2010年4月6日
発表資料
名古屋大学
日本電信電話株式会社
NTTエレクトロニクス株式会社


低消費電力多階層光クロスコネクトノードを開発
〜 消費電力を電気ルータの約1/20に低減 〜


 名古屋大学(以下名古屋大学、愛知県名古屋市、総長:M口道成)、日本電信電話株式会社(以下NTT、東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺)、NTTエレクトロニクス(以下NEL、神奈川県横浜市、代表取締役社長:吉村 寛)は、独立法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(略称:CREST)からの受託研究※1により、通信ノード※2の消費電力を劇的に削減できる新しいネットワークアーキテクチャである「多階層光クロスコネクト技術※3」に基づいたプロトタイプ装置を試作しました。事業会社が商用として敷設している光ファイバで実証実験を行ました。その結果、本プロトタイプ装置では、電気ルータと比較し、同じスループット当りの消費電力を約1/20まで低減できることを世界で初めて実証しました。


【背景】
 IPネットワークにおいてパケット信号をルーティングするルータは、光信号をまず電気信号に変換し、パケット毎に行き先をスイッチングした上で、再度光信号に変換して次の宛先に送出しています。そのため、トラフィックが増大するに従い、ルータの規模が大きくなり、多大な電力を消費しています。この電力消費を低減するため、ルータによる電気処理を行わず、光信号のままルーティングできる小型で低コストの光クロスコネクトの開発が世界的に進められています。(図1


【成果の概要】
 今回開発した多階層光クロスコネクト技術では、複数の波長パス※4を束ねた波長群単位で切り替える部分と、波長群を構成する波長パス単位で切り替える部分の2階層に分離したことで、装置に用いられる光スイッチの規模を1/2以下に抑え、多数の素子を集積化できる平面光波回路技術(PLC)※5を適用することが可能になりました。新しい構成の波長群合分波器や光スイッチなどのデバイスをPLC技術で製作し、それを用いて多階層光クロスコネクトノードを試作しました。この試作機を用い、事業会社が商用として敷設している光ファイバで実証実験を実施した結果、電気ルータと比較し、同じスループット当りの消費電力を約1/20まで低減できることを世界で初めて実証しました。


【今後の展望】
 ネットワークのトラフィックは今後もますます増大しますが、一方で、そのための伝送装置は低消費電力化が要求されています。この多階層光クロスコネクト技術は、この相反する2つの要求を同時に満たす技術として有望であり、ネットワークとして動作させるためのネットワーク制御系の開発も含め、実用化に向けた研究開発を継続する予定です。


詳細

<技術詳細>

 多階層光クロスコネクト技術は、光信号をいくつかの波長群にまとめて行き先を切り替える波長群クロスコネクト部と、特定の波長群を各波長パスに分解して行き先を切り替える波長クロスコネクト部の2階層から構成されています(図2)。この方式を採用することで、光クロスコネクトの特長である波長パス設定の柔軟性をほとんど損なうことなく、装置の構成を「大規模の光スイッチが必要」な構成から「小規模の光スイッチを複数使う」構成に変更することができます。その結果、多数の素子を集積化することが可能な平面光波回路技術(PLC)を適用することが可能となり、光クロスコネクト装置を低コスト化、小型、高信頼で実現することができます。

 今回は、図2のような光ノードを製作しました。波長群クロスコネクト部では、8つの方向から入ってきた1波長あたり10Gb/s、40波長のWDM信号を8波長ずつの5つの波長群に分け、それぞれの波長群の行く先を入れ替えて、8つの方向へ送出することができます。その際、8つの方路から来た光信号のうち最大4つの方路から来た信号を波長クロスコネクト部に送ることができます。波長クロスコネクト部では、波長群に含まれる8つの波長信号を分離した上で、IPルータへのドロップ或はそれぞれの波長信号の行き先を入れ替えた上で波長群を再構成し、波長群クロスコネクト部に入力します。今回は、この光スイッチや光フィルタなどのキーとなるデバイスをすべて平面光波回路で構成し(図3)、小型で安定性・信頼性・量産性に優れた多階層光クロスコネクト装置(図4)を実現しました。このような構成により、4.8Tb/sスループットの信号を消費電力350Wという低消費電力でルーティングすることができ、例えば単位スループットあたりの消費電力は電気ルータと比べて約1/20まで低減することが可能となりました。実フィールドに敷設されたファイバを用いて、このノード装置の多段接続特性を検証し、多階層光クロスコネクト技術が有望な技術であることを実証しました。


各研究機関での役割は次の通りです。

・名古屋大学:

低消費電力・低コストを実現する多階層光クロスコネクトネットワークの提案と設計並びに多階層光クロスコネクトアーキテクチャ
・NTT: 多階層光クロスコネクトノードを実現するノード構成法検討と伝送特性の詳細設計に基づくプロトタイプ開発
・NTTエレクトロニクス: 多階層光クロスコネクトノードを構成する光部品の開発


<用語解説>

※1 CRESTの委託研究
 本実験成果は下記のCREST委託研究による。
 「超低消費電力光ルーティングネットワーク構成技術」

※2 通信ノード
 ネットワークを構成する各拠点に配置された通信装置のことです。ノードでは、別のノードから送られてきた信号を中継・交換(行き先切替)・受信、を行うほか、そのノード発の信号を送出する機能を有しています。各拠点のノードは光ファイバ(光リンク)で接続されています。

※3 光クロスコネクト技術
 波長パスを、電気処理を行わず、光スイッチなどを用いて行く先を切り替える(クロスコネクトする)技術です。通常の電気ルータでは、光−電気変換して、パケット毎に行き先を切り替えて、それぞれの行き先毎に再度束ねた後、電気−光変換をして光信号として送出される。光クロスコネクトではこれらの電気的な信号処理が省略できるため、低消費電力のネットワークを実現することが可能になります。

※4 波長パス
 波長の異なる光に別々の信号をのせて伝送する波長分割多重(WDM)方式を用いたフォトニックネットワークにおいて、それぞれの波長信号が結ぶ2点間の通信路のことです。波長をラベル(識別子)として、光スイッチにより経路(ネットワーク上のルート)を設定することで、電気ルータを用いなくても行き先切り替え(クロスコネクト)が可能になります。

※5 平面光波回路(PLC)
 石英系ガラスに光の道(導波路)を作製した光の回路。信頼性、集積性、量産性に富み、光スイッチ、光フィルタ、光分岐器などの機能が実現できます。



図1 多階層光クロスコネクトの適用領域
図2 多階層光クロスコネクトノードの構成
図3 多階層光クロスコネクト装置に用いられている光部品
図4 多階層光クロスコネクト装置の外観



<本件に関する問い合わせ先>
名古屋大学
広報室 平松 利朗
TEL:052-789-2016
E-mail:kouho@post.jimu.nagoya-u.ac.jp

日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所
企画部 広報担当 飯塚
TEL:046-240-5157
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact.html

NTTエレクトロニクス株式会社
広報担当 萩原
TEL:045-414-9206
E-mail:nelcc@ntt-el.com


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