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音声品質評価法

2.主観評価と客観評価

音声や映像といった視聴覚メディアを用いた通信サービスにおいて、品質指標として用いられるのが、ユーザ体感品質、すなわち主観品質です。主観品質を評価する基本的な方法は主観品質評価技術です。主観品質評価技術の最大の特徴は、お客様の感じる品質を視聴覚心理実験によって直接測定するという点です。そのため、主観評価はサービスの主観品質を評価するうえで最も信頼できる方法であるといえます。音声の品質を評価する主観品質評価技術として最も広く用いられているのはオピニオン評価法と呼ばれる技術です。この方法では、評価者に音声品質を「非常に良い」〜「非常に悪い」の5段階で評価してもらい、全評価者の評点を平均した値をMOS (Mean Opinion Score)値として定量化します。このMOS値が音声品質を表す基本的な尺度として用いられています。この他にも多くの主観品質評価技術が存在しますが、その詳細については3章で説明します。

適切な主観品質評価を実施するためには、以下の点に注意する必要があります。ここでは音声の受聴品質を評価する場合を例にとって説明しています。

1)多数の評価者が必要
同じ音声を受聴した場合でも、評価者によって感じる品質は様々です。このような評価者の個人差による評価値のバラつきをなくすために、1つの音声について多くの評価者から評点を取得する必要があります。国際的な品質評価試験では通常24名以上の評価者を必要とします。
2)専用の設備が必要
評価値の普遍性を確保するためには、評価試験の条件を適切にコントロールする必要があります。例えば、周囲騒音条件や室内反響条件を一定に保つ必要があり、このためには適切に設計された専用の評価ブース(図参照)が必要となります。

(図2.1)音声品質評価ブースの例

(図2.1)音声品質評価ブースの例
3)異なる実験枠で得られた評価値の比較には注意が必要。
主観評価により得られる値は、試験全体の枠組みにも影響を受けます。同じ実験で評価する他の音声の品質が全体的に悪ければ、ある音声Aに対する評価値は高くなります。逆に、他音声の品質が全体的に良ければ、音声Aに対する評価値は低くなります。これは、絶対判断を求める評価法で顕著になります。そのため、音声品質評価では各実験にITU-T勧告P.810(MNRU: Modulated Noise. Reference Unit)に規定されているレファレンス音声を用いることで実験全体の品質的な枠組みを等質にすることが重要です。
主観品質評価技術に対して、主観評価により得られる値と同等の値を、音声や映像の物理的特徴から推定する方法を客観品質評価技術と呼びます。客観品質評価技術は以下のような利点を持つことから、世界中で研究されてきました。
  • 客観評価法は評価者や専用の評価環境設備を必要としないため、時間・コストを大幅に削減することができます。
  • 客観評価法は、同じ入力が与えられた場合には必ず同じ評価値を出力します。同じ客観評価法を用いれば、異なる場所で評価した2つ評価対象系の評価値を比較することが可能です。

客観評価は主観評価により得られる値を推定する技術ですので、主観評価により得られる値にどれだけ近い値を推定できるか、つまりその推定精度の高さが重要になります。評価の目的によっては、その推定時間や演算量も重要となります。

客観評価は、評価対象、評価手順、利用する入力情報などの違いにより複数のカテゴリに分類されます。カテゴリの種類および各カテゴリの詳細については4章で説明します。