News Release

2010年 3月25日


光ファイバ1本で世界最大容量69テラビット伝送に成功


 日本電信電話株式会社(以下、NTT 東京都千代田区 代表取締役社長 三浦 惺)は、1本の光ファイバに、1波長171Gb/sの信号を432波長多重させ世界最大となる毎秒69.1テラビット(Tb/s:テラは1兆)の大容量データを240km伝送させることに成功しました(図1)。これまでの光伝送容量の世界記録となっていた32Tb/sを2倍以上更新したもので、将来求められる基幹光ネットワークを構築するための有望な技術として期待されます。
 本成果は、2010年3月25日(米国時間)OFC/NFOEC2010にてポストデッドライン論文として発表する予定です。


<研究の背景と経緯>
 インターネットでの高精細な動画配信などコンテンツ大容量化に伴い、近年での通信トラヒックは年約40%増の飛躍的な増大を続けており、その増大する通信トラヒックに対応するため、NTTの未来ねっと研究所では、トラヒックを効率的に収容した、大容量長距離伝送が実現できる基幹光ネットワークの研究開発などに取り組んでおり、これまでに1本の光ファイバで13.5Tb/sの大容量信号を7,000km以上伝送させるなどに成功しています。


<技術のポイント>
<1>送信部: 多値変調方式(16QAM方式※1)による周波数利用効率向上を実現
<2>受信部: 余分なオーバヘッド信号が不要な新規復調アルゴリズム実現
<3>中継部: 多数の波長を増幅できる広帯域光増幅(C帯+拡張L帯)の実現
 送信信号には25GHz間隔で高密度波長多重が実現できる16QAM方式を採用し、受信部には新規デジタル信号処理技術※2を用いて復調しています。光増幅部では増幅器内で発生する非線形効果を抑圧し、C帯および拡張L帯※3による広帯域(10.8THz)増幅(波長数432)を実現しました。本変調方式は偏波多重方式※4と組み合わせて、シンボルレート※5を1/8に低減できるため、電気信号速度の負荷が軽減すると同時に、光スペクトル帯域※6が狭くなり、16QAMにおいては最高となる6.4b/s/Hzの周波数利用効率を達成しています。


<今後の展開>
 本技術を用いることで、1波長100Gb/sを超えるシリアル信号を多数波重多重した大容量信号を基幹光ネットワークで高信頼に伝送することが可能となります。今後ますます増加が予想されるデータトラヒックを1本の光ファイバに効率的に収容させた、より経済的な基幹光ネットワークの実現を目指し研究開発を進めていきます。


詳細

<技術の詳細>
(1)実験構成
 送信部では16QAM変調方式と偏波多重方式を組み合わせて、1チャネル(波長)あたり171Gb/sの信号を生成します(図2)。シンボルレートは21.4 Gbaud(171Gb/sの1/8)です。16QAM信号は変調器の中で強度比が2:1となる2つのQPSK信号を発生させ、それを合波することにより生成しています。171Gb/sという速度は160Gbs信号(ペイロード)をOTNフレーム※7に収容する場合を想定した速度で、誤り訂正符号と波長多重管理用オーバヘッドバイトが含まれます。25GHz間隔で並べた1527〜1620nmの光信号432波を波長多重し、69.1Tb/sの信号にしています。
 受信部ではコヒーレント受信とデジタル信号処理技術を用いています(図3)。コヒーレント受信は従来のNRZ信号の直接受信に比べて受信感度が3dB以上向上します。高速な光信号は、光ファイバを伝播する過程で波長分散および偏波モード分散による波形歪みを受け、伝送距離が制限される要因となりますが、デジタル信号処理技術による歪補償を行い、性能を大幅に向上させました。16QAM信号を復調するのに、新規のアルゴリズムを用いて余分なオーバヘッド信号が不要なパイロットレス処理※8を行いました。
 C帯と拡張L帯を組み合わせた10.8THz(従来の1.35倍)の増幅幅を有する超広帯域光増幅技術を用い、69.1Tb/s信号光を240km伝送させました。光増幅中継においては、分布ラマン増幅を用いて低雑音化を図ると同時に、光強度が高まるために発生する非線形光学効果を抑圧する工夫を行いました。図4に240km伝送後の受信特性と光スペクトルを示します。432波長全てが受信限界値以上であり、良好な特性となっています。

(2)キーデバイス
 NTTのフォトニクス研究所では、未来ねっと研究所と連携して、QAM変調器、波長可変光源ならびにコヒーレント受信用回路を開発しました。光変調器には平面型光集積回路とニオブ酸リチウム(LN)変調器をハイブリッド実装したPLC-LN変調器を用い、1台の変調器で16QAM信号を安定に発生させています。また、光源には従来より線幅が狭い狭線幅波長可変DFBレーザを用いて、位相雑音を低減させています(線幅100-200kHz)。受信部には小型集積化が可能な平面型光集積回路を用いた偏波ダイバーシティ型90度ハイブリッドを使用しました。


図1  最近の主な10Tb/s以上の大容量伝送実験
図2  偏波多重16QAMによる171Gb/s信号の生成
図3  デジタルコヒーレント信号処理技術
図4  240km伝送後の受信特性と光スペクトル


<論文名>
 "英語タイトル 69.1-Tb/s (432 x 171-Gb/s) C- and Extended L-Band Transmission over 240 km Using PDM-16-QAM Modulation and Digital Coherent Detection"
  (日本語タイトル 偏波多重16QAM変調とデジタルコヒーレント検波を用いた69.1Tb/s(432 x 171Gb/s)C帯拡張L帯伝送)


<用語解説>
※1:16QAM方式
QAMはQuadrature Amplitude Modulation(直交振幅変調)の略で、2つの直交した(位相関係が90°になっている)信号光の振幅、および、位相の両方に情報を載せる変調方式です。16QAMは16値の直交振幅変調方式で、一度に4ビット分の情報が送れます。

※2:デジタル信号処理技術
受信した電気信号にアナログデジタル変換を行い、そのデジタル信号に対し波形歪みなどを電気的に補償し、復調を行う技術です。
(ローカル光を用いてコヒーレント検波した後デジタル信号処理を行う技術をデジタルコヒーレント技術と呼びます)。

※3:C帯、拡張L帯
光通信では光ファイバの伝播損失が小さい波長帯を信号光として使用します。
1530-1565nmをC帯(Conventional Band)、1565-1625nmをL帯(Long Band)と呼びますが、L帯で実用的な帯域は光増幅器に依存し、1570-1600nm付近の約4THzとなっています。これを7THzにまで拡大した帯域を拡張L帯と呼びます。

※4:偏波多重方式
光ファイバを伝播する2つの直交した偏波(x偏波、y偏波)のそれぞれに情報を載せる多重方式で、単一偏波を用いる方式に比べ2倍の情報が送れます。

※5:シンボルレート
伝送路に符号を送り出す速度で、単位はボー(baud)です。
16QAMを例にした場合、一度に4ビット分の情報を送るので、シンボルレートは伝送速度(ビットレート)の1/4となります。

※6:光スペクトル帯域
光周波数(波長)軸上にて信号光を測定したスペクトル形状の幅を光スペクトル帯域と呼び、本帯域が狭いほど高密度に波長多重が実現できます。

※7:OTNフレーム
OTNはOptical Transport Network(光トランスポートネットワーク)の略で、国際電気通信連合(ITU-T)で標準化された波長多重技術を前提にした高信頼光ネットワークで、OTNフレームは光信号を伝送させるときに用いるフレームです。

※8:パイロットレス処理
予め分かっている情報(参照信号)をもとに信号処理を行うのでは無く、受信した信号だけで信号処理を行うことで、ブラインド処理とも呼びます。



<本件に関するお問い合わせ先>
日本電信電話株式会社 先端技術総合研究所
企画部 広報担当 飯塚 TEL 046-240-5157
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact.html


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