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                              平成8年7月10日



         超テラビット級光ATMスイッチの実現に大きな前進
           ―光ATMスイッチのプロトタイプを開発―

 NTTでは、光ATM*1スイッチ(交換機)としては世界最高の40G(ギガ:10億)bit/sの
容量を達成し、かつ実用性を高めたプロトタイプを2機種開発しました。
 映像通信を含むマルチメディアサービスは、電話の約1000倍の情報量をもつように
なると予想されます。マルチメディアサービスを電話並に普及させるにはネットワー
クの容量も電話の約1000倍にする必要があります。これを実現するためには、ネット
ワークの光化が必須で、その核となるものが超テラ(1兆)ビットクラスの光ATMス
イッチです。
 今回開発したプロトタイプは、システムとして安定して動作するよう工夫し、さら
にそれを通信装置用の架に実装してトータルとして確認・評価を行ったもので、2機種
の組み合わせによる超テラビットクラスの光ATMスイッチの実現に大きな可能性を示す
とともに、実用化という面でも従来の研究よりも一歩深く踏み込んだものといえま
す。


<開発の背景>
 多様なメディア情報を扱う将来のネットワークでは、現在の電話の1000倍の容量が
必要で、ネットワーク自体のシンプル化・経済化を実現するネットワークの光化と
ATMがキーテクノロジーとなります。
 現在の電話ネットワークの基幹部分に配されている最も大容量のスイッチの交換能
力はギガビットクラスですから、このような1000倍の容量のネットワーク実現のため
には、テラビットクラスのATMスイッチ能力が求められることになります。
 しかし、第一世代ともいえる電気式のATMスイッチは、大容量化に伴って配線の著し
い増加や発熱といった問題が避けられないと考えられることから、光周波数多重技術
を利用したシンプルな構成の光ATMスイッチシステムの実現が求められるようになって
きました。
 その実現にむけて、光 ATMスイッチは国内外で広く研究が進められていますが、い
ずれも個別の要素回路の実験というレベルにとどまっています。

<技術のポイント>
 今回開発したスイッチは(1)周波数ルーチング型光ATMスイッチ(2.5Gbit/s×16回
線)、(2)周波数分配選択型光ATMスイッチ(10Gbit/s×4回線)の2機種で“異なる周
波数の光信号はお互いに混じることがない”という光の性質を利用した光周波数多重
技術を用いて、それぞれ40Gbit/sの容量を実現しています。

1.周波数ルーチング型光ATMスイッチ<タイプA>(図1)
 タイプAのスイッチでは、NTT独自の可変周波数光源と光周波数ルータ(アレイ導波
路回折格子型フィルタ)がキーデバイスとなっています。
 可変周波数光源は、1つの入力端子から次々と送られてくるセルごとに異なる周波数
を付与することが可能です。
 また、光周波数ルータは、入力端子とセルの周波数によって出力端子を規則的に決
定する機能をもっています。
 そこで、1から16までの入力端子から入ってきたセル一つひとつに、その行き先(に
向かっている出力端子)に合わせた周波数を与え、それを任意の出力端子に導くこと
が可能になります。
 今回のプロトタイプのセルは、1つが51.2n(ナノ:10億分の1)sの長さがあり、セル
とセルの間には3.2nsのガードタイムと呼ばれる余白時間がとられています。可変周波
数光源は、2個の光源を切り替えることにより1ns程度で周波数を変更できますから、
セルごとに異なる周波数を与えることが可能です。
 光周波数ルータを出て特定の出力端子に進むセルの数は常に変化しており瞬間的に
複数セルが重なる場合もありますが、“異なる周波数の光信号はお互いに混じること
がない”という性質を生かし、周波数多重型バッファ*2部分で各セルの遅延を調整
し、セルの重なりのない時間的に整った出力を実現します。

2.周波数分配選択型ATMスイッチ<タイプB>(図2)
 タイプBのスイッチでは、タイプAとは異なり固定周波数光源とスターカプラを用い
ています。4本の入力端子ごとに入ってくるセルに固定的に周波数を割り当てます。ま
た、スターカプラを用いて、4種類の周波数をもつ入力をすべて混ぜた信号を4つの出
力に流します。
 スターカプラを出て特定の出力端子に進むセルはタイプA同様複数が重なっています
が“異なる周波数の光信号はお互いに混じることがない”という性質によって、タイ
プA同様に周波数多重型バッファ部分で各セルの遅延を調整し、セルの重なりのない時
間的に整った出力を実現します。

<今後の予定>
 今回開発した2種類の光ATMスイッチは、いずれも光周波数の違いによってセルの進
路を切り替えるものであり、容量も同等です。今後研究開発を進めていくことで個別
でもサブテラクラス(500Gbit/s〜1Tbit/s)のスイッチを実現できる可能性をもつも
のと考えられます。さらに、両者を組み合わせることで、超テラビットクラスのス
イッチを実現できる見通しがあることから、NTTでは今後も両タイプのスイッチの研究
開発を進めていく予定です。

<用語解説>

*1)ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)
 パケット交換と回線交換のメリットを融合して、リアルタイム転送を要求する音
声、画像情報を含むマルチメディア情報を高速で運ぶ能力を備えた転送モードです。
情報をセルと呼ばれる短いブロック(53オクテットの短いパケット)に分割し、宛先
等を示すヘッダを付けて転送します。ネットワーク内でのプロトコルを簡略化するこ
とにより、高速転送を実現しています。

*2)周波数多重バッファ
 今回、開発した光ATMスイッチでは、複数の入力端子から異なった周波数の複数のセ
ルが同時に重なって到来するため、各セルごとに遅延時間を調整して時間軸上で一つ
一つ順番に並べ替えて出力する必要があります。その機能を持つのが、周波数多重
バッファで、内部は遅延時間を調整する光遅延線と、光周波数ごとにセルを選択する
光フィルタから構成されます。


図1.周波数ルーチング型光ATMスイッチ(タイプA)  入力1から入ってきたセル1とCは周波数f1に変換され、光周波ルータで出力1へ導か れます。   また、入力2から入ってきたセルB、Dはそれぞれ周波数f2、周波数f16に変換され、 光周波ルータで出力1へ導かれます。その他のセルV〜Zは別の周波数に変換されるため 出力1以外の別の出力に導かれます。 図2.周波数分配選択型光ATMスイッチ(タイプB)  入力1から入ってきたセルA、C、xは周波数f1に変換され、また、入力2、入力4 から入ってきたセルB、Dはそれぞれ周波数f2、周波数f4に固定的に変換され、スターカ プラでまざって、4つの出力すべてに導かれます。                                                       

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