平成8年12月26日 報道発表資料 日本電信電話株式会社 日本アイ・ビー・エム株式会社 情報分配プロトコルのモーバイル版を開発 ─高付加価値情報をどこからでも確実に受信可能に─ 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都新宿区、代表取締役社長:宮津純 一郎)と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下日本IBM、本社:東京都港区、代表取 締役社長:北城恪太郎)は、従来から情報を特定多数の相手に確実に送る高信頼マルチ キャスト通信プロトコル(RMTP:Reliable Multicast Transport Protocol)を共同研究してきましたが、このたびモーバ イル(移動体)環境に適用するための機能を追加したRMTP第2版を開発しました。 これにより、これまでは有線ネットワークに接続された端末でのみ利用可能であった 電子新聞など特定の顧客に対する大規模情報通信サービスが、有線による接続という制 約を解かれ、どこにいても確実に受信可能となります。 <開発の背景> ニュースやソフトウェアなど価値のある情報をコンピュータ・ネットワークを通して 多数の特定顧客に送り、それに課金するというビジネス形態への関心が高まってきてい ます。そこで必要とされるのは1対多の情報転送です。この1対多の情報分配に対応す るものとして従来は放送型通信を模倣した同報型アクセス方式がありましたが、各クラ イアントに確実に情報が送られているかを個別にチェックする機能がないため、送った 情報に課金したり、情報を確実に送り届けるというような高度な信頼性が要求される用 途には使用できませんでした。 このような用途に対応すべく、NTTと日本IBMは1995年10月に高信頼マル チキャスト(情報分配)プロトコルRMTPを開発し公開しました。このRMTPでは (1)情報転送に先立ち、サーバが通信すべき相手かどうかを確認するため各クライア ントとコネクションを確立する、(2)サーバは情報の分配後、各クライアントから確 認情報を受け取り、受信できなかったクライアントに対してその受信できなかった部分 を再送する、という方法で1対多での確実な情報転送を実現しています。 <技術のポイント> モーバイル環境には、有線で固定的に接続されたネットワーク環境に比べて固有の問 題があります。その一つは、無線の場合は、特定の相手以外が通信に侵入する可能性が あるという点、そして二つめは回線速度が比較的低く、しかも切れやすいという点です 。 第2版では、前者を(1)認証機能と(2)スクランブル機能、後者を(3)中断再 開機能と(4)通信速度制御機能によって解決し、モーバイル環境での高信頼マルチキ ャストを実現しました。 1. 認証機能 モーバイル端末をネットワークに接続する場合のIPアドレス(コンピュータ識別 番号)は、同じ端末であっても接続するごとに変わる場合があります。これは、端末 からの接続要求のたびにインターネットプロバイダがプールしているIPアドレスの 中から任意のIPアドレスを振り分けるからです。 RMTP第2版では、IPアドレスに加えて固有の使用者名とパスワード(認証コ ード)を設定し、サーバは使用者が移動したことを認識することが可能となることで 、正規登録した使用者にのみ情報を転送可能としています。 2.スクランブル機能 情報を小分けにした一つ一つの固まりであるデータパケットの順番をシャッフル (入れ替え)して送ることで盗聴を防止する機能です。これによって、シャッフルさ れたデータパケットの順番を元に戻す鍵をあらかじめ付与されている正規登録の端末 しか情報を判読することができなくなっています。 3.中断再開機能 モーバイル端末は、移動などによって無線電波の状態が変化しやすいという性質を 持っています。RMTP第2版では、データの転送が途切れた場合でも、中断復旧後 にサーバがクライアント端末にデータのどの部分からが転送されなかったのかを確認 し、その欠落部分だけをその端末に向けて後から再送します。これにより、他の端末 へ影響しないで同報による転送・再送処理を行うことができます。また、中断される ごとにデータを最初から転送する方式に比べ、転送時間の短縮が可能になります。 4. 送信速度制御機能 モーバイル端末の処理能力には、電子手帳からパソコンまで大きな差があります。 また、ネットワークの伝送速度も有線よりも遅いのが一般的です。さらに、端末の受 信処理能力やネットワークの混み具合は時時刻刻変化します。RMTP第2版では、 通信中に各端末の受信状況を定期的にモニタリングし、送信速度を自動的に制御する 機能を規定しており、このような環境においても、より確実に効率よく情報分配する ことが可能となっています。 <技術の応用> 今回のRMTP第2版は、ニュース等のリアルタイム配信、あるいはイントラネット での営業マンのための電子カタログや価格表の一斉更新など、高い機動性をもつモーバ イル端末ならではの新たなサービスの創出にも大きな可能性を開くものとして開発が待 たれていたものです。 <今後の展開> NTTと日本IBMは、この成果をインターネットプロトコルの標準化を進めるIE TF(Internet Engineering Task Force)に提案し 、広く普及を図ります。さらに、顧客のグループ制御やルーティング制御方式の検討な どさらに改良を進め、マルチメディア情報の高信頼分配技術環境の整備をさらに進めて いく予定です。
