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超大容量1テラビット/秒光信号の長距離伝送に成功

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NTTとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、商用環境において1テラビット/秒光信号の長距離伝送の実証実験に成功しました。
本実験では、NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブルを用い、NTT独自の高品位な多値光変調信号を送受信するために光送受信機内部の不完全性を補償する高精度校正技術、最先端のデジタルコヒーレント技術を実装したデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機、および伝送路設計技術によって、1テラビット/秒光信号による波長多重伝送を実施し、世界最長となる1122 kmの長距離伝送試験に成功しました。
本成果は、現在の実用システム(1チャネル当り100ギガビット/秒)の10倍の伝送速度、および8割以上のビット当り消費電力低減を見込み、5Gサービスの普及や、将来のIOWN構想実現につながる大容量通信ネットワーク技術として期待されています。

背 景

近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に加え、5Gサービスなど新しい情報通信サービスの普及に伴い、トラフィックは増大し続けることが予想されます。このような状況に対応するためには、基幹系の光通信ネットワークにおいても、さらなる大容量化を経済的に実現することが求められています。そこで、NTTとNTT Comは、既設の光伝送システムの経済的な容量拡張に向けた、世界最高水準の技術の開発を進めてきました。
光信号当りの伝送容量の拡大は、光伝送システムの経済性の観点から重要であり、信号のシンボルレートや1シンボル当りの変調多値度を上げることが必要です。しかしながら、光フロントエンド回路部の信号経路長や信号経路による損失ばらつきなどの不完全性のため、光信号を高速かつ長距離の伝送が可能な品質の光多値信号を生成することは困難でした。さらに、高多値信号の長距離伝送には、高い光信号対雑音比が求められ、かつ非線形光学効果による信号の劣化を抑える必要がありました。

実証実験の概要

本実験にあたり、NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブルと、NTTが新たに開発した光送受信機を用いて、1テラビット/秒光信号による波長多重信号の1122 km伝送環境を構築しました()。
NTT Comは、ITU-T G.654.Eに準拠したコア拡大低損失光ファイバケーブルを新たに商用環境に敷設しています。このコア拡大低損失光ファイバケーブルを用いて光伝送路を構築することにより、光ファイバを通過する光の減衰量を従来のファイバよりも低減して、高い光信号対雑音比を達成することができます。さらに光ファイバのコア径の拡大により、光ファイバ伝送中の非線形光学効果を低減することにより、光信号の波形の劣化を抑えることが可能となります。
本実験では、1テラビット/秒光信号生成のため、最先端のデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機によるデジタルコヒーレント技術を用いて、光の偏波、位相、および振幅に情報を乗せることで情報量の増大を実現する偏波多重32QAM変調信号(1波長当り500ギガビット/秒)と、2波のサブキャリア多重を利用しています。これにより、現在の実用システムの1チャネル当り100ギガビット/秒の10倍となる1テラビット/秒に伝送速度を高速化することが可能となりました。1波長当りの伝送容量を拡大させることにより、ビット当りの消費電力も既存装置と比較して、8割以上の削減を見込むことが可能となります。
加えて、NTT独自の技術を用いて、光送受信機内部の不完全性(信号経路長や信号経路による損失ばらつき等)を高精度に校正することにより、受信信号を理想信号に近づけることが可能となり、高品質な信号の送受信が可能となりました。これにより、高い信号品質が要求され、技術的難易度が非常に高い32QAM多値光変調信号において、世界最長となる1122 kmの長距離伝送の実証に成功しました。なお、本実験の一部は、総務省の委託研究「巨大データ流通を支える次世代光ネットワーク技術の研究開発」および「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開により得られたデジタルコヒーレント光伝送技術を利用しています。

伝送実験の構成

図 伝送実験の構成

今後の展開

IOWNの実現に向けて、End-Endでのフォトニクス技術をベースにした大容量、低遅延、かつ柔軟性、消費電力に優れた革新的なネットワークをめざして、最先端の1テラビット/秒級の光伝送技術をさらに拡張発展していきます。その成果を活かした大容量光伝送システムと高性能な光ファイバ伝送路を含めた経済的かつ大容量なネットワークの実現を推進します。併せて、国内外の機関とも連携して、成果のグローバル展開をめざしていきます。

◆問い合わせ先
 NTT先端技術総合研究所
  広報担当
  TEL 046-240-5157
  E-mail science_coretech-pr-mlhco.ntt.co.jp
  URL https://www.ntt.co.jp/news2019/1906/190619a.html

パートナー紹介

NTTコミュニケーションズがめざすインフラネットワークへの大きな1歩

増田 陽

NTTコミュニケーションズ
カスタマサービス部 イノベーション部門

増田 陽

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)では、お客さまに寄り添い、信頼されるパートナーとして、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する「DX Enabler」をめざすことを事業戦略として掲げています。
その取り組みの1つとして、「データ利活用の基盤となるインフラサービス群の提供」があり、NTT Comが保有するネットワークをこれまで以上に安心・安全かつ大容量なインフラに進化させることをめざしています。
現在、商用で導入している光伝送装置は、1チャネル当り100 Gbit/sでの提供が中心ですが、伝送距離を保ちつつ、さらに伝送速度を向上するためには、雑音の影響や光ファイバ中で発生する光信号の歪など、解決しなければならない課題がいくつもありました。
それに対し、今回の実証実験では、NTT研究所の最先端のデバイス・信号処理技術とNTT Comで敷設した、最新の低損失・コア拡大光ファイバを組み合わせることによって、それらの課題をクリアし、フィールド環境における1Tbit/s光信号の1122 km伝送という、世界記録を達成することができました。
この結果はNTT Comがめざすインフラネットワークへの大きな1歩であると確信しています。
今後も、「One NTT」としてNTT研究所と一丸となって、お客さまのDXを推進する、インフラサービスの実現をめざしていきます。

研究者紹介

1テラビット級の超高速光伝送を実現するデジタルコヒーレント技術

濱岡 福太郎

NTT未来ねっと研究所
フォトニックトランスポートネットワーク研究部 光伝送方式研究グループ
主任研究員

濱岡福太郎

高速大容量な光伝送システムを実現するキー技術は、コヒーレント光技術とデジタル信号処理技術とを組み合わせたデジタルコヒーレント技術です。本技術の開発により、送受信機でDSP(Digital Signal Processor)を用いたデジタル信号処理により極めて高精度に波形歪みの補正が可能となり、光伝送容量と伝送距離が飛躍的に向上しました。私が入社した2009年ごろは、正にデジタルコヒーレント技術の実用化検討の真最中であり、光伝送システムにおいて、デジタルコヒーレント技術は1チャネル当り100 Gbit/sの高速な信号レートを実現するためのブレークスルーとなりました。
基幹系の光通信ネットワークにおいて、さらなる大容量化を経済的に実現するためには、1チャネル当りの信号レートを高速化していくことが非常に重要です。今回の実証実験では、デジタルコヒーレントの技術をさらに発展させたNTT独自の高精度校正技術を用いて、光送受信機内部のアナログ回路で生じる理想からのずれや個体ばらつきを補償することにより、技術的難易度が非常に高い多値光変調信号を高品質に送受信することが可能となりました。本技術で生成した多値光変調信号を、 NTT Comの商用環境に新たに敷設した低損失で低非線形性を有するコア拡大低損失光ファイバケーブルを用いて伝送することにより、現在の実用システムの10倍のチャネル当り容量となる1Tbit/s信号の世界最長1122 kmの伝送実験に成功しました。今回の成果は、商用環境化において大容量・超距離伝送を実証する大きなマイルストーンとなりましたが、熾烈な競争下にある光伝送分野において最先端の技術で世界を牽引できるよう、今後も新技術の開発の手を緩めることなく引き続き研究に取り組んでいきます。

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