News Release


平成11年3月23日

日本電信電話株式会社



小型・低電力のHDTV対応MPEG-2リアルタイムエンコーダを開発
-1ボードで電池駆動を世界で初めて実現-


 NTTは、HDTV対応としては世界で初めて1ボードで電池駆動できる小型・低消費電力のMPEG-2ビデオエンコーダを開発しました。

 放送のディジタル化が進む現在、HDTV方式にも対応できるMPEG-2ビデオエンコーダのニーズはますます高まっています。しかし、現在、市場に出回っているHDTV専用MPEG-2エンコーダは、大型、大電力、高価で、幅広いニーズに応えうるものとはなっていません。

 今回開発した1ボード低電力のHDTV対応MPEG-2エンコーダは、NTT独自のMPEG-2エンコーダ用LSI「SuperENC」をベースにしたもので、従来品と比べ、体積比で約5分の1、消費電力で約20分の1を実現しました。これにより屋外での利用が可能になると同時に、一桁近い低価格化を見込めるのものにしました。

 今後、ディジタル映像時代の多彩なコンテンツ製作における利用に向け、一層の小型化、画質向上の研究を進めます。



<開発の背景>

 放送のディジタル化が急ピッチで進められています。とりわけ最近話題になっているのが、放送方式のHDTV化です。間もなく開始されるBSディジタル放送がHDTVを主体とする他、CSあるいは地上波ディジタルでもHDTVの導入が検討されています。

 こういった放送のディジタル化にあたり必要とされるのが動画像データの圧縮です。現在では、NTSC(*1)からHDTVまで対応する動画像の圧縮方式としてはMPEG-2が国際標準とされています。放送事業者は映像をMPEG-2エンコーダで圧縮して放送し、それを受信者側が専用チューナに内蔵されるMPEG-2デコーダで伸長してテレビに映し出す仕組みになっています。

 しかし、これまでのところ、標準的なテレビ映像からHDTVまでに対応するMPEG-2エンコーダはありませんでした。さらに、HDTV専用につくられたエンコーダは、個別部品で作られているため、高価、大型、大電力という欠点を持っていました。これでは、コンテンツ製作にも制約が生じます。

 そこで、標準的な映像からHDTVまでに対応する小型・低消費電力・低価格のMPEG-2エンコーダの開発が待たれていました。



<開発の経緯>

 NTTでは、平成8年に、双方向通信に適した低遅延・高画質のMPEG-2エンコーダボード「黎明」を世界に先駆けて開発しました。平成10年には、その技術をさらに発展させて、MPEG-2が対象とするすべての動画像に対応するMPEG-2ビデオエンコーダLSI「SuperENC」をNTTエレクトロニクス株式会社と共同で開発しました。

 とりわけ「SuperENC」は、HDTVまで拡張可能なMPEG-2エンコーダLSIとしては、世界で最も小型・低消費電力を実現し、「HDTV対応のMPEG-2エンコーダは大きい、重い、高い」という“常識”をうち破る礎を築きました。

 その「SuperENC」をHDTV向けに複数個連結して並列動作させたのが、今回開発した世界初の「1ボード低電力HDTV対応MPEG-2ビデオエンコーダ」です。



<主な特徴>

1)低消費電力(従来品の約1/20)

 従来のHDTV専用MPEG-2エンコーダは、個別部品を使って構成されているため、1200-1300Wもの電力を要したのに対し、SuperENC-LSIを用いて部品点数を大幅に削減したことにより、60Wという低消費電力化を達成しました。これにより、商用電源のない屋外でのバッテリ駆動も現実のものに(例えば業務用ビデオカメラの専用バッテリパックを用いれば1時間以上駆動可能)なります。

 これにより、ロケ現場で撮影した映像をそのまま圧縮、中継車などを利用して放送局まで即時に転送するといった利用の仕方も可能になります。


2)小型化(従来品の約1/5)

 従来のHDTV専用MPEG-2エンコーダが50cm立方程度の容積を要したのに対し、体積比で約5分の1を実現しました。十分持ち運びに堪える小ささになりました。低消費電力化とあいまって、機動力のある映像製作をサポートします。


3)マルチフォーマット対応

 アナログ放送からディジタル放送への過渡期にある現在は、様々な放送方式(フォーマット)が乱立する時代でもあります。今回の開発品は、連結するSuperENCの個数の設定を切り替えるだけで1080I(*2)720p(*3)フォーマットに対応できます。(図1参照)


4)低価格(従来品の約1/10)

 従来のHDTV専用MPEG-2エンコーダは数千万円と高価で、キー局など特定のハイエンドユーザにしか手が届かないものでした。しかし、SuperENCは、今後市場の拡大する 録画可能なDVD機器に使用でき、大量生産により低価格になることが予想されます。このため、SuperENCを使用した今回の開発品は、一桁近い低価格設定を可能にします。

 これにより、幅広い放送・映像分野で利用可能となり、マルチメディア情報流通市場全体の拡大に貢献することが期待されます。



<技術のポイント>

 低消費電力化・小型化はSuperENCによって達成されています。

 ただし、SuperENCを連結して並列動作させるためには、新たな課題として、個々のSuperENCチップが受け持っているデータに関する情報を共有させ協調動作させることが必要でした。それぞれのチップは1枚の画像の一部を分担して圧縮しますが、それらが互いに情報交換する仕組みを作らないと、動画像の場合、チップからチップへと移動する画像データが損なわれてしまう可能性があります。

 これは「チップ間データ転送経路(MDT: Multi-chip Data Transfer)」と名付けた新技術で解決しました(図2参照)

 それぞれのチップ間でデータ情報を共有・協調動作させる専用の通信路を形成したわけです

 これにより、HDTV画像の細かな動きも見落とさずに高い圧縮符号化効率を実現することが可能になりました。



<今後の展開>

 4月に米国で行われるNAB(*4) MULTIMEDIA WORLDに出品予定です。また、今秋には製品化される見込です。

 広帯域化される次世代のインターネットでは、HDTV画像を個人が発信することも予想されます。HDTV対応MPEG-2ホームビデオカメラなども商品化されることでしょう。そういったマルチメディア時代に対応すべく、さらに小型化・低消費電力化などの研究を進めてまいります。



<用語解説>

(*1):NTSC(National Television Standards Committee)

 地上波アナログカラーテレビ放送の伝送方式を策定するアメリカの標準化委員会の名称。また、委員会で策定された方式の名称。北米、日本、韓国などで採用されている。有効走査線数525本、毎秒30枚の画像、画面構成比は3:4。


(*2):1080I

 有効走査線数1080本のinterlace(飛越し走査)方式の画像。Interlace方式とは、偶数番の走査線と奇数番の走査線を飛び越しながら交互に処理する方法で、現行地上波テレビで採用されている。


(*3):720p

 有効走査線数720本のprogressive(順次走査)方式の画像で、non-interlacedともいわれる。progressive方式は、全ての有効走査線を一度に処理し表示する方式でinterlace方式に比べ、ちらつきが少ない。


(*4):NAB(The National Association of Broadcasters)

 1923年に発足した全米放送事業者の協会組織(公益法人)。現在、ラジオ約5000社、テレビ約950社を会員としている。本部はワシントン・コロンビア特別区。例年春に開催されるNAB大会は、世界中の映像関係者に最もよく知られた催しで、特に「MULTIMEDIA WORLD」は、次世代放送方式をめぐる画像データの記録・処理・伝送全般の最先端技術展示会とて知られている。(HPはhttp://www.nab.org/




図1:HDTVフォーマットの位置づけ
図2:HDTVエンコーダ構成




本件問い合わせ先
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所
情報戦略担当
0468−59−2032



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