(報道発表資料)
2010年9月2日
国立大学法人東京大学
学校法人東洋大学
日本電信電話株式会社


「インターネット利用における不安に関する国際比較調査」により
“安心”と“安全”の乖離を実証
〜安全でも、不安を感じる日本人の特徴が明らかに〜


 国立大学法人東京大学(以下、東京大学 東京都文京区 総長 濱田 純一)、学校法人東洋大学(以下、東洋大学 東京都文京区 学長 竹村 牧男)、および日本電信電話株式会社(以下、NTT 東京都千代田区 代表取締役社長 三浦 惺)は、インターネットをより安心して利用いただけるよう、インターネット利用に対して抱く「安全」と「安心」の意識の構造を明らかにすることを目的として、インターネット利用に際してのクレジットカード情報の悪用やウイルスなどの被害経験など、「安心」「不安」の感覚について、世界 10 カ国を対象とした国際比較調査を行いました。
 従来の調査と異なり、今回の調査では、ウイルス感染など様々なネットの脅威に対する「被害経験の有無」と「不安の有無」を同時にヒヤリングすることで、安全と安心がどのような関係にあるかを詳細に得ることが出来ました。その結果、セキュリティ対策などの技術的な「安全」が確保されていても、利用時に「不安」を感じるという、日本人のインターネット利用において「安心と安全の乖離」※1が存在することが実証されました。
 なお、本調査内容を含む研究結果につきましては、9 月 4 日から長崎県内で開催されます日本社会情報学会(JASI&JSIS)合同研究大会において発表する予定です。


<調査の背景>
 インターネットの利用は年々増大し、2000年には37.1%だった日本のインターネット人口普及率は2009年には78.0%にまで達しています。※2しかしながら、インターネット利用に不安を覚えている利用者も多く、より安心して利用できるネットワーク環境の構築が求められています。
 これまで、より「安全」なインターネット環境を提供するための技術的な研究は多数行われていましたが、社会心理学の見地※3から「安心」を理解するという、学術的・体系的な研究は行われておりませんでした。そこで今回、東京大学大学院情報学環橋元良明教授研究室、東洋大学社会学部中村功教授研究室・関谷直也准教授研究室、NTT情報流通プラットフォーム研究所では、安全なネットワークを前提として、利用者に「安心」してインターネットを利用してもらうには何が必要か、安心を阻害する要因、安心の必要十分条件は何かを探り、安心をもたらすネットワークサービスへの応用を目指した、国際比較調査を実施したものです。
 なお、本調査を実施した共同研究は、NTTと東京大学との間で締結された組織連携型Proprius21※4の下で創出され、発展したものです。


<調査方法>
調査地域 世界 10 カ国の、各国最大都市
日本、アメリカ、中国、イギリス、韓国、ドイツ、フランス、
フィンランド、シンガポール、チリ
調査対象者 15〜69 歳の男女、各国それぞれ 330 名(合計 3300 名)
調査抽出法 性・年齢層別割当法。男女12セル毎、15〜19歳男女各15人、20〜29歳・30〜39歳・40〜49歳・50〜59歳・60〜69歳男女各30人に達するまで回収を行い、合計各国330標本を収集。
調査方法 電話調査法(Random Digit Dialing 法)
調査期間 2010 年 1 月 23 日〜 2 月 3 日
質問内容 インターネットでの様々なユーザ行動・サービス利用について、不安の有無(25 問)、被害経験の有無(17 問) を含む、全76問を質問。


<調査結果>
 今回の調査結果から、日本人は諸外国に比べ、漠然とした不安を感じやすい傾向があることがわかりました。現在、インターネットセキュリティに関しては、従来から多くの技術・製品が提供され、その導入も進んでいます。今回の調査においても、被害経験の割合が他国より低いことから、日本国内におけるインターネットセキュリティは高いレベルにあると考えられます。しかしながら、日本人は他国よりも多くの方がネット利用について不安を抱いており、「安全」なだけでは「安心」してインターネットを使うことができないという「安心と安全の乖離」が明らかになりました。
 なお、調査結果の詳細は、別紙12をご参照ください。

 代表的な調査結果を以下に紹介いたします。
 ネット上のトラブルのうち、個人情報や個人に対する中傷に関する項目について調査したところ、日本人は被害経験がないにもかかわらず不安を感じる割合が非常に高いことがわかりました。
 たとえば、他人によってインターネット上に自宅住所や電話番号を勝手に載せられてしまう経験は、10 カ国中9位(1.2%)と低い値であるにもかかわらず、このことを不安に思う割合は10カ国中2 位(82.7%)と高い値でした。とくに女性に限定した場合、自宅住所や電話番号をネットに掲載されたことがないにもかかわらず不安に思う割合が1位(88.5%)、悪口・暴言・挑発的な言葉を書かれたことがないにもかかわらず不安に思う割合も 1 位(75.2%)となりました(別紙1)。
 この原因として、まず日本において個人情報保護に対する意識が高いことが考えられます。その一方で、個人情報漏えいやネット上での中傷に対して日本人が大きな不安を抱いていますが、これらの事象をネットなどで見聞きする頻度が多く、それによって不安を抱く頻度も相対的に高くなるのが原因の一つと考えられます。


<今後の展開>
 今後は、日本人を対象として、各年代別/利用サービス毎に区別した上でさらに詳細な調査を行い、インターネット利用における不安の原因を研究する予定です。さらにNTTとしては、これらの知見を活用し有効な対策を探ることで、真に安心して利用できるネットワーク社会の確立を目指した研究開発を進める予定です。


【用語解説】
※1   「安心と安全の乖離」
 技術的に解決可能な客観的「安全」だけで、主観的な「安心」が得られるとは限らない、ということを指します。現在までに、「安心と安全の乖離」が原子力などの機械安全の分野において指摘されております。
※2   インターネットの人口普及率
 情報通信白書(平成22年度版)【総務省編】から引用しています。
※3   社会心理学の見地
 心理学の方法を用いて、社会との関係から個人の経験と行動を解明しようとする立場を指します。
※4   Proprius21について
 東京大学産学連携本部が主催する、『成果の見える共同研究』を創出するための共同研究立案企画プログラム。NTTと東京大学の間では多様な連携が行われている状況を踏まえ、個別の活動を組織立てて情報および意思の疎通を図り、さらなる共同研究を通じた情報通信分野でのイノベーション創出を目指して、ステアリング機能を有するProprius21推進委員会を設置した「組織連携型Proprius21」を2007年6月に開始しました。



(別紙1)
(別紙2) その他の結果(一部)



【本件に関するお問い合わせ】

国立大学法人東京大学
大学院情報学環
教授 橋元 良明
TEL: 03-5841-5937
E-mail: hasimoto@iii.u-tokyo.ac.jp
産学連携本部 産学連携研究推進部
特任准教授 筧 一彦(かけひ かずひこ)
TEL: 03-5841-2792
E-mail: proprius21@ducr.u-tokyo.ac.jp

東洋大学
総務部広報課
TEL: 03-3945-7571
E-mail: mlkoho@ml.toyonet.toyo.ac.jp

日本電信電話株式会社
情報流通基盤総合研究所
企画部広報担当
TEL: 0422-59-3663
E-mail: islg-koho@lab.ntt.co.jp


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