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                                 平成10年6月4日

        光コネクタ用精密部品のオールプラスチック化に成功
           −経済的な光ネットワーク構築を加速−

 NTTでは、光コネクタのキーパーツであるフェルールスリーブをプラスチックで成形する
技術を開発しました。
 フェルールとは光コネクタ内で光ファイバを保持するための部品であり、スリーブは光ファイ
バの端面同士を正確に位置決めする部品です。
 今回開発した技術は、1ミクロン(1000分の1ミリ)以下の精度でプラスチック成形を可能に
する超精密成形技術で、これまでのセラミックス部品と同等の精度を実現するものです。
 この技術は、プラスチックでは不可能と考えられていた光コネクタ精密部品の製造を可能にす
ると同時に、光コネクタの大幅なコストダウンが期待でき、光ネットワークを経済的に構築する
ための原動力となります。


<開発の背景>
 現在、光ネットワークを構築する上で最も重要な課題は、いかに経済的に構築するかという点
です。光コネクタは、光ファイバ同士を接続するために不可欠な部品で、光ネットワークで大量
に使用されていることから低コスト化を実現する必要があります。そのため、光コネクタを構成
する部品の中で最も大きなコスト比率を占めるフェルールとスリーブを経済的に製造する技術が
求められていました。
 光コネクタは、光ファイバを保持する2本のフェルールをパイプ形状のスリーブの中で突き合
わせることにより接続を行います(図1)。接続には許容誤差1ミクロン以下という高い精度が要
求されるため、従来こうした部品はセラミックス素材で製造されていました。そのセラミックス
の精密加工には多くの手順を要し、製造コストの削減には限界がありました。
 NTTではコストが低く抑えられ大量生産にも向いているプラスチック材料に着目し、セラミ
ックスと同等の精度を実現するプラスチック成形技術の研究開発を行ってきました。その結果、
これまで10ミクロンが限界といわれてきたプラスチック材料の成形精度を1ミクロン以下まで高
めることが可能となり、フェルールとスリーブのプラスチック化を実現しました。
 入手が容易な樹脂材料での光コネクタ精密部品のプラスチック化は、大量生産に向けて部材費
の圧縮、製造工程の簡素化という大きなメリットをもたらし、フェルールではセラミックス部品
の5分の1、スリーブでは3分の1という大幅なコストダウンが見込まれます。

<技術のポイント>
○超精密成形技術の開発
 今回の開発では、プラスチック成形技術の中で最も量産性、経済性に優れた射出成形技術(*1)
を採用し、フェルールでは1ミクロン、スリーブでは5ミクロンというそれぞれ実用化に必要な精
度を実現しました。
 高精度成形を達成するうえで重要なポイントは樹脂材料と金型です。
 フェルールでは光ファイバ(外径125ミクロン)を貫通させる微細孔を高い精度でかつ再現性よ
く成形する必要があり、さらに成形品全体での各種寸法精度も極めて高いレベルが求められます。
そのため、成形樹脂材料としては流動性に優れた特徴を有し、金型内部の微細な所まで樹脂を注入
できる液晶ポリマー(*2)を採用し、ミクロン単位の寸法精度を実現しました。さらに液晶ポリ
マーは熱膨張性が小さいため、温度特性の安定した成形品を得ることができます。
 また、スリーブではフェルールを保持し、安定して整列させるために、高いバネ特性が必要と
なります。そのため、プラスチックの中で最も弾性率の大きいエポキシ樹脂(*3)を採用し、高
いバネ特性を実現しました。さらに、エポキシ樹脂は融解状態で極めて低い粘性となる特徴がある
ため、金型を忠実に反映した平面平滑性に優れた成形品を得ることができます。これにより、フェ
ルールの抜き差しによるゴミの発生が少ないという利点も得られます。
 金型では、材質の最適化や最先端の加工技術を採用することにより、金型部品の精度を従来より
1桁近く高いものにすることができました。
 こうした射出成形技術を採用することにより、フェルールの製造工程ではセラミックス部品と比
較して工程数を5分の1に簡略化でき(焼結や外径、内径の精密研磨などが省略できる)、フェルー
ルやスリーブを連続的に製造できるようになりました。

○シングルモード特性の実現
 プラスチックコネクタ部品は過去に検討された例がありましたが、光ファイバのコア(*4)径
が9ミクロンのシングルモードファイバに適用できるものではありませんでした。
 今回、超精密成形技術の開発により、プラスチックのフェルールとスリーブを組み合わせた接続
試験で、平均損失0.2dB以下という接続特性を実現しています(図2)。

○信頼性の確認
 プラスチック材料は、熱や水分により変形する可能性があり、信頼性の確保が極めて重要です。
今回の開発に当たっては信頼性も考慮した材料検討を進め、温湿度サイクル試験(温度-10〜+65℃、
湿度93 %、20サイクル)、繰り返し着脱試験(連続500回)などで従来のセラミックス部品と同等
の信頼性を有していることを確認しています。

<今後の展開>
 NTTでは光コネクタ全般において、さまざまな研究を続けており、これまでに開発した5種類の
光コネクタが国際標準になるなど多くの成果を上げています。今後は今回開発したフェルールとスリ
ーブを、全世界で最も多く使用されているSC型コネクタや、その他の光コネクタへの展開を目指し
て検討を深めていきます。
 また、今回、フェルールとスリーブの製造用に開発したプラスチックの超精密成形技術は、広く射
出成形で作られるプラスチック製品にも適用できる汎用性の高い技術です。NTTでは本技術を光部
品や光関連装置へのプラスチック材料適用に活用するとともに、幅広い分野での高精度のプラスチッ
ク部品にも応用を試みていきます。

用語解説

(*1)射出成形技術
 高温で溶融した樹脂を、金属のブロックで構成した金型内に流し込み、冷却や硬化した後、金型か
ら取り出して製品を得る方法。射出成形機を使用して、連続的かつ自動的に成形品を得ることができ
るため、部品の量産化、経済化に適しています。

(*2)液晶ポリマー
 樹脂(ポリマー)の中で、高温で溶けた状態で液晶のように一定方向に配列した状態になるもので
す。配列した方向には極めて流動性が良いため、寸法精度の優れた成形品が得られます。

(*3)エポキシ樹脂
 熱硬化性樹脂の一種で、主に接着剤や半導体の封止に使用されています。化学構造により多くの種
類があるが、熱で硬化する樹脂と、その反応を促進する硬化剤からなります。弾性率が高く、表面平
滑性も良い特徴がある。

(*4)コア    
 光ファイバは中心のコアと周辺部のクラッドから構成されます。コアはクラッドより屈折率が大き
いため、光はコア内に閉じ込められて伝搬します。シングルモードファイバのコア径は9ミクロンであ
り、光の損失の少ない接続のためには1ミクロン以下の精度で位置合わせを行う必要があります。











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