News Letter
脳内における音源位置の表現
Representation of sound source location in the brain
■脳の中の多感覚共通の空間表現
脳の中で音の位置がどのように符号化されていくかということは、これまで、“メンフクロウ”という暗闇で音だけを頼りに獲物を捉える特殊な鳥類で詳しく調べられ(教科書的データ)、哺乳類でも同じであると考えられてきました。しかし、我々の研究の結果、哺乳類では異なるということが分かりました。この結果は、ヒトを含む哺乳類の空間認知メカニズムを考えていく上で重要な知見であると考えています。
脳内で、空間は最終的に「地図形式」で符号化されます。「地図形式」とは、例えば、脳の中で前方にあるニューロンは、音や光が前に来たときに強く反応し、後方のニューロンは、後ろに音や光が来たときに強く反応するといった表現形式を意味します(図1)。この地図表現は、中脳において聴覚、視覚、体性感覚で共通に見られ、多感覚の空間情報の統合に寄与していると考えられています。聴覚の場合、末梢神経の空間表現は地図形式ではないため、脳のどこかで地図を作らなければなりません。メンフクロウは、「下丘外側核」という脳の部位で地図を完成させます。しかし、我々の神経生理実験の結果、哺乳類(スナネズミ)では、下丘外側核より一段後の、「上丘」という脳の部位で、聴覚の空間地図が最初に形成されるということが分かりました。
図1 脳内の空間地図
■空間情報の伝達方式の変換
聴覚の空間地図の形成と同時に、個々のニューロンレベルでも、聴覚固有の空間表現から視覚、体性感覚に合わせた空間表現へと変化していくこが、情報理論を使った定量化により明らかになりました。視覚、体性感覚では、ニューロンの反応時刻はあいまいで、「反応数(量)」で音源位置が表現されています。一方、もともと聴覚では、ニューロンが反応するまでの潜時などの時間情報(「反応時刻」)の中にも音源位置の情報が表現されています(図2)。 このような脳内の空間情報処理メカニズムの解明を通して、より効果的な音空間呈示デバイスの開発につながると考えています。図2 ニューロンの空間表現形式
研究部門 :コミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部
参考資料 :Maki, K. & Furukawa, S., Assoc. Res. Otolaryngol. Abs., vol. 30, p. 143 (2007).
Furukawa, S. & Maki, K., Assoc. Res. Otolaryngol. Abs., vol. 31, p. 294 (2008)
お問い合わせ先:先端技術総合研究所 企画部 情報戦略担当
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2009(平成21)年2月26日 NTT先端技術総合研究所