
平成9年3月31日
TCP/IP ATM通信ボードを開発
─155Mbit/sのATM回線を効率よく利用可能に─
NTTでは、TCP/IPのプロトコル処理をハードウェア化することにより、
155MbpsのATMを効率的に利用可能にする、パソコン/ワークステーション拡
張スロット装着用のTCP/IP ATM通信ボードを開発しました。
今回開発した通信ボードでは、データ転送速度として116Mbps以上の高性能を
達成しました。これは、155MbpsのATM回線においてユーザが伝送用に利用可
能な134Mbpsの80%以上という高い数値です。
この高性能を生かし、通信サービスのサーバ部分などに適用することで、大量のデー
タを高速に伝送することが可能となり、将来の多彩なマルチメディア通信サービスにも
対応できるようになります。
NTTでは、今後もこのようなメガメディアビジョンの実現に向けた研究開発を進め
ていく予定です。
<開発の背景>
インターネットに代表されるコンピュータネットワークの進展、伝送される情報のマ
ルチメディア化によって、ネットワーク上を流れる情報量はますます増大しています。
これに対応するため、ネットワーク側もFast EthernetやFDDIが使わ
れ、ATM網では155Mbpsさらには622Mbpsへと高速化しようとしていま
す。
TCP/IPは、通信を行う上での約束手順(プロトコル)の一つで、インターネッ
ト上で広く使われ事実上の標準となっているものです。このプロトコル処理は、送りた
い情報をTCP/IPで定められた形式のパケット(情報を小分けにし、行き先を指定
したもの:小包)化したり、送られてきたパケットから元の情報を復元するなどの作業
ですが、従来はこれをコンピュータ内でソフトウェアで行っていました。しかし、ソフ
トウェアで処理する方法では、プロトコル処理に対するCPUの負担が重いためデータ
転送効率が低下し、高速回線を有効に利用できなくなりつつあります。
NTTでは、2005年に向けてメガメディアビジョンを掲げており、各家庭で高速
のマルチメディア通信を安価に利用できるネットワークづくりを目指しています。ここ
で使用する通信プロトコルのほとんどがTCP/IPであり、このTCP/IPを高速
に処理する技術を重要な課題として位置づけています。そこでNTTでは、TCP/I
Pプロトコルを高速に処理するための専用LSIと、それを搭載した高速通信ボードの
開発を進めてきました。
<技術のポイント>
今回開発したTCP/IP通信ボードでは、次の技術的ポイントにより実効的に
100Mbpsを超える高性能を実現しました。
1.TCP/IP処理をボード上で処理
インターネットなどで幅広く使用され、事実上の標準プロトコルとなっている
TCP/IPをボード上のハードウェアで高速処理することにより、155メガビ
ットATMの高い使用率を実現しました。さらにワークステーション側のCPUに
対する処理負荷が軽減されるため、アプリケーションへ処理能力を振り向けること
ができます。
2.TCP/IP処理専用LSIを開発
TCP/IP高速処理のキーパーツとして、TCP/IP処理専用LSIを開発
しました。本LSIは、ボード上のプロセッサと連携して動作し、プロトコルヘッ
ダ処理*、バッファ管理、バス制御等を高速に実行します。
3.1スロットスペース化
TCP/IP処理LSIを始めとする大規模ASIC(特定用途向けLSI)の
使用により機能を集約し、ボードを1スロットスペースで実現しました。これによ
り、画像処理用ボード等との同時搭載が可能となり、多様なマルチメディアサービ
スへの柔軟な対応を実現しました。
<今後の展開>
116Mbpsという高速性能は、ATM高速回線を利用した、動画像を含むマルチ
メディア通信サービスの実現に大きな前進をもたらすものとして期待されます。
今後NTTでは、より高速な通信回線用通信ボードの開発など、メガメディアの実現
に向けて研究開発を進めていく予定です。
<用語解説>
*)プロトコルヘッダ処理
通信プロトコルのフレームに付加されるヘッダ部に関する処理で、ヘッダ解析、
生成、誤り検出符号生成・チェック機能などがあります。