NTTは、従来とは全く異なるコンセプトの情報流通ネットワーク「適応型ネットワーク」の研究開発をスタートさせます。
適応型ネットワークは、将来のネットワークのあるべき姿としてNTTが独自に構想したもので、固定的な機能やストラクチャを基盤とする従来のネットワークにはない“柔軟で自律的な適応力”を持つネットワークです。多様化・複雑化するユーザニーズや各種ネットワークサービス、刻々と変動する通信需要などに即座に対応し、ネットワーク自体の機能と構成をダイナミックに進化させるという画期的特徴を備えています。
この適応型ネットワークの有効性・実現性を検証するための実験(名称MIRAInet)を、光伝送技術を基盤とした最先端のフォトニックネットワーク(*1)で横須賀、厚木、武蔵野の3つの研究開発拠点を結んで1999年10月から開始します。
NTTでは、MIRAInetを通して得られた研究成果を活かし、ユーザの情報収集力や自己表現能力、コミュニケーション能力の拡張を支援する、自然で快適なコミュニケーション環境の実現を目指します。 |
<背景>
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| | インターネットの社会・生活への急速な浸透に象徴されるように、コンピュータ技術や情報通信技術の進展を基盤にした本格的な情報流通社会がいよいよ到来しつつあります。こうした状況の変化は、一方でネットワークを取り巻く新たな問題を生み出しています。
ひとつは、ネットワークユーザの情報格差の問題です。ネットワークの仕組みやサービスは複雑・多様化してきており、必要な情報にアクセスするための知識や手続きもますます高度化しています。その結果、ネットワークやコンピュータの知識の有無による情報格差が見過ごせない問題となりつつあります。
もうひとつは、通信トラフィックの変動や増大に発する問題です。ネットワークの利用形態の変化や、技術の進歩に支えられたサービスの多様化は、通信トラフィックに予測不可能な振る舞いをもたらしています。たとえば、インターネット放送に代表される特定時間帯や特定プロバイダへのアクセス集中、グラフィックや動画など通信データの大容量化などは、電話中心の時代には起こり得なかったものです。
ネットワークオペレータには、このような急激かつ多様な状況変化に即座に対応しながら、ネットワーク資源を有効に利用して安定的にサービスを提供することが求められてきています。 |
<NTTの革新的ソリューション「適応型ネットワーク」> |
| | 情報流通社会では、場所や時間、距離、さらにはネットワークの存在そのものも意識することなく、誰もが自由、快適にマルチメディア情報をやりとりできるべきであるとNTTは考えています。
それを実現するためには、ネットワーク自体が「ユーザ適応力」と「通信需要変動適応力」を持つことが重要なポイントになります。
「ユーザ適応力」とは、ユーザ側がネットワークの状況に合わせるのではなく、ネットワーク側がユーザの環境や刻々と変化するサービス要求に直ちに適応するということです。
また、「通信需要変動適応力」とは、ネットワークの構成や装置の機能自体が、新サービスの導入やマクロなトラフィック変動を吸収するためにダイナミックに変化するということです。
以上の能力をネットワークが備えることにより、自然で快適なコミュニケーション環境をいつでもユーザに提供可能となり、ユーザの情報収集・理解能力や自己表現能力、コミュニケーション能力は大きく拡張されます。
NTTでは、このように状況の変化に即応して変幻自在に機能や構成を変化することができる「適応型ネットワーク」を情報流通社会のネットワーク基盤と位置づけ、これを実現するための様々な先端基盤技術の研究開発を“MIRAInet”で推進していきます。 |
<適応型ネットワークの特徴> |
| | NTTでは、適応型ネットワークのコンセプトを「知性」、「進化」、「シンプル&シームレス」という3つのキーワードで表しています。 |
| | 【知性】ユーザに対する適応性 |
| | ネットワークが知性を持ってユーザの情報関連活動を支援します。たとえば、ユーザの要求だけでなく、嗜好やとりまく環境を把握して、これに適した付加価値情報・サービスをタイミング良く提供します。また、ユーザ端末のネットワークとの接続設定や機能の自動更新をネットワーク側がサポートします。 |
| | ●実現させるための技術 |
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【進化】通信需要変動に対する適応性 |
| | 革新的なプログラマブルハードウェア(*2)技術により、ネットワークが構成や機能を自律的に進化させ、通信需要の質的・量的変動に対応します。たとえば、新規通信サービスの導入の際に通信装置やインタフェースの新たな設置を不要とし、格段に少ない設備投資と短い導入期間でタイムリーに新サービスを提供することを目指します。また、予測できないトラフィックの急激な変動をネットワーク構成のダイナミックな変更により吸収したり、サーバへのアクセス集中を通信装置のリアルタイム機能変更により負荷分散させ、設備効率の良い経済的なネットワークの構築を図ります。 |
| | ●実現させるための技術 |
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【シンプル&シームレス】大容量の光・無線融合インフラ |
| | 光伝送技術を基盤としたテラビット毎秒(1兆ビット毎秒)級の超大容量コアトランスポートネットワークと、光・無線融合のユーザアクセスネットワークにより、固定、移動、衛星の枠を越えたシームレスなネットワークサービスを可能にします。前述したネットワークの機能・構成のリアルタイム更新技術と組み合わせることで、様々な利用状況において100Mb/sクラスの双方向アクセスを低料金で提供できるネットワークの構築を目指します。 |
| | ●実現させるための技術 |
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<適応型ネットワークの検証実験“MIRAInet”>
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| | 適応型ネットワークの有効性・実現性を検証するために、横須賀、厚木、武蔵野の3つのNTT研究開発拠点を結び、大規模な検証実験“MIRAInet”を本年10月から開始します。
3拠点を結ぶネットワークには、NTTの研究所で開発中の最先端のフォトニックネットワークを利用します。これは1本の光ファイバに数10もの波長の異なる光信号を同時に運び、ネットワークの接続点でも波長情報に従って光のままで経路選択を行うことができるという画期的特徴を持つネットワークです。
MIRAInetは、この大容量かつ柔軟なフォトニックネットワーク基盤の上で、適応型ネットワークサービスを実現するための新しいネットワーキング技術や、伝送技術、運用技術、ハード&ソフトウェア技術など、多種多様な先端基盤技術の検証実験を進めていきます。
(図4 MIRAInetの構成と主要な実験項目) |
<今後の展開>
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| | MIRAInetでは、フォトニックネットワークの検証実験と各種先端基盤技術の検証実験を並行して進め、順次、それらの技術を組み合わせた運用実験へと発展させていきます。2〜3年後にはネットワークトータルでの検証実験を実施する予定です。 |
<用語解説>
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| | 1)フォトニックネットワーク |
| | 一本の光ファイバの中に、波長が異なる複数の光信号を通すことで大量の情報の伝送を可能にする波長多重伝送技術と、電気的処理なしに、光信号のままで波長ごとに経路を振り分ける波長ルーティング技術などの光処理を利用したネットワークのこと。 |
| | 2)プログラマブルハードウェア |
| | 高性能なハードウェアと柔軟性あるソフトウェアの中間的性格を備えた、革新的情報処理メカニズムを基盤とする装置のこと。状況の変化やアプリケーションに応じて機能と構成をリアルタイムに変化させることが可能。適応型ネットワークでは、インフラ用設備からユーザ端末まで、様々なプログラマブルハードウェアの利用が想定される。 |