News Letter
人工細胞膜の形成制御技術に新手法
人工細胞膜が自然に組み上がる!
生命の最小単位ともいえる細胞は、細胞膜を通じて外界との情報伝達や物質輸送を行なっています。細胞膜は脂質分子とよばれる分子が集合して形成された複雑な構造をもっています。私たちは固体と液体の境界面に細胞膜構造が自発的に逐次形成する現象(自発展開)を利用して、固体基板上に人工細胞膜を作製しています。その様子を図1に示します。人工細胞膜が自然に組み上がる現象を自己組織化といいます。
このような人工細胞膜の自発展開は、水に濡れやすい親水性の固体表面だけに生じます。そこで、あらかじめ石英基板に金でパターンを作製すると、自発展開を親水性の石英表面だけに進行させることができます。これによってパターン通りに人工細胞膜を形成することを可能としました。
図1 自発展開による人工細胞膜形成の模式図
膜形成を止める、膜の位置を決める
お問い合わせ先:先端技術総合研究所 企画部 情報戦略担当
人工細胞膜の逐次形成は、どれくらいの狭い領域まで生じるでしょうか?われわれは10ナノメートル(ナノメートルは百万分の1ミリメートル)の間隙でも、それを通り抜けて人工細胞膜が形成し続けることを観測しています。またこの間隙を電極として用いると、印加した電圧のオン・オフによって、自発展開を止めたり再開させたりする「分子ゲート」操作が可能であることを世界で初めて示しました。
成分の異なる人工細胞膜の配列構造を作製することも可能です。設計したパターンと、これを用いて作製した5マイクロメートル(マイクロメートルは千分の1ミリメートル)の間隔をおいて配列した幅10マイクロメートルの人工細胞膜を図2に示します。図2の長方形状の部分に原料を塗布し、パターン通りに人工細胞膜を形成させます。本手法によれば、従来技術に比べ人工細胞膜の配列密度を100倍以上向上できます。人工細胞膜は、生体分子の機能を維持したまま基板表面に固定化するための最適な環境です。本手法は、多数の生体分子の機能を短時間で評価するバイオセンシング素子の実現につながり、創薬や病理診断、医療ICT技術への貢献が期待できます。
図2 左:設計したパターン。右:作製した人工細胞膜配列
赤、緑、青に光る部分が、成分の異なる人工細胞膜である。
研究部門 :物性科学基礎研究所 機能物質科学研究部
参考資料 :Y. Kashimura et al., J. Am. Chem. Soc. 133, 6118 (2011).
K. Furukawa, et al., Langmuir 27, 7341 (2011).
http://www.ntt.co.jp/sclab/contact/
2011(平成23)年9月30日 NTT先端技術総合研究所