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                              平成9年3月27日


         フラーレンC60で最先端LSI微細化技術が進展
     -炭素のサッカーボールに、世界で初めての実用分野を開拓-



 NTTでは、新素材として注目されているフラーレンC60を最先端LSI微細化に利用する
画期的な技術を開発しました。LSIのパターン形成に用いるレジスト材料にフラーレン
C60を添加するだけで、パターンを形成・加工できる限界や、材料の安定性等の性能が
向上し、次世代のLSI製造に必要なレベルをはるかに上回ることを発見しました。
 今回の発見は、物性解明の段階にとどまっていたC60に世界で初めて実用分野を開拓
したものであると同時に、次世代LSIに求められる超微細加工技術に大きな進展をもた
らすものとして期待されます。

<フラーレンC60とは>
 フラーレンC60とは、炭素原子が60個サッカーボールのように結合したもので直径0
.7nm(nm:ナノメートル=1000分の1mm)の分子(図1)で、グラファイトやダイヤモンド
に次ぐ第3の炭素の同素体(それだけでできている分子)です。1985年にその存在を
発見したサセックス大学のクロトー教授、ライス大学のスモーリー教授、カール教授
には1996年のノーベル化学賞を受賞するなど、世界中の注目を集めている分子です。
その形を生かして他の分子を入れるナノカプセルとして用いる、炭素他の原子に他の
原子を結びつけて特殊な機能をもつ分子にする、などさまざまな応用法が研究されて
いますが、それらはいまだ実験室のレベルを脱してはいませんでした。

<今回の発見の意義>
  LSIの製造では、材料のシリコンウェハの表面にレジストを塗布し、その上にLSIの
パターンを光によって焼き付けるという工程が必要です。光の当たったレジストは変質
して簡単に取り除けるようになり、その部分はシリコンが露出します。その後はエッ
チングにより露出した部分のシリコンを削っていくという工程をとります。つまり、
レジストはシリコンの削ってはいけない部分をカバーする層を形成する役割をもちま
す(図2)。
 しかし、現在研究開発が進められている次々世代のLSI(16Gbit級メモリ)に求めら
れる超微細加工のレベルでは線幅(削る部分の間隔)が150nm以下になると言われてい
ますが、このレベルでは露光技術とそれに用いられるレジスト材料が確立されていま
せん。特に、レジスト材料はパターンが細くなると機械的強度が不足してパターンが
倒れてしまうという問題や、露光後の安定性が低下するという問題が発生してきます
。

 NTTでは、C60が純粋な炭素で、サイズが極微小でしかもレジスト溶液に溶解する
ことに着目し、これを超微細加工用のレジストに混ぜると、加工時の熱やプラズマへ
の耐性やパターンを形成できるサイズの限界、レジストの安定性等、レジストの諸性
能が向上することを見いだしました。特に、C60の添加によってレジストの機械的強度
が増して極微細パターンを形成させてもパターンの崩壊を妨げることが分かったこと
は大きな進歩といえます(表1)。
 このようなC60によるメリットは、従来のレジスト液にC60を添加するだけで得られ
るので、製造ラインの改良が不要な、実用性の高い技術となります。

<今後の展開>
 NTTでは、このC60添加レジストを次期の露光技術といわれるSORリソグラフィ*の研
究開発に適用していくと同時に、LSI以外にも、半導体を極めて小さくしていくと特殊
な性質を持つようになる量子効果の研究にも役立てていく予定です。

<用語解説>
*)SOR(Synchrotoron Orbital Rasiation:シンクロトロン放射)リソグラフィ
 LSIのパターンをウェハ上に転写する光は、その波長が短いほど微細なパターンが転
写できます。そこで、シンクロトロン放射装置から取り出される、波長の短いX線をそ
の光源として利用するのがSORリソグラフィです。




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図1.C60の分子構造






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図2.超微生加工におけるC60添加の効果


表1.レジスト特性(膜厚250nm)
  解像度の限界
(ライン+スペース)
アスペクト比
(膜厚/パタン値)
エッチング耐性
(相対比)
耐熱性
従来レジストのみ 150nm 3.5 1 120℃
C60 10%添加レジスト 90nm 5.5 1.15 150℃

参考 C60の特長とレジスト特性の相関

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