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NTT持株会社ニュースリリース

(報道発表資料)

2012年2月13日

日本電信電話株式会社

電流注入フォトニック結晶レーザを開発
〜マイクロプロセッサの消費電力量を大幅に削減可能〜

 日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺、以下NTT)は、マイクロプロセッサ※1間やマイクロプロセッサ内のデータ転送において、極めて低い電力の消費で動作可能な電流注入フォトニック結晶レーザ※2を開発しました。
 本レーザによりサーバやルータなどのIT機器で多くの電力を消費しているマイクロプロセッサの消費電力量が4割程度削減可能となります。さらに、IT機器からの発熱が削減されることでデータセンタ等の空調機が使用する消費電力量を大幅に削減できると期待されます。
 なお、本研究成果は、米国の光学誌「Optics Express」2月13日版に掲載されます。
 また、本成果の一部は、NEDO助成事業「CMOSプロセッサ上フォトニックネットワークチップの研究開発」によるものです。

1.研究の背景

 近年、FTTHなどのブロードバンドサービスやスマートフォンの爆発的普及に伴い、社会で扱う情報量は、2025年には200倍になると見込まれています。こうした状況に対応すべく情報を処理するIT機器の数と処理容量が大幅に増加することにより、情報処理を担うサーバ・ルータなどのIT機器の総消費電力量は2025年には5倍になると試算されています。(図1) 
 NTTの研究所では、これらIT機器の消費電力と発熱の問題を抜本的に解決するため、IT機器を構成する部材の中で最も電力消費が大きいマイクロプロセッサの消費電力の低減に着目いたしました。具体的には、マイクロプロセッサ間およびマイクロプロセッサ内のデータ転送に光技術を適用する研究を続けています。(図2) 

2.研究の成果

 今回、NTTの研究所は、光の波長と同程度のサイズの活性層※3をフォトニック結晶構造の共振器※4に埋め込み、超小型半導体レーザ※5を開発しました。本レーザは世界で初めて電流注入※6による室温環境(25°C〜30°C)での連続的な動作に成功しました。動作に必要な実効電流は10マイクロアンペア程度であり、極めて小さな電流で動作することを確認しました。また、これまで埋込構造を用いないフォトニック結晶レーザのパルス動作時に得られていた光出力強度より3桁程度大きい1.8マイクロワットのパワーを持っています。(図3) 
 電気信号でレーザを駆動し光信号へ変換する際には温度の影響を受けるため、室温環境(25°C〜30°C)での連続的な動作をおこなう電流注入レーザ開発は最も大きな課題でした。本レーザの開発はコンピュータコム※7向けの新たな半導体レーザ適用の道を切り開く成果といえます。(図4) 

3.技術のポイント

(1)波長サイズ埋込活性層フォトニック結晶構造の実現(図5) 

 半導体レーザにおいて消費エネルギーの削減は、キャリア密度が一定の条件の下では活性層体積を小さくすることにより実現できますが、小さな活性層体積でレーザ動作を得るためには高い光閉じ込めが必要です。従来の微小共振器レーザでは、活性層で発生した熱を効率的に放熱する構造が実現されていなかったため、多くの研究機関で電流注入フォトニック結晶レーザが検討されていました。電流注入に伴い発生する熱の影響のため、室温連続動作についてはこれまで実現されていませんでした。
 NTTの研究所ではこれらの問題を解決するため、LEAPレーザ※8を開発してきました。なお、LEAPレーザは下記のような特長を持つため、レーザ特性が大幅に改善され、これまで得られなかった室温で連続動作をおこなう半導体レーザを実現することが出来ました。

特徴1 ナノメートル程度の高精度な選択成長およびエッチング技術により世の中で最も小さな体積(波長程度のサイズ)の埋込活性層をフォトニック結晶共振器内に作製
特徴2 埋込活性層構造によりきわめて微小な領域に光とキャリアを効率的に閉じ込め
特徴3 埋込InP層が活性層(InGaAsP)より一桁以上熱伝導率が大きな為、活性層で発生した熱を効率的に放熱可能

(2)イオン注入※9、熱拡散※10による横方向pin接合※11の実現(図6) 

 LEAPレーザはこれまで開発されてきた半導体レーザとは異なり基板と平行方向にpin構造を作製することが必要です。そのため従来の半導体レーザの作製方法と異なり成長後にpn接合を形成する方法が適しています。今回シリコンCMOS※12の作製で用いられているイオン注入や熱拡散を用いて真性InP層に不純物を拡散させてpin構造を実現しました。この方法はシリコンCMOSプロセスで実証されているように大面積で均一な特性の素子を作製することが可能となるため将来の大規模集積光ネットワーク回路の作製に適しています。

4.今後の展開(図7) 

 NTTの研究所は、まず本レーザを適用したマイクロプロセッサ間のデータ転送について2016年を目処に商用化するべく取り組んでいきます。
 さらに、2022年を目処にマイクロプロセッサ内のデータ転送の商用化を目指し、大規模な光ネットワーク回路の作成およびシリコンCMOSの集積化を行います。これによりマイクロプロセッサの消費電力を従来から4割程度削減可能であり、サーバやルータなどのICT機器の大幅な低消費電力化を実現します。

用語解説

※1マイクロプロセッサ
 コンピュータにおける演算処理を行い半導体集積チップの事。シリコンCMOSを用いて作製される。
※2フォトニック結晶レーザ
 レーザは活性層と共振器から構成されている。レーザとして動作するためには活性層の体積が小さくなるほど高い光閉じ込めが必要となるが、高い閉じ込めを得るためにフォトニック結晶を用いているレーザのことをフォトニック結晶レーザと呼んでいる。
※3活性層
 電子と正孔が誘導放出によりレーザ光を発生させる層。光通信に使われるレーザではInGaAsP(インジウム、ガリウム、ヒ素、リン)を材料として用いる。
※4フォトニック結晶構造の共振器
 屈折率が光の波長と同程度の長さで周期的に変調された構造のことを指し、通常ナノ加工技術でシリコンなどの誘電体を微細加工することによって作製される。フォトニック結晶は光絶縁体として機能するため、通常の物質では不可能な強い光閉じ込めが可能となる。また、共振器とは、光を空間的に閉じ込める機能を持つ素子。通常は反射鏡で囲んで構成する。共振器を小型化しようとすると通常の反射鏡は使えなくなるため小型化は一般に困難を伴う。
※5半導体レーザ
 世界初のレーザは50年前にメイマンがルビーを用いて実現している。半導体レーザはルビーの代わりに半導体の再結合発光を利用したレーザで、電流注入量の変化により出力光強度が変化するため、電気信号を光信号に変換する事ができる。
※6電流注入
 pin構造※11に電圧をかけ電流を流すことでレーザ発振に必要な電子と正孔を活性層に生成する方法
※7コンピュータコム
 コンピュータ内部の情報通信(コミュニケーション)のこと。具体的にはマイクロプロセッサ間、マイクロプロセッサとメモリ間、マイクロプロセッサ内の情報通信を指す。
※8LEAPレーザ
 Lambda-scale Embedded Active-region Photonic crystal (LEAP) laser
 光の波長程度の大きさの活性層をフォトニック結晶共振器の中に埋め込んだ構造を持つレーザのこと。
※9イオン注入
 不純物のイオンを電気的に加速して半導体に注入すること。
※10熱拡散
 不純物を加熱することにより半導体表面から内部に拡散させること。<
※11pin構造
 ダイオードの順バイアス状態において真性半導体の活性層(i層)で誘導放出を起こすために必要な構造。p型半導体とn型半導体が真性半導体層を挟んで接している構造。p型半導体では正の電荷を持つ正孔が多数キャリアであり、n型半導体では負の電荷を持つ電子が多数キャリアである。真性半導体層に不純物を導入することにより作製する。
※12シリコンCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)
 低消費電力性に優れた、大規模集積回路を構成する最も基本的なトランジスタ構造のこと。マイクロプロセッサはCMOSトランジスタと電気配線等により構成されている。
別紙・参考資料
図1 IT機器の電力消費量等について 
図2 CMOSの消費電力と本研究の背景 
図3 レーザ動作の検証 
図4 長波長帯半導体レーザにおける動作電流の変遷 
図5 技術のポイント(1) LEAPレーザの構造と特長 
図6 技術のポイント(2) LEAPレーザと従来の半導体レーザの構造の比較 
図7 今後の展開イメージ 

本件に関するお問い合わせ先

日本電信電話株式会社

先端技術総合研究所 広報担当
a-info@lab.ntt.co.jp
TEL 046-240-5157

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。

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