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                             平成8年7月25日


              災害時にも適用できる
          マルチ燃料型の燃料電池システムを開発
        ─都市ガスからLPガスへの自動燃料切替に成功─


 NTTでは、クリーンな燃料電池システムの通信用への適用を目的に、都市ガスの供
給がストップしても、備蓄燃料であるLPガスに切り替えて連続運転することができる
マルチ燃料型の燃料電池を開発しました。
 開発した燃料電池は、200kW出力時に燃料を切り替えても出力の変動がありま
せん。これは通信用として実用的な規模の燃料電池システムでは世界で初めてのことで
す。
 都市ガスを燃料としていた燃料電池のマルチ燃料化が可能になったのは、燃料電池に
必要な水素を作り出す改質器を改良することにより、都市ガスと同じようにLPガスと
いう異なる燃料から水素を作り出せるようにしたためです。これにより、地震等の災害
時にも通信システムに安定して電力を供給できる高信頼な熱電併給システム*1の実現
が可能になりました。
 また、本燃料電池は通信分野のみならず高信頼性が要求される病院や、災害発生時の
ライフスポット*2用としても期待されるものです。
 NTTでは今後、開発したマルチ燃料型燃料電池を用いた実験システムをNTT武蔵
野研究開発センタ内で評価し、実用化に向けたデータの収集等を行っていく予定です。

<開発の背景>

 NTTは、マルチメディアシステムの構築とともに、エネルギー問題にも積極的に取
り組んでおり、西暦2000年までに、電力消費量の増加分の1/2を低消費電力化施
策で抑制し、残りの1/2に太陽光発電システムや燃料電池などのクリーンエネルギー
システムを導入する計画を推進しております。
 最近のクリーンエネルギーシステムの導入例としては、中央研修センタの太陽光発電
システムをあげることができます。また、燃料電池については、1993年から東京ガ
ス、大阪ガスと協力し、NTT横浜支店、NTT関西ネットワークセンタに導入して、
フィールドテストを行ってきました。このフィールドテストと並行して、NTTでは、
通信用に適用するために、高信頼化技術の研究開発に取り組み、信頼性の高いマルチ燃
料型燃料電池を開発してきました。

<技術のポイント>

 燃料電池は、燃料から作り出した水素と、空気中の酸素を電池本体の電極で電気化学
反応を行なわせ電力を作り出します。電池本体は既製品ですが、NTTでは、燃料から
水素を作り出す改質器の部分に独自の技術をこらし、都市ガスと同じようにLPガスと
いう異なる燃料からでも水素を得られるようにしました。なお、都市ガスの代替燃料と
してLPガスを選択したのは、入手と貯蔵が容易で、燃料電池の性能低下の原因となる
硫黄分の除去が容易という理由によるものです。

1.燃料と水蒸気供給量の制御条件の確立

   改質器では、燃料と水蒸気を反応させて水素を作り出します。しかし、都市ガス
  とLPガスは組成が異なり、単位体積あたりで同じ量の水素を発生させるための水
  蒸気の量も異なります。そこで両燃料と水蒸気量の供給量の制御条件を確立するこ
  とにより、都市ガスの供給がストップしても自動的に燃料が切り替わり燃料電池の
  出力を一定に保つことを可能にしました。

2.二層触媒充填層の採用

   都市ガスを水蒸気と良好に反応させるには、ニッケル系の素材で作られた触媒を
  必要とします。しかし、この触媒でLPガスと水蒸気を反応させようとすると、カ
 ーボン(すす)が発生して改質器が詰まったり、触媒が劣化したりして、燃料電池の
 運転に必要な水素の生成ができなくなります。そこで、改質器に新たにLPガスと水
 蒸気の反応でカーボンを発生しないルテニウム系の触媒を加えてニッケル系触媒と二
 層構造とすることで、二種類の燃料を切り替えても改質器が詰まることも触媒が劣化
 することもなく、水素を生成できるようにしました。

3.LPガスの気化への燃料電池排熱の利用

   液体であるLPガスを気体にするには加熱する必要があります。今回開発したマ
  ルチ燃料型燃料電池では、この加熱源に燃料電池本体の排熱の一部を利用すること
  により、電気使用のLPガス加熱用補機を用いる場合に比べて、200kW出力時
  で8.8kWの加熱用電力の削減に成功しています。

<今後の予定>

 今回試作した200kW出力のマルチ燃料型燃料電池は武蔵野研究開発センタ内で熱
エネルギー利用技術*3、交流電力連系技術*4とともに評価試験を行い、クリーンか
つ高信頼、さらには商用電源の負担軽減につながる通信用の熱電併給システムの実現に
結び付けていく予定です。
 また、本燃料電池システムの導入に当たっては、LPガス業界とも連系を密にし、ガ
ス供給体制の整備を図っていく予定です。

<用語解説>

*1)熱電併給システム  
   発電による電力だけでなく、それに伴って発生する熱エネルギーも活用するシス
  テムで、一次エネルギー(例えば都市ガス)の変換効率を向上することができるシ
  ステムです。

*2)ライフスポット
   災害等による緊急時でも、太陽電池、燃料電池等の自立分散型のエネルギー源を
  利用することより、最低限の生活レベルを維持できる場所です。

*3)熱エネルギー利用技術
   燃料電池の排熱を利用して、高効率で空調を行う技術です。

*4)交流電力連系技術
   燃料電池の電気出力を商用電力やエンジン出力などの交流電力系統と接続した上
  で、通信設備等の負荷へ給電することをいいます。これにより、燃料電池は定格で
  の運転が可能となり、高効率で運転することができます。



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