(ニュースリリース)
2011年2月15日
日本電信電話株式会社(以下 NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦惺)は、マイクロマシン技術※1を用いて作製した微細な板バネを振動させ、複数の論理演算を同時に実行できる新しいデジタル演算の手法を開発しました。これは、1個の基本素子だけで論理回路をも構成できる可能性を持つ世界で初めての技術です。
今回得られた成果は、消費電力の低さや耐環境性の強さが期待されている「ナノマシンコンピュータ」※2を実現するために必要な基盤技術のひとつとして、英国の電子版科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」※3(英国時間2月15日付)に掲載される予定です。
本研究の一部は独立行政法人日本学術振興会(東京都千代田区、理事長:小野元之)科学研究費補助金の援助を受けて行われました。
現代社会では、情報化が進み、機器が処理する情報量が増大化している反面、コンピュータのような情報処理機器は環境問題に配慮し、省エネルギー化することが求められています。
現在のコンピュータでは、回路上に電気を流すことで演算を行うトランジスタが、演算素子として広く使われていますが、NTTでは、トランジスタに比べ100分の1以下という桁違いに小さな消費電力で演算できる可能性を持ち、メモリーや論理回路などのデジタル機器への応用が注目されているナノマシンコンピュータの研究を続けてきました。
通常のコンピュータでは、最も基本的な論理演算であっても複数のトランジスタが必要ですが、今回NTTの物性科学基礎研究所※4が開発した手法では、マイクロマシン技術を用いて作製した厚さ1.4µm(ミクロン:1ミクロンは100万分の1メートル)という微細な板バネ素子をたった1個だけ使い、周期的な電圧を加えて発生させた約10 nm(ナノメートル:ナノは10億分の1)の微細な板バネの振動に複数のデジタル情報を異なる周波数を用いて入力する事で、複数の論理演算を同時に実行することに成功しました。
光ファイバー通信で使われる、異なる波長の波に異なるデジタル情報のせて伝送する波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing: WDM)※5技術と同様に、異なる周波数の振動に異なるデジタル情報をのせ、1個の板バネ素子で同時に複数の演算処理を実現しました。(図1参照)
論理演算を行うには、2つの異なるデジタル情報から、演算の出力となる第3のデジタル情報を作り出す必要がありますが、本技術では、レーザー技術で用いられているパラメトリック周波数変換※6を用いて、板バネ素子によって2つの異なる周波数の振動から、演算の出力となる別の周波数の振動を作り出すことに成功し、基本論理演算※7となる AND、OR、XOR、さらにはそれらの複合演算の動作を確認しました。(AND、OR については図2参照)
トランジスタを用いた演算装置では、基本論理演算を行うトランジスタ同士を配線で繋げ、複雑な回路を構成しています。今回開発した手法では、新たな周波数振動を次々と作り出すことで、20個以上のトランジスタを複数連結した複合論理回路と同等の演算機能を、たった1個の板バネ素子で実現しました。
今後は、より大規模な任意論理回路への適用可能性や、動作速度、消費電力などについて確認を行い、実際のコンピュータとしての実用可能性を検証していきます。
Interconnect-free parallel logic circuits in a single mechanical resonator
(単一機械共振器による相互配線不要な並列論理回路)
先端技術総合研究所
企画部 広報担当
TEL 046-240-5157
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