムからなっています。 これらによって、人物の高精細かつ等身大の表示、映像と音像の一致、そして参加者 のデータ共用が可能になり、21世紀に向けた「場」の雰囲気の共有を最大限に尊重し た「感性通信」ともいえる全く新しいコンセプトの通信会議環境を提供します。 <開発の背景> 最近、ビジネスのみならず個人のレベルにおいてもネットワークを活用したマルチ メディアアプリケーションの利用が進んでいます。このような流れの中で、今後はネ ットワークやシステムの介在を使う人に感じさせないマルチメディア環境の実現が、 技術的課題として重要視されています。 NTTでは、21世紀のサービスビジョンVI&P(Visual Intel− ligent and Personal communications service:新高度情報通信サ−ビス)を実現するため、広範囲にわたるNTT の技術を結集して、ネットワーク設備とアプリケーションの総合的な機能確認と技術 評価を行うVI&P総合実験を展開しています。 今回開発したマルチメディア通信会議システムは、このVI&P総合実験の一環と して開発したものであり、まるで同じ部屋にいて対話しているような高い臨場感を実 現することをねらいとし、映像、音声、そしてデータの伝送・表示に最先端の技術を 適用しています。 <技術のポイント> 本システムは、次の4つのマルチメディア基盤技術とそれらのシステムインテグレ ーション技術によって実現されています。 (1)自然な映像(超高精細大画面ディスプレイ) 本システムのディスプレイは、110インチ(横22.4m×縦1.3m)の 大きさがあり、また、通常のHDTVプロジェクタの1画素分の面積の中に4個 分の画素を精密かつ微細にずらして重ね合わせる独自の重畳投射方式を採用する ことにより、HDTVの4倍の画素数を持っています。その結果、非常にきめ細 かでかつ等身大の人物表示を可能としています。さらに重畳によって通常のHD TVプロジェクタの4倍の画面輝度を実現することにより、会議室内を暗くした り、座る位置を限定することもなく、円滑な会議運営が可能となります。 (2)発信者の位置までわかる音声(マルチチャネル音像定位システム) 会議卓の天井部分に複数のマイクロホンを設置し、参加者の音声をキャッチし ます。通信相手側では、その最適に配置された複数のスピーカから音声情報が流 され、左右・奥行きいずれの方向にも超高精細大画面ディスプレイに映る人物の 映像の位置と音声の位置が一致するようになっています。音声用帯域はCD並の 20kHzまでを用い、耐ハウリング性、耐騒音性を確保したことにより明瞭度 の高い通話を実現しています。マイクロホンが視野に入らないため発言者はその 存在を意識せずに発言 でき、また、会議室内を自由に動き回っても視線と音像 が一致するため、音についても自然で円滑な環境の中で会議を行うことができま す。 (3)効率の高い会議運営(協調作業支援環境「COGENT」) 「COGENT」は、会議等における情報共有による協調作業の効率化を図るた めに開発したシステムです。会議卓には使用者それぞれにネットワーク化したパ ソコンが設置されており、データの共用とインターネット等ネットワークへの自 由なアクセスを可能としました。 また、超高精細大画面ディスプレイへのデータの表示については現在開発中で す。これにより、複数の情報や多数の対地の通信相手の映像も同時に細部までき め細かく表示することが可能となります。 (4)高品質な映像伝送(HDTV映像符号化伝送装置) HDTV映像符号化伝送装置は、放送局のスタジオ素材として用いられる高品 質なHDTV映像信号を、150Mbit/sのATM/STM*2いずれの方 式での伝送も可能にしています。1.2Gbit/sのHDTV映像信号を、サ ブバンド符号化方式*3により品質を損なわずに約10分の1に圧縮し、150 Mbit/sでの伝送を可能としました。 本システムは、武蔵野研究開発センタ内の2か所と約100km離れた横須賀研究開 発センタ内の1か所の計3カ所をATM伝送システムによる広帯域ネットワークで同時 に結んでいますが、その距離を感じさせない高品質な映像通信を可能にしています。 <今後の予定> 今後NTTでは、さらに臨場感を高めるために必要な機能を検証するとともに、実 用化に向けた改良を図っていく予定です。 <用語解説> *1)ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送 モード) パケット交換と回線交換のメリットを融合して、リアルタイム転送を要求する 音声、画像情報を含むマルチメディア情報を高速で運ぶ能力を備えた転送モード です。情報をセルと呼ばれる短いブロック(53オクテットの短いパケット) に分割し、宛先等を示すヘッダを付けて転送します。ネットワーク内でのプロト コルを簡略化することにより、高速転送を実現しています。 *2)STM(Synchronous Transfer Mode:同期転送モー ド) STMは、ATMと対比される転送モードで、一定間隔を持った周期的な伝送 フレームをつくり、それを短い等長区間(タイムスロット)に区切って、その中 に各チャネルの信号を入れて伝送します。STMは、情報の転送単位がほぼ均一 で、かつトラヒック特性が特定できる電話のような固定的なネットワークの場合 に適しています。 *3)サブバンド符号化方式 信号を周波数上で複数の帯域に分割して符号化する方式です。
