将来のデジタル社会を支えるネットワークの変革─ネットワーク基盤編─

双方向通信型アプリケーションの体感を向上させる最大ネットワーク遅延保証技術

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双方向通信型アプリケーション・システムでは、ネットワーク遅延を一定量以下に抑えることにより操作体感が向上します。ただし、帯域保証サービスで利用されている従来の帯域ベースシェーピング方式を利用すると、バーストトラフィックの平準化により大きなネットワーク遅延が発生し操作体感が劣化します。そこで、本稿では最大ネットワーク遅延を保証するための技術として、要求遅延量を考慮した新たなシェーピング方式を提案します。

福井 達也(ふくい たつや)/ 坂上 裕希(さかうえ ゆうき)/ 南 勝也(みなみ かつや)

NTTアクセスサービスシステム研究所

背 景

近年、双方向通信型アプリケーション・システムが広まりつつあります。例えば、遠隔で重機を操作し工事を行うシステムです。このようなシステムでは、操作信号を遠隔地の重機に対してネットワークを介して送信し、その操作信号に従って重機が動作します。操作者は重機に設置されたカメラ映像を遠隔地から受信し確認することにより、操作どおりに重機が動作したことを認知します。操作者が操作を実施してからカメラ映像を確認するまでの時間が、操作体感に強く影響を与えることとなります。遠隔操作の場合、ネットワークの通信遅延が体感を劣化させる大きな要因です。このネットワーク遅延を小さくすれば操作体感は向上しますが、許容できる遅延要件が存在します。カメラ映像の1フレーム時間内で遅延が発生した場合ではカメラ映像表示に影響は与えません。また、2フレーム時間内の遅延が発生した場合でも、筆者の経験上、人が認知できずに操作体感が劣化しない場合も存在します。このように、双方向通信型アプリケーションといえども必ずしも低遅延でなければならないということはなく、一定の遅延許容幅が存在します。その他の例としては、VR(Virtual Reality)、eSports、リモートデスクトップ等が存在します。

ネットワーク遅延保証技術

そこで本稿では、必ずしも低遅延ではなく要求された遅延量以下でネットワーク内をトラフィック転送する技術を提案します。従来は、前述のような通信をベストエフォートで送信した場合、他のトラフィックの影響を受け、許容以上のネットワーク遅延が発生することにより、操作体感が大きく劣化します。また、他のトラフィックの影響を受けないよう優先トラフィックとして扱う方法が考えられますが、必要以上に低遅延で転送することに加え、前述のような映像トラフィックはバースト転送が多いため、ネットワークへの負荷が大きいことが課題となります。これを解決するために、帯域保証サービスで利用されている従来の帯域ベースのシェーピング方式を適用すると、映像の平均レートよりも大きめの帯域設定であっても大きな遅延が発生し、やはり操作体感が大きく劣化してしまいます。なぜなら、映像トラフィックのバースト転送により瞬間的には設定帯域を超えたトラフィックが流れるため、このトラフィックを一定帯域にシェーピングするとネットワーク装置のバッファに滞留する時間が増加することにより、大きな遅延が発生するためです。
そこで本技術では、映像のようなバースト転送が存在した場合においても一定遅延内での転送を保証し、かつ、ネットワークへの負荷を最大限抑制します()。これにより、競争力のあるネットワーク基盤の実現に貢献します。
新たなシェーピング方式ではネットワークにトラフィックが流入する際に、到着したトラフィック量を常時計測し、あらかじめ設定された要求遅延量と最低限発生するネットワーク内のエンド・ツー・エンド経路遅延量を基にネットワーク内に送出するトラフィック量をリアルタイムに算出します。中継ネットワーク内ではベストエフォートトラフィックよりも優先送信することにより、一定遅延内での送信を可能とします。また、算出したトラフィック量に従い最大限トラフィックをシェーピングすることによりネットワーク負荷を低減することが可能です。本機能を試作し双方向通信型アプリケーションを利用して評価したところ、操作体感向上効果が得られることを示すことができました。

ネットワーク遅延保証技術

図 ネットワーク遅延保証技術

今後の展開

本技術の適用先は、映像配信サービスのような片方向で通信するアプリケーションではなく、操作に伴い遠隔で処理が実施されるような双方向通信型アプリケーションです。今後は本技術の適用により、操作体感が向上するアプリケーション・システムを広く調査、実証実験を進め、ネットワークサービス化をめざします。

福井達也/南勝也/坂上裕希
(左から)福井 達也/南 勝也/坂上 裕希

ネットワーク遅延保証技術と双方向通信側アプリケーションが連携することにより臨場感のある新たなアプリケーション・ユーザ体感がつくり出されるのでは!?を現実にできるよう、本技術の研究活動を推進していきます。

◆問い合わせ先
 NTTアクセスサービスシステム研究所
  アクセスサービスシステムプロジェクト
  アクセスサービス推進グループ
  TEL 0422-59-4853
  FAX 0422-59-5651
  E-mail asap-info-mlhco.ntt.co.jp

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