ページの先頭です。
コンテンツエリアはここからです。

NTT持株会社ニュースリリース

(報道発表資料)

2013年5月24日

従来の1/10の超低消費エネルギーでデータ伝送可能なレーザの開発に成功
〜マイクロプロセッサチップ内への光配線導入に大きく前進〜

 日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫、以下NTT)は、毎秒10ギガビット(100億ビット)※1の信号を、世界で最も小さな消費エネルギーで伝送可能な超小型半導体レーザ(以下、LEAPレーザ)※2の開発に成功しました。1ビットのデータ転送に必要なエネルギーは従来の半導体レーザの1/10以下の5.5 フェムトジュール※3です。
 この技術を利用して、現在は電気配線を用いているマイクロプロセッサ※4間やマイクロプロセッサ内のデータ転送を光配線に置き換えれば、サーバやルータなどのIT機器で大きな消費電力を使っているマイクロプロセッサの消費電力を4割程度削減できます。
 本成果は、英国時間5月26日PM6:00に英国科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン速報版で公開されます。
 なお、本成果の一部は、NEDO助成事業「CMOSプロセッサ上フォトニックネットワークチップの研究開発」によるものです。

1.研究の背景

 近年、FTTHなどのブロードバンドサービスやスマートフォンの爆発的普及に伴い、社会で扱う情報量は、2025年には200倍になると見込まれています。また、今後、クラウド技術の進展やスーパーコンピュータの登場により、コンピュータの計算速度とデータの処理量が飛躍的に高まるにつれて、消費電力も大きく膨らみ、2025年には情報処理を担うサーバ・ルータなどのIT機器の総消費電力量は2025年には5倍になると試算されています(図1 )。
 NTTの研究所では、これらIT機器の消費電力と発熱の問題を抜本的に解決するため、IT機器を構成する部材の中で最も電力消費が大きいマイクロプロセッサの消費電力の低減するために、データ通信に光配線技術を適用する研究を続けてきました(図2 )。
 これまでに、LEAPレーザ(図3 )を開発し、世界初の電流注入※5による室温環境(25℃〜30℃)での連続的な動作(しきい値電流※6:390マイクロアンペア)に成功しましたが、実際に光技術をマイクロプロセッサ間のデータ転送等に適用するには、しきい値電流の削減と超低消費エネルギー動作の実現、及びIT機器内部の温度環境下(80℃)での動作が重要な課題となっていました。

2.研究の成果

 NTT研究所では、しきい値電流の削減と超低消費エネルギー動作の実現のためにはレーザの漏れ電流※7の削減が重要であることを明らかにし、レーザと基板の間に電流ブロック層とフォトニック結晶の内部に電流ブロック用の溝を形成したLEAPレーザを作製しました。(図4 )これにより、半導体レーザとしては、世界で最も小さな4.8マイクロアンペアのしきい値電流を実現しました。さらに、レーザ活性層※8にアルミニウムを含む活性層を用いることで最高95℃までレーザ発振することを確認しました。(図5 
 さらに、毎秒10ギガビットの信号でレーザを変調した場合に、これまで面発光レーザで得られていた消費エネルギーの1/10以下の5.5フェムトジュールで1ビットのデータ伝送が可能なことを確認しました。このことは、世界で初めてコンピュータコム※9に適用可能な半導体レーザが実現できたことを意味します。(図6 

3. 技術のポイント(図7 

(1)活性層以外に流れる漏れ電流の削減

 LEAPレーザはこれまで開発されてきた半導体レーザとは異なり基板と平行方向にpin接合※10を作製します。そのため様々な経路で電流が流れて漏れ電流が増加してしまうことから、今回、活性層に限定して電流が流れるように以下のように素子設計を工夫し、漏れ電流を大幅に削減しました。

  1. <1>フォトニック結晶下にバンドギャップの大きなInAlAs電流ブロック層を設け、基板を経由し た漏れ電流を削減
  2. <2>共振器の光特性を損なわないように工夫して活性層の両側に溝を形成し、フォトニック結晶面内の漏れ電流を削減

(2)InGaAlAs活性層※11の適用

 マイクロプロセッサの温度は80℃以上に達することが見込まれ、高温でのレーザ発振が必須です。従来用いていたInGaAsP材料からInGaAlAs材料を活性層に使用して温度特性・変調特性を改善しました。LEAPレーザのように波長程度の大きさの活性層をInGaAlAs材料で作製した場合は、アルミニウムの酸化の問題があり埋め込みは困難と思われてきましたが、作製法の工夫により95℃までの発振と世界最高の変調効率※12を得ることに成功しました。

4. 今後の展開(図8 

 今回の成果は、これまで基礎研究にとどまっていたフォトニック結晶レーザがマイクロプロセッサチップ内への光配線用光源として実用化できる事を示したものです。今後は、レーザ出力の増加や高い信頼性の確保などのマイクロプロセッサ間のデータ転送の実用化に向けた研究開発に取り組み、2016年を目途に本レーザの商用化を目指してまいります。これによりマイクロプロセッサ間の大容量データ通信を低消費電力に実現できます。
 さらに、2022年頃にはマイクロプロセッサ内へ光配線技術を導入しマイクロプロセッサの消費電力を4割程度削減します。このためには、大規模な光集積回路を作製する技術の確立などが重要となります。

用語解説

※1毎秒10ギガビットのデータ転送
 ギガは109=1,000,000,000の事。従って1秒間に1010(100億)ビットのデータを送ることになる。
※2LEAPレーザ
Lambda-scale Embedded Active-region Photonic crystal (LEAP) laser
 光の波長程度の大きさの活性層をフォトニック結晶構造の共振器※13の中に埋め込んだ構造を持つレーザで以下のような特長を持つ。
  • 埋込活性層構造とフォトニック結晶共振器を融合することにより、きわめて微小な領域に光とキャリアを同時に閉じ込めることができるため高効率化が可能。
  • 埋込InP層が活性層より一桁以上熱伝導率が大きな為、活性層で発生した熱を効率的に放熱可能。
※3フェムトジュール
 ジュールはエネルギーの単位。1ワットの電力を1秒間使用すると1ジュールのエネルギーを消費したことになる。フェムトジュールは10-15ジュールの事。現在のテレコムでは1ビット当たり数ピコジュール、データコムでは数100フェムトジュールで動作するレーザを用いている。プロセッサ間・内で用いる光配線のためには10フェムトジュール程度で動作する半導体レーザの開発が必要。
※4マイクロプロセッサ
 コンピュータにおける演算処理を行う半導体集積チップの事。シリコンCMOS※14を用いて作製される。
※5電流注入
 pin接合に電圧をかけ電流を流すことでレーザ発振に必要な電子と正孔を活性層に生成する方法。
※6しきい値電流
 誘導放出によるレーザ発振が始まる最小の電流値。
※7レーザの漏れ電流
 pin接合に電圧を加えた場合にレーザの活性層を通過せずに流れる電流。
※8活性層
 電子と正孔が誘導放出によりレーザ光を発生させる層。光通信に使われるレーザでは一般にInGaAsP(インジウム、ガリウム、ヒ素、リン)を材料として用いる。
※9コンピュータコム
 コンピュータ内部の情報通信(コミュニケーション)のこと。具体的にはマイクロプロセッサ間、マイクロプロセッサとメモリ間、マイクロプロセッサ内の情報通信を指す。
※10pin接合
 ダイオードの順バイアス状態において真性半導体の活性層(i層)で誘導放出を起こすために必要な構造。p型半導体とn型半導体が真性半導体層を挟んで接している構造。p型半導体では正の電荷を持つ正孔が多数キャリアであり、n型半導体では負の電荷を持つ電子が多数キャリアである。真性半導体層に不純物を導入することにより作製する。
※11InGaAlAs活性層
 InGaAlAs(インジウム、ガリウム、アルミニウム、ヒ素)から構成される。InGaAsPから構成される量子井戸構造と比較すると井戸層と障壁層のエネルギー差が大きいため、高温になってもゲインが大きいことが特長である。
※12変調効率
 レーザではpin接合を流れる電流が大きいほど高速な変調が得られる。変調効率は、電流の増加分に対する変調速度の増加分を比率で示す。大きなほど小さな電流でレーザが高速に変調できることになる。
※13フォトニック結晶構造の共振器
 屈折率が光の波長と同程度の長さで周期的に変調された構造のことを指し、通常ナノ加工技術でシリコンなどの半導体を微細加工することによって作製される。フォトニック結晶は光絶縁体として機能するため、通常の物質では不可能な強い光閉じ込めが可能となる。また、共振器とは、光を空間的に閉じ込める機能を持つ素子。通常は反射鏡で囲んで構成する。共振器を小型化しようとすると通常の反射鏡は使えなくなるため小型化は一般に困難を伴う。
※14シリコンCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)
 低消費電力性に優れた、大規模集積回路を構成する最も基本的なトランジスタ構造のこと。マイクロプロセッサはCMOSトランジスタと電気配線等により構成されている。
別紙・参考資料
図1 IT機器の消費電力の状況等 
図2 CMOSの消費電力削減に向けて 
図3 LEAPレーザの構造と特徴 
図4-1 今回作製したレーザ、図4-2 レーザ発振の様子 
図5 研究の成果(実験結果) 
図6 研究の成果(実験結果) 
図7-1 技術のポイント<1> 活性層以外に流れる漏れ電流の削減、図7-2 技術のポイント<2> InGaAlAs活性層の適用 
図8 今後の展開 

本件に関するお問い合わせ先

日本電信電話株式会社

先端技術総合研究所 広報担当
a-info@lab.ntt.co.jp
TEL 046-240-5157

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。

NTT持株会社ニュースリリース インデックスへ

サブコンテンツエリアはここからです。
  • NTT持株会社ニュースリリース内検索

 年   月 〜
 年   月 

  • NTT持株会社ニュースリリース
  • 最新ニュースリリース
  • バックナンバー
  • English is Here
  • NTT広報室 on twitter NTTグループの旬な情報をチェック!
  • Facebook NTTグループ 公式フェイスブックページ(別ウインドウが開きます)
フッタエリアはここからです。