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                             平成9年10月27日
                             日本電信電話株式会社


         アルミナの高精度の微小ハニカム構造を実現
  ─ハイテクと自然組織化の融合による新素材の実現、広範囲での応用に期待─


<開発の背景>
 これまでになかったデバイスの創造を可能とする新材料の研究が世界で広く行われて
います。その中で、ナノメートルオーダーの周期および精度の微細な孔が空いた材料は
、光の制御をミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)オーダーでできることが理
論的に知られており、光部品の大幅な小型化を実現するものとしてここ数年その作製の
試みが活発に行われています。しかし、これまでのところ孔径の精度や孔配置の規則性
が低く、また面積が小さなものがほとんどでアプリケーションを検討できるレベルのも
のはありませんでした。
 今回開発した微小ハニカムの製造技術は、アルミの陽極酸化という現象を利用してい
ます。この現象は、電解液中でアルミに電圧をかけると、その表面に微小な孔をもった
酸化膜ができるというもので、これまでアルミ建材の表面処理などに利用されてきまし
た。
 都立大工業化学科の益田助教授のグループは、これまで陽極酸化の条件をコントロー
ルすることで、高い規則性をもつハニカム構造を作製する手法について検討を行ってき
ました。しかしこれまでの手法では規則的な範囲の部分が狭く、完全な規則性が実現で
きない、時間がかかり量産性が悪い、という問題を解決できませんでした。そこで、L
SI製造の分野で豊富な微細加工技術の蓄積があるNTTと、孔形成の開始点を制御す
ることにより孔配列の規則性の完全化、大面積化のための共同研究をスタートさせまし
た。
 
<技術のポイント>
 アルミ板表面に配置の整ったくぼみパターンを機械的に形成すると、そこを開始点と
して高い精度で深い孔が形成されることを見い出しました。又、このためのくぼみパタ
ーンを効率的に作り込む(転写する)ために、微小パターンをプレス転写するというナ
ノプリント技術を開発しました。その要素技術には、1平方センチメートルあたり数ト
ンの圧力がかかるプレス型として、それに耐える強度とナノメートルオーダーの微小突
起を作り込める表面平滑性をもった素材であるSiC(シリコンカーバイト)の採用、
SiC上にナノメートルオーダーの微小突起を正確な位置精度で形成する高解像度電子
ビーム露光技術、ドライエッチング技術*1があります。
 この技術は、高精度なパターンを一度作成すればそれを母型として数秒のプレスで何
回でもパターン転写を行える点で、従来のフォトリソグラフィ技術*2のマスクによる
パターン転写と似ています。また、引き続き実施される陽極酸化では自然の原理で微細
孔が成長します。したがって、本技術は最先端の高度なリソグラフィ技術と、自己組織
化という自然科学的なものとが融合した、まったく新しい技術開発のあり方を示したも
のとしても特徴的な成果といえます。

<今後の展開>
 NTTと都立大益田助教授のグループは、今回開発した技術により実現した微小ハニ
カム構造に対し、外形サイズとその配置の均一性を活かし、選択的に形成した孔内にフ
ォトニック材料(光を閉じこめてしまう材料)を入れて、孔のない部分のみしか光が進
むことができなくした超小型光回路を作る、あるいは多数の孔内に光非線形材料を入れ
て特性を向上させた高性能光スイッチアレイなどの光部品を実現する、また、孔の微小
さを生かして量子箱や量子細線を作る際の型として応用するなど、さまざまなアプリケ
ーションを検討しています。さらに、このハニカム構造は以上のような光デバイスだけ
でなく粒子や光の高性能フィルタとして幅広い応用が考えられます。
 NTTおよび都立大益田助教授のグループは今後も協力して、微小ハニカム構造をよ
り完成度の高い材料とすべく研究開発をすすめ、種々のアプリケーション開発を通じて
科学技術の発展に貢献していく予定です。


<用語解説>

*1)ドライエッチング技術
 溶液中で物質を溶かし、基板上にパターンなどを作製する方法はウエットエッチング
と称され、物質の一般的な加工法として用いられています。
 これに対して、密閉された減圧状態の容器(チャンバー)内で、反応性ガス、そのプ
ラズマ、あるいはイオンビーム等を物質と反応させて基板を加工する方法がドライエッ
チングです。この方法はウエットエッチングと比較して加工精度(寸法や深さ)が格段
に向上した技術で特に微細パターンを作製するのに用いられています。

*2)フォトリソグラフィ技術
 シリコン基板上に集積回路を作製するために行われるのがフォトリソグラフィ工程で
、複雑な回路ではこの工程が何回も繰り返されます。一般的な工程は以下のとおりです
。まず酸化膜などの形成された基板上に光に反応する高分子材料(レジストと呼ばれる
)をまんべんなく塗布します。次に回路パターンの描かれたマスクを通して基板上のレ
ジストに光を照射します。光の透過した部分にあるレジストは光反応して変質します。
この変質した部分を残す(ポジ)あるいは溶かし出す(ネガ)ことにより基板上にマス
クに応じたレジストのパターンが残ります。さらにレジストをカバーにエッチングする
ことにより、基板にパターンが刻み込まれます。






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