News Release


平成11年3月11日

日本電信電話株式会社



3テラビット/秒の世界最大容量光伝送実験に成功
スーパーコンティニウム光源と広帯域光増幅器によって実現


 NTTでは、一本の光ファイバで3テラビット/秒(1秒間に3 兆ビット:CD670枚相当分)を40キロメートル伝送する大容量の光伝送実験に成功しました。

 3テラビット/秒という伝送容量は、1チャネル当り160ギガビット/秒(1秒間に1600億ビット)の伝送容量を持つ、波長1540ナノ(ナノ=1/10億)メートルから1610 ナノメートルにわたる19チャネルの信号を波長多重することによって160ギガビット/秒×19=3040ギガビット/秒(=3.04テラビット/秒)として実現したものです。これは単一ファイバ中の伝送容量としては世界最大の値です。この3テラビット/秒伝送は、NTTが独自に開発した次の3つの主要技術によって実現されています。

1)多数の波長の異なる光パルスを同時に発生させることが可能なスーパーコンティニウム光源

2)3テラビット/秒の信号を一括して増幅することが可能な超広帯域光増幅器

3)光駆動型の超高精度光パルス分離技術

これらの革新的な技術を用いて、テラビット級の信号を簡易な構成で伝送可能であることを実証しました。


<開発の背景>

 21世紀のマルチメディア時代においては、通信回線の利用はインターネットに代表されるようなコンピュータ間通信が主流となり、伝送される情報の量は現在の100 倍にも達すると予想されています(図1)。従って、今後飛躍的に増加する情報を現在と同じコストで伝送するためには、多重化による伝送コストの低減を図る必要があります。多重化技術とは、一度に1本の光ファイバでいかに多くの情報を伝送するかを追求する技術です。その中には、時間幅の短い光パルスに情報を載せた光信号と隣の光信号との間に、他の光信号を時間的に重ならないようにできるだけ多く詰め込んで多重化する時分割多重技術と、波長すなわち色の異なる複数の光信号をプリズムと同じ働きをする光合波器を用いて多重化する波長多重技術とがあります(図2)。

 時分割多重技術においては、NTTは昨年2月に640ギガビット/秒の伝送実験に成功しており、この分野で世界を大きくリードしています。一方、波長多重技術も伝送容量を増大する方法として世界中で広く研究されており、1996年に最初のテラビット伝送実験が報告されて以来、テラビット級の伝送技術の研究が活発化しています。これまでの実験では最高で2.6テラビット/秒が記録されていました。

 しかしそれらの波長多重技術では、1波長当たりの伝送速度は従来技術の延長による20ギガビット/秒以下であり、波長多重数をできるだけ増やすことで全体の伝送容量を確保したものでした。そのため多重数に応じて波長を精密に選択・制御した光源を多数用意しなくてはならず、歩留り、信頼性、コスト等、実用化に向けて大きな課題を残していました。



<技術のポイント>

 今回の伝送実験は、NTTが開発した1つの種パルスから広い波長域にわたって時間幅の極めて短い光パルスを発生させることができるスーパーコンティニウム光源の特長をフルに活用したものです。光送信側では、毎秒10ギガすなわち100億個の光パルスを出射する光源を用いてスーパーコンティニウム光を発生させました。これを16倍に時分割多重して作った160ギガビット/秒の信号を19波長分用意し、光合波器を用いてこれらを波長多重することで3テラビット/秒の信号を生成しました(図3)。

 この3テラビット/秒の信号をNTTが開発した超広帯域光増幅器で19チャネルを一括して増幅し、全長40キロメートルの光ファイバ伝送路を伝送させました。

 受信側では、まず光合波器の入口出口を逆にした光分波器によって3テラビット/秒の信号を波長毎に分離し、1チャネル分160ギガビット/秒の信号を取り出しました。次に、NTTが開発した光駆動型の超高速同期回路を用いて、この1チャネル分160ギガビット/秒の信号と受信部のクロック信号とのタイミングを合わせ、このクロック信号によって光パルス分離回路を駆動して160 ギガビット/秒の信号から10 ギガビット/秒の信号を再生しました。これは、光ファイバ中を秒速20万キロメートルで走る光パルスに長さ1ミリメートル以下の精度でタイミングを合わせ、情報を取り出すという技術です。

 このような新しい技術を結集することにより、3テラビット/秒の光多重信号が1ビットの誤りもなく光ファイバを通して伝送できることを実証しました。



<スーパーコンティニウム光源>

 スーパーコンティニウム(Supercontinuum)とは、種となる光パルスをガラスなどの透明な物質中に入射させた時に、種パルスの波長幅が数100倍に広がる現象です(図4)。ここでは、光増幅器でエネルギーを高めた種パルスを、スーパーコンティニウム発生用に新たに設計された特殊光ファイバに入射することによって高品質のスーパーコンティニウム光を発生させました。このスーパーコンティニウム光を光フィルタに通すことによって、多数の波長の異なる種パルスのコピーを同時に取り出すことができます。そのため、スーパーコンティニウム光は波長多重用の光源に最適で、しかも非常に高い安定性を有するので、超大容量の波長多重伝送システムを構築する上で、経済化・高信頼化に貢献するものと考えています。



<今後の展開>

 スーパーコンティニウム光源は、入射光パルスより短い時間幅のパルスを発生可能なため、時分割多重での多重数をさらに上げることが可能で、その潜在的伝送容量は5テラビット/秒を上回ります。

 NTTでは、将来さまざまなマルチメディアサービスが利用されるようになっても、お客さまに、伝送容量の限界から生じる不自由さを感じさせることのない通信網を実現するため、テラビット伝送の研究開発を続けていく予定です。



別紙
図1:高速・大容量光伝送技術の進展
図2:時分割多重、波長多重の原理
図3:3テラビット/秒 伝送実験概要図
図4:スーパーコンティニウム光源の原理




本件に対するお問い合せ先
 NTT先端技術総合研究所
 企画部 真鍋義文
 Tel 0462-40-5152
 FAX 0462-70-2365



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