IOWN構想実現に向けた取り組み

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想実現に向けた取り組み

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NTTは、革新的な技術によってスマートな世界を実現するIOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)構想を提唱しました。これは、スマートな世界を実現する、最先端の光関連技術、および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤であり、これまでのインフラの限界を超え、多様性を受容できる豊かな社会の実現をめざすものです。また、さまざまな業界から広範な知識・見識を有する参加パートナーを募り、協力してIOWN構想の実現・普及をめざすIOWN Global Forumを、インテル、ソニーとともに設立しました。NTTは、多様なパートナーと連携してIOWN構想実現に向けて研究開発を推進していきます。

岩科 滋(いわしな しげる)†1/ 荒金 陽助(あらがね ようすけ)†1/ 南端 邦彦(みなみはた くにひこ)†1/ 進藤 勝志(しんどう かつし)†1/ 藤原 正勝(ふじわら まさかつ)†2

NTT研究企画部門†1
NTTネットワーク基盤技術研究所†2

新たな世界の実現に向けて

インターネットやスマートフォンといった近年の重要なイノベーションにより社会のあり方は大きく変わってきました。それに伴い、「所有から利用へ」などの人々の価値観の変化も現れてきています。さらに今後は社会の情報化がますます加速し、ICTの活用による新たな金融サービスやAI(人工知能)による自動運転など、AIやIoT(Internet of Things)技術が生活シーンに取り入れられていくことで、私たちの暮らしは大きく変わるとともに、多種多様な価値観が出てくることが考えられます(1)

多様性への対応

このような多様性に満ちた新たな世界を可能とするのは、他者への理解であり、理解を深めるためには、自分とは違う他者の立場に立った情報や感覚、他者の目線を通した情報を得ることが大きな助けになるでしょう。この世界を技術で実現するためには、より高精細で高感度なセンサを開発してより多くの情報を得ることはもちろん、他者の感覚、さらには主観にまでも踏み込んだ情報処理が要求されます。科学技術のみならず、人文科学、社会科学の知見をも取り入れる必要があります。このような技術によって実現した結果を人間がストレスを感じることなく自然に享受し、その結果として得られる心地良い状態を「ナチュラル」、人と環境が調和した世界を「ナチュラルハーモニック」と名づけ、これを追求していきます。

インターネットの限界の超越

このような世界では、膨大な量の情報処理が必要で、既存の情報通信システムでは、伝送能力と処理能力の双方に限界が訪れると考えています。日本国内のインターネット内の1秒当りの通信量が2006年から約20年間で190倍(637 Gbit/sから121 Tbit/sへ)になるという推計や、世界全体のデータ量が2010年から15年間で90倍(2ZBから175 ZBへ)に増加するという推計があります(図1)。
このような状況を既存の情報通信システムのみで解決しようとしたならば、通信量のさらなる増加、ネットワークのさらなる複雑化、輻輳などによる遅延の増加などの重大な課題に直面することになるでしょう。

消費電力の増加の克服

IoTの進展によるネットワーク接続デバイスの爆発的増加は、ネットワークの負荷を高めるだけでなく、エネルギー消費の面でも大きな懸念になっています(図2)。また、クラウドサービスなどの提供に欠かせないデータセンタの電力消費量の増加も世界的な問題となっています。
さらに、集積回路の集積度の限界が見え始めています。nm(ナノメートル)単位という物理的限界に近いレベルまで小さくなってきた集積度は、消費電力の増加とともに発熱量が増加することによる集積回路の温度上昇が顕著になり、動作周波数の限界も見え始めています。

図1 データ量の増加の推計

図1 データ量の増加の推計

図2 IT機器の消費電力量の推計

図2 IT機器の消費電力量の推計

IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想

そこでNTTでは、革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤であるIOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想を打ち出し、その実現に向けて研究開発を始めています。IOWNでは、「オールフォトニクス・ネットワーク」「デジタルツインコンピューティング」「コグニティブ・ファウンデーション」の3つの要素によって、以下のようなスマートな世界を実現していきます(図3)。

図3 IOWNの機能構成イメージ

図3 IOWNの機能構成イメージ

オールフォトニクス・ネットワーク

ネットワークにつながるヒトやモノの増加に伴うAI等の高度かつ複雑、大量な情報処理に必要な電力消費の抑制とミッションクリティカルなサービス要件を達成するために、フォトニクス技術をエンド=エンドに適用して従来技術の限界を超え、超低消費電力、大容量、低遅延なネットワークの実現をめざします。例えば、波長を制御する伝送装置や光電融合素子の開発などにより、100倍の電力効率をめざすとともに、光ファイバにおけるより多くの多重化およびマルチコアファイバの拡充により125倍の伝送容量の拡張をめざします(図4)。

図4 低消費電力、高品質、低遅延のオールフォトニクス・ネットワーク

図4 低消費電力、高品質、低遅延のオールフォトニクス・ネットワーク

デジタルツインコンピューティング

デジタルツインとは、例えば工場における生産機械、航空機のエンジン、自動車などの実世界の対象について、形状、状態、機能などをサイバー空間上へ写像し、正確に表現したものです。デジタルツインを用いることで、サイバー空間内で対象物に関する現状分析、将来予測、可能性のシミュレーションなどを行うことが可能となります。
デジタルツインコンピューティングは、実世界を表す多くのデジタルツインに対して交換・融合・複製・合成等の演算を行うことにより、モノ・ヒトのインタラクションをサイバー空間上で自由自在に再現・試行可能とする新たな計算パラダイムです(2)

コグニティブ・ファウンデーション

このような、低消費電力・大容量・高品質のコミュニケーションや、大規模なモノ・ヒトのインタラクションを実現するためには、さまざまなリソースを適切に選択・利用することが必要となります。コグニティブ・ファウンデーションは、さまざまな拠点に散在するデータを収集、処理、記憶、通信する手段を連携させて、サービスの構築や運用に必要な機能群を提供する基盤です。

IOWN Global Forum設立

IOWN構想を実現するためには、数多くの革新的な技術を創造し、組み合わせることが必要となります。さらに、それを広く使ってもらうための活動も必要となります。これは情報処理、コミュニケーション、ネットワーク基盤の大きな転換が求められることであり、広範にわたる知識・見識が必要となります。NTTグループのみで実現できることではありません。
そこで、NTT、インテル、ソニーの3社は、さまざまな業界から広範な知識・見識を有する参加パートナーを募り、協力してIOWN構想の実現・普及をめざすIOWN Global Forumの設立について発表しました(3)。本フォーラムは以下に示すような分野等において、新しい技術の仕様やフレームワーク、リファレンスデザインなどの検討を通じて、IOWN構想の実現・普及を促進することを目的とします。

今後、NTT、インテル、ソニーの3社は、本フォーラムを共同で運営する設立時のボードメンバーを選定するとともに、Working Groupを設置して幅広いパートナーと連携し、IOWN構想実現に向けて活動を進めていきます。
■参考文献

南端邦彦/進藤勝志/岩科滋/藤原正勝/荒金陽助
(左から)南端 邦彦/進藤 勝志/岩科 滋/藤原 正勝/荒金 陽助

NTT研究所のIOWN構想実現に向けての取り組みと、パートナーと連携して推進するIOWN Global Forumの取り組みについて紹介しました。NTT研究所が培ってきた革新的な技術とさまざまなパートナーの技術・知見を融合することで、新しいスマートな世界を創っていきます。

◆問い合わせ先
 NTT研究企画部門
  R&Dビジョン担当
  E-mail iown-prhco.ntt.co.jp

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