平成9年2月25日 高速移動中でも高品質な通信をデジタル処理技術で実現する RZSSB方式によるマルチメディア狭帯域移動無線機の開発について NTTでは、NTTエレクトロニクステクノロジー株式会社(本社:東京都武蔵野市 、代表取締役社長:鈴木敏正)の協力を得て、高速移動中でも音声・ファクス・静止画 ・データ等を高品質で伝送できる「RZSSB狭帯域移動無線方式」無線機を開発しま した。 1.開発の背景 タクシー、トラック、行政、警察の業務用無線では、高速で移動する車両などで 電波を受信することが必要となりますが、移動するために発生する受信電波の激し い変動に耐えなければなりません。 従来、業務用無線では品質を維持するため、広い周波数帯域を必要とするFM方 式*1が使われてきました。しかし業務用無線に割り当てられている無線周波数 (60MHz帯〜250MHz帯)は、利用者の増加によりチャンネル不足に陥っ ています。 そこで使用周波数帯域が少ないAM方式*2のよさを生かし音声、ファクス(G 3)、静止画、デ−タ等のマルチメディア通信のできる業務用移動無線の開発が求 められていました。 *1 FM方式:周波数変調・波の周波数を変化させて信号を送信する方式。 (Frequancy Modulation) *2 AM方式:振幅変調・波の振幅を変化させて信号を送信する方式。 (Amplitude Modulation) 2.「RZSSB*3狭帯域移動無線方式」の概要 「RZSSB狭帯域移動無線方式」は、狭帯域でマルチメディア通信を実現した新 しい移動無線方式です。送信部には使用する周波数が少なくてすむSSB*4変調を 採用し、受信部はFM方式をデジタル処理することにより実現しました。 この狭帯域化技術により、使用周波数帯域が少なくなることから、原理的に雑音が 少なく、高品質な通信が行われるため、マルチメディア通信に向いた方式といえます 。 *3 RZSSB:(Real Zero Single Side−Band: 実数零点単側波帯) *4 SSB:(Single Side Band:単側波帯) 振幅変調の一種で使用する周波数帯域が最も少ない変調方式 3.「RZSSB狭帯域移動無線方式」の特徴 (1)狭い周波数帯域で通信が可能 使用周波数帯域が5kHzですので、現在、多くの業務用無線が使用している周 波数帯域(FM方式、25kHz)の5分の1で通信が可能です。これにより、 同一の周波数帯域で5倍の伝送容量が得られます。 (2)マルチメディア通信が可能 音声・音楽、ファクス(G3)、静止画、データ等のマルチメディア通信が可能 となります。 (3)高速移動時でも品質の良い通信が可能 フェ−ジング*5耐力が大きいため、時速100km以上で移動する車などの中 でも、止まっている時と同レベルの品質で通信ができます。また、海上でも電波 が波による反射の影響を受けることなく品質の良い通信が可能となります。 *5 フェ−ジング:電波の伝播時に複数の異なった経路を通ることにより相互 に干渉すること等の理由により発生する受信点での電界強 度の変動。 (4)広い通信範囲 従来の多くの業務用無線(FM方式、25kHz)と同一の送信出力で通信距離 を比較した場合、RZSSB方式の方が約1.5倍通信距離が伸びます。 4.想定される適用例 (1)報道関係等 テレビ・ラジオ局、新聞社等が取材等で利用する業務用無線にRZSSB方式を 導入した場合、通信設備の確保が困難な取材現場などからもファクス、画像が送 れますので、現場の状況を素早く伝えることができます。 (2)パソコン通信やインターネット等 RZSSB方式を使った業務用無線を使用すると、一般電話回線が自由に利用で きない場所や、携帯電話・PHSなどの電波の届かないところからでも、RZS SB業務用無線に対応した設備を構築することで、パソコン通信やインターネッ トなどマルチメディア通信が可能になります。 (3)一般業務用ならびにアマチュア無線 FMラジオのような高品質で通信ができることから、漁業無線やタクシー無線な どの業務用無線をはじめ、アマチュア無線にも活用いただけます。また、ファク ス、パソコンによる天気図、市場情報などのやり取りも可能となります。 (4)緊急通信等 通信・電波状態の悪い場所や高速走行中でも、従来の方式に比べ、音声連絡や地 図、現場写真などの画像情報等を高品質で送信することができますので、消防、 警察、防衛、自治体などで利用していただけます。 (5)自動車レ−ス等 時速100km以上で走行する車などからも安定した品質で音声やデータが送れ るため、エンジン回転数、温度、圧力等のデータなどが必要な自動車、オートバ イ、モーターボート等のレ−スでも活用できます。 5.今後の予定 本年3月下旬に、米国FCC(米連邦通信委員会)向けにワシントンDC等でのデ モンストレ−ションを計画しています。 * 米国では、業務用無線の領域で電波の有効利用(狭帯域化)がすでに図られてお り、NTTのこれまでの狭帯域化の技術が評価されています。NTTはFCCの 要請を受け、無線通信の公共利用諮問委員会(PSWAC)*6の技術小委員会 のワーキンググループ議長も努めて参りました。 *6 公共利用諮問委員会(PSWAC:Public Safety Wire− less Advisory Committee) 米国の通信無線の公共利用に関する諮問委員会。
