グローバルスタンダード最前線

ONF(Open Networking Foundation)を中心としたSDN/NFVオープンコミュニティ動向

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柏 大(かしわ だい)/ 沈 文裕(ちん ぶんゆう)

NTTコミュニケーションズ

2011年にONF(Open Networking Foundation)が設立されて以降、SDN(Software Defined Networking)/NFV(Network Functions Virtualization)技術に関しては、数多くのオープンコミュニティが立ち上がり、活発な活動が続いています。ここでは、SDN/NFV技術領域のオープンコミュニティについて俯瞰した後、ONFの最新活動動向、およびNTTグループにおける活動内容について説明します。また、NTTグループでのもう1つの活動例として、MEF(Metro Ethernet Forum)コミュニティでの活動内容について説明します。

SDN/NFV関連オープンコミュニティ概観

SDN(Software Defined Networking)/NFV(Network Functions Virtualization)技術の適応領域の拡大に伴い、さまざまなオープンソース開発プロジェクトや標準化プロジェクトが立ち上がり、その成果物は通信事業者、クラウド事業者、企業ユーザのサービス・システムの構築に利用され始めています。それらの歴史を振り返ると、OpenDaylight、ONOS(Open Network Operating System)などのSDNコントローラの開発から始まり、その後、Open vSwitchや、DPDK(Data Plane Development Kit)などの高速データプレーン、さらにOPNFV(Open Platform for NFV)などのNFV基盤の開発等に広がっています。また、これらの開発活動は、ETSI(European Telecommunications Standards Institute)や、TMF(TeleManagement Forum)などの標準化活動と連携され、標準化から実装、実装から標準化の循環が回り始めています。さらに、ONAP(Open Networking Automation Platform)を代表としたオーケストレーション基盤や、Kubernetesを代表としたコンテナ管理基盤にも大きく注目が集まっています。図1は、LF(Linux Foundation)がまとめた、ネットワーキングに関する主要プロジェクトの位置付けを示したものです(1)。デバイス、データ転送、オペレーティングシステムからなるインフラストラクチャレイヤ、ネットワーク制御、クラウド基盤、オーケストレーション機構からなるソフトウェアレイヤ、データ分析、アプリケーションからなるサービスレイヤ、それぞれの領域にプロジェクトが存在します。最近では、5G、IoT(Internet of Things)/AI(人工知能)技術の普及に伴い、エッジコンピューティングの応用に注目が集まっており、LF配下でもエッジを中心とするプロジェクトがさかんになっています。
2019年1月には、プロジェクト間のコラボレーションを促進するため、エッジコンピューティングで利用するソフトウェア開発プロジェクトを集めた新しい組織「LF Edge」が発足し、この傘下に、「Akraino Edge Stack」「EdgeX Foundry」「Home Edge Project」「Open Glossary of Edge Computing Project」「EVE(Edge Virtualization Engine)」の5つのプロジェクトが活動しています(2)

図1 ネットワーキングに関するオープンコミュニティ活動の位置付け

図1 ネットワーキングに関するオープンコミュニティ活動の位置付け

ONFの最新活動内容

標準化を中心に活動していたONF(Open Networking Foundation)は、オープンソース開発を中心に活動していたON.Lab(Open Networking Lab)と2016年10月 に合併しました。以来、オープンソース開発活動を基軸に、開発過程で得られた設計情報を標準ドキュメントとして規定していく活動(3)を併せて進めています。2018年3月には「ONF Strategic Plan」を発表し、パートナー参画しているオペレータ(AT&T、ドイツテレコム、NTTグループ等)が共通の要件を定義し、それらを実現するための「RD: Reference Design」(リファレンスデザイン)と「EP: Exemplar Platform」(エグゼンプラープラットフォーム)の作成を、ベンダやSIer等を含めたONF参画メンバとともに進めることを宣言しています。RDは、特定のユースケースを実現するために必要なソフトウェア部品の定義、それらの機能要件、部品間のインタフェース規定等をまとめたもので、ONF参加メンバにドキュメントとして公開されています。EPは、RDを実装したオープンソースソフトウェアの集合体であり、商用プロダクトを開発する際にも活用されるコアソフトウェアです。ONFは、これらのRD・EPを中心として設計・開発・導入・保守までのサイクルを回すことにより、オープン技術〔オープンソース、ホワイトボックス、Disaggregation:(部品化)〕を活用したシステムをオペレータに提供・導入することをめざして活動しています(4)(図2)。
2019年6月現在で扱っているユースケースは、SEBA(SDN Enabled Broadband Access)、 Trellis、ODTN(Open Disaggregated Transport Networks)、NG-SDN(Next Generation SDN)、COMAC(Converged Multi-Access and Core)の5つです。
(1) SEBA
OLT(Optical Line Termination)、BNG(Broadband Network Gateway)等の機能を仮想化して、PON(Passive Optical Network)、G.Fast等のアクセスネットワーク技術をオープンソースの組合せで実現するとともに、バックホールとの高速・シームレス接続を実現する取り組みです。AT&T、ドイツテレコム等が先導し、ONFで現在もっともリソースをかけているプロジェクトです。
(2) Trellis
NFV向けのLeaf-spineファブリックをオープン技術で実現する取り組みです。Routing(BGP、Segment Routing)、Q-in-Q制御、Dual-homing機能等を実装します。
(3) ODTN
伝送ネットワーク装置を部品化したうえで、その部品間やコントローラ間のやり取りをオープンAPI(Application Programming Interface)で実現する取り組みです。次節で詳述します。
(4) NG-SDN
P4言語を使ったホワイトボックススイッチ、ネットワークOS、コントローラにより、データプレーンをプログラマブルにする取り組みです。
(5) COMAC
モバイル・有線のアクセスネットワークをシームレスに終端・管理し、ネットワークスライスを提供するための取り組みです。データプレーンにはP4言語によるプログラマビリティを提供します。顧客管理、MME(Mobility Management Entity)、HSS(Home Subscriber Server)等の機能を共通プラットフォームとして提供することをめざします。

図2 ONFのStrategic Plan

図2 ONFのStrategic Plan

NTTグループでのオープンコミュニティ連携活動動向

ONF連携活動動向

NTTコミュニケーションズは、2011年のONF設立時より参画し、パートナー(ボードメンバを出して活動の意思決定にかかわる最高レベル)として精力的に活動しています。2017年からはNTTグループ全体としてパートナーとなり、活動を拡大しています。NTTコミュニケーションズは、トランスポートネットワークのオープン化をめざす技術開発の一環としてODTNプロジェクトを立ち上げ活動をリードしています。
NTT東日本とNTTネットワークサービスシステム研究所はデータプレーンのプログラマブル化実現をめざ、NG-SDNプロジェクトに参画し、P4を中心に技術検討を推進しています。NTT西日本はNG-SDNプロジェクトに参画しています。NTTアクセスサービスシステム研究所は、SEBAプロジェクトに参画し、RD策定やEPの一部実装でのコントリビューションを実施しています。

ODTN

トランスポートネットワークはトランスポンダやROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)等の光伝送システムで構成されますが、これらのネットワーク装置、およびEMS(Element Management System)/NMS(Network Management System)等の制御ソフトウェアは、ベンダ独自の実装で部品化されない垂直統合型のものが多く、相互接続性やオープン性は犠牲しになってきました。そのため、ベンダロックイン傾向が強まるとともに、更改期間が長くなり、先端的な技術・製品の導入に時間を要する課題がありました。
これらの課題を解決するため、機能を適切に分割する「Disaggregation」という考え方が登場し、いくつかの動きが活発化してきています。OLS(Open Line System)(5)は、従来のトランスポートシステムでは装置内に機能統合されていたTransponder/MUX/DEMUX/AMPの中からTransponderを分離し、マルチベンダのTransponder装置を1システム内に存在可能にしています。OpenConfig(6)は、オープンなオプティカルトランスポートのデータモデルやAPIを定義し、これらに準拠した装置の統合制御・管理やTelemetryによる監視・データ収集を可能にしています。
ODTNは、これらの活動と連携し、エンド・ツー・エンドで、コントローラも含めて、オープン技術やオープンソースソフトウェアの集合体でトランスポートネットワークの革新をめざす技術開発プロジェクトです(7)。各部品で活用するオープン技術の対応を図3に示します。図3に示す装置・API規定・コントローラ等をインテグレーションしたうえで技術検証を実施して技術実現性を示すとともに、詳細設計値や評価結果から得られた課題・要件等を、関連活動にフィードバックしていきます。現在、フェーズ1と呼ばれる、Transponder+OLSでのポイント・ツー・ポイント接続ユースケースの初期技術検証を終え、今後は、品質向上やユースケース拡大をめざしています。

MEF連携活動動向

MEF(Metro Ethernet Forum)は2001年に設立された非営利団体で、現在220社が加盟しています。これまではキャリアイーサネットサービスを提供するための機器の仕様を策定していましたが、SDNやNFVの要素を加え、より俊敏性に優れたネットワークを実現するためのコンセプトモデルとしてLSO(Life Service Orchestration)を発表しました。MEFは、このLSOの機能要件と、それをサポートするAPIを定義し、これらはエンド・ツー・エンドでの複数事業者ネットワーク間オーケストレーションを支援します。NTTコミュニケーションズでは、NTT研究所とともに、これらのAPIを活用してモバイル・固定網スライスの相互接続・連携を実現する取り組みを開始しました。また、これらのAPIを活用したSD-WAN相互接続に関する取り組みも開始しています。
急成長しているSD-WANの市場において、現在では40社以上のソリューションが乱立しており、複数ソリューションを扱う事業者も増えてきていますが、デリバリと運用が大きな問題となってきています。例えば、CPE(Customer-Premises Equipment)がソリューションによって異なるため、それぞれのセールスとデリバリ体制を構築しなければなりません。また、新しいソリューションの導入に伴い、OSS(Operation Support System)/BSS(Business Support System)等の周辺システムの追加開発が大きく発生するという課題も発生しています。MEFでは、SD-WANのデータモデル、各種インタフェースなどを標準化しており、これらを活用することで課題が改善する可能性があります。NTTコミュニケーションズが開始したプロジェクトでは「ホワイトボックスに基づいたマルチベンダSD-WANサービス」と称して、ホワイトボックス上に複数SD-WANソリューションの搭載を実現するUniversal CPEプラットフォームと、同一ポータルを用いて複数SD-WANの統一制御を可能とするMEF SD-WAN Prestoインタフェース、MEF 70標準に準拠したSD-WANサービスの評価・検証を実施します(図4)。MEF19イベントでPoC(Proof of Concept)を実施予定です(8)

図3 ODTNの技術構成

図3 ODTNの技術構成

図4 「ホワイトボックスに基づいたマルチベンダSD-WANサービス」PoCの構成

図4 「ホワイトボックスに基づいたマルチベンダSD-WANサービス」PoCの構成

今後の展開

ここでは、SDN/NFV技術領域のオープンコミュニティ動向と、ONFの最新活動動向、およびNTTグループにおける活動内容等について説明しました。コミュニティ活動によりソフトウェア部品をオープンイノベーションで開発する潮流は今後ますます強まり、コミュニティ活動もさらに活性化していくものと考えられます。最近では、取り組み領域の重複も多くみられるようになり、今後は、適切な分担に向けたコミュニティ間の連携・統合の動きも活発になると予想されます。

■参考文献
  • (1) https://techblog.comsoc.org/2018/03/26/ocp-linux-foundation-partnership-accelerates-megatrend-of-open-software-running-on-open-hardware/
  • (2) https://www.lfedge.org/wp-content/uploads/2019/06/LF-Edge-web-june.pdf
  • (3) https://www.opennetworking.org/software-defined-standards/overview/
  • (4) https://www.opennetworking.org/reference-designs/
  • (5) https://tnc18.geant.org/getfile/4520
  • (6) http://www.openconfig.net/
  • (7) https://www.opennetworking.org/odtn/
  • (8) https://www.mef.net/mef-3-0-sd-wan

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