平成10年9月4日

日本電信電話株式会社
NTTエレクトロニクス株式会社



HDTVまで拡張可能なMPEG-2ビデオエンコーダLSI『SuperENC』を開発・発売


 NTTは、NTTエレクトロニクス株式会社(以下NEL)と共同で、情報量の大きな映像の圧縮処理を行うことができるMPEG-2ビデオエンコーダLSI『SuperENC』を開発し、9月21日(月)からNELが発売します。

 『SuperENC』は、ワンチップでの圧縮処理はもちろん、複数チップを連結することで、HDTV映像までの圧縮処理を実現しています。

 また、『SuperENC』には複数のプロセッサを内蔵しており、「低遅延優先(注1)」、「高画質優先」などNTSC/PAL(注2)対応の4つのモードでの映像信号圧縮処理を柔軟に行うことができます。これによってTV会議システムなどの映像通信やDVD機器などの映像関連機器など、幅広い映像分野への適用が可能です。

 さらに、『SuperENC』は、HDTVまで拡張可能なMPEG-2ビデオエンコーダLSIとしては、世界でもっとも小型・低消費電力化も実現しました。



<開発の背景>

 MPEG-2は、標準的なテレビ映像やHDTVに対応する映像圧縮方式の国際標準で、その高い圧縮率から、通信や放送などマルチメディア関連分野へのさまざまな応用が進んでいます。MPEG-2には映像を圧縮するエンコーダと伸長するデコーダが必要です。ディジタル衛星放送の視聴者側で必要となるデコーダは、既に小型化、経済化が実現されています。これに対して、エンコーダはこれまで技術的に実現が困難で、大型かつ高価なものでした。

 しかし、双方向映像通信の一層の普及に加え、次世代の映像記録媒体であるDVDを用いた各種機器の実現が待たれる現在、MPEG-2エンコーダの小型化・低価格化は大きな課題でした。また、地上波HDTV放送開始を間近にひかえ、このHDTV方式にも対応できる小型MPEG-2エンコーダのニーズも顕在化しています。

 NTTは、平成8年、双方向通信に適した低遅延・高画質のMPEG-2エンコーダボード『黎明』を世界に先駆けて開発し、NELがそれを販売してきました。今回開発した『SuperENC』は、『黎明』の技術をさらに発展させ、映像通信や映像記録など幅広く適用できるようにしたものです。



<技術のポイント>

1.HDTV映像までの圧縮処理が可能な拡張性

 圧縮符号化する映像のサイズが大きい場合、LSIを複数個連結して、符号化能力を高める方法が考えられますが、従来のエンコーダLSIは、連結するための仕組みがありませんでした。

 これに対し、『SuperENC』は、連結した時に自動的にLSI間の映像圧縮処理の働きを調整するLSI間協調符号化機構を備えており、複数個連結して用いることでHDTVなどの情報量の大きな映像信号をリアルタイムに符号化することができるなど、幅広いタイプの映像の圧縮に対応することができます。

 さらに、DVDレコーダ録画用の新開発1パス可変ビットレート(注3)の採用や、DVD規格のビデオパケット出力(注4)のサポートなど、これまでになかった高い機能と拡張性を特長とします。



2.NTSC/PAL方式の4つのモードに対応可能

 『SuperENC』は、従来のMPEG-2エンコーダLSIに内蔵されている全体の働きを制御するRISCプロセッサ(注5)に加えて、符号化処理を効率良く実行するための18個の演算ユニットからなるプロセッサを内蔵しています。この両プロセッサへのパラメータの変更やプログラムの乗せ替えを簡易に行うことができるため、CSデジタル放送などで実用化されている標準モード、TV会議システムなどで利用されている低遅延優先モード、長時間録画を可能とする高圧縮優先モード、一般の放送局などで利用されている高画質優先モードの4つの映像圧縮符号化モードに対応できます。



3.独自の動き検出ユニット搭載による高画質、低消費電力

 画質の向上には、符号化時に、映像内の被写体の動きを精度よく検出することが必要です。しかし、これを実現しようとすると、動き探索のLSI内の演算量が膨大となり、高画質化、低消費電力化の障害となっていました。

 『SuperENC』は、この問題の解決のために、動きの変化量の大小によって広域探索と近傍探索を適宜使い分けるLNF動き探索法(Look Neighbor First Search)と、速い動きへの追従性を高めるエリアホッピング(注6)を開発し、この二つを組み合わせた動き検出ユニットを搭載しました。これにより、どのような動きも最小限の探索で正確に捉えられるので、動き探索の演算量が大幅に低減され、高画質化、低消費電力化が同時に達成されます。



<販売商品>

○標準モード対応品(標準モード、低遅延優先モード、高圧縮優先モードに対応)
○高画質優先モード対応品(標準モード、低遅延優先モード、高圧縮優先モード、高画質優先モードに対応)
○HDTV対応品(標準モード、低遅延優先モード、高画質優先モードに対応)


<販売開始月日>

○9月21日(月)(標準モード対応品)※以降、その他商品も順次販売開始


<販売価格>

○3万円(標準モード対応品のサンプル価格:消費税別)※その他商品の価格については未定


<スペック等>

○動き探索範囲:水平±211.5画素、垂直±113.5画素
○電源電圧:内部2.5V、入出力:3.3V
○消費電力:1.5W
○パッケージ:208ピンプラスチックQFP
○外付けSDRAM:NTSC/PAL用16M×2、4:2:2P用 64M×1
○符号化規格:MP@ML、SP@ML、ハーフD1、4:2:2P@ML、MP@HL(チップ連結時)


<用語解説>

(注1)低遅延

 エンコーダLSIに映像を入力し、それに対応する圧縮信号が出力されるまでのタイムラグが短いことを指します。双方向の映像通信でスムーズなコミュニケーションを行うには、自分の側の映像をできるだけリアルタイムに近く相手に届ける必要がありますが、これを実現するためには、低遅延で符号化できることが必須になります。



(注2)NTSC/PAL

 カラー映像信号の伝送方式の種類です。NTSCはアメリカや日本で採用されており、走査線525本、毎秒30枚の画像、画面縦横比は3:4となっています。一方、PALはフランスを除く西ヨーロッパ各国で採用されている方式で、走査線625本、毎秒25枚の画像、画面縦横比は3:4です。



(注3)1パス可変ビットレート

 容量に制限がある記録媒体に録画する際、録画する映像信号の状態によってエンコードの圧縮率を時々刻々と変化させ、録画の品質を保つしくみです。これによって1回の録画で記録媒体の容量を最大限に活用できるようになります。



(注4)ビデオパケット出力

 DVDの書き込みに用いられる基本のデータ形式であり、パケットと呼ばれる2kバイト長のデータ束の並びで構成されます。



(注5)RISC(Reduced Instruction Set Computer)プロセッサ

 基本的な簡易命令しか持たないプロセッサのことです。命令数を減らすことによって制御系をシンプルにし、ハードウェア設計を容易に、かつ処理速度の高速化を実現します。



(注6)エリアホッピング

 映像画面全体の動きを予測して、その動きにあわせて探索する範囲を移動させる機能です。




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