トップインタビュー 木谷 強 NTTデータ 取締役常務執行役員 技術革新統括本部長

拡充、進化、最大化の3戦略でチャレンジ
めざせ!グローバルトップ5

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NTTデータ 取締役常務執行役員 技術革新統括本部長 木谷強氏

2019年、「Brand Finance IT Services 15 2019」(ブランドファイナンス)において、NTTデータは9位にランクインし、世界にそのブランド価値を示しました。世界53カ国でグローバル展開に邁進するNTTデータ。2019年5月に発表された中期経営計画と日々のビジネスへの姿勢について、木谷強NTTデータ取締役常務執行役員に伺いました。

◆PROFILE:1983年日本電信電話公社に入社。2012年NTTデータ技術開発本部長、2016年常務執行役員 技術革新統括本部長 技術革新統括本部 システム技術本部長を経て、2017年6月より現職。

人や文化の理解、社会課題における先見の明が鍵となる

中期計画について教えていただけますでしょうか。

2019年5月に発表した中期経営計画では、お客さまへの提供価値を最大化するためにデジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに加速するとともに、グローバルシナジーを高めていくための戦略として「グローバルデジタルオファリングの拡充」「リージョン特性に合わせたお客さまへの価値提供の深化」「グローバル全社員の力を高めた組織力の最大化」の3点を掲げ、これにより、 2021年度に売上高2.5兆円、営業利益率8%をめざします。これはかなりチャレンジングな目標です。また、ITサービス業界の売上高グローバルトップ5に入ることも同時に目標として打ち出しています。現在8位に位置付けているとはいえ、競争相手はかなり強いですから北米や欧州などでビジネスを拡大し、海外売上高比率をさらに高めていくことで、売上高トップ5を実現させたいと思っています。こちらもチャレンジングではありますが、世界中のお客さまに信頼されるイノベーション企業としてのブランドを浸透させていきたいと考えています。
1番目の「グローバルデジタルオファリングの拡充」について、オファリングとは、中期経営計画では「強み」と言っていますが、その1つの例であるソリューションと考えていただければ分かりやすいと思います。国内外、グローバルで共通的に使えるソリューションです。業界別、特に金融、保険、自動車、流通、ヘルスケア、ライフサイエンス分野に注力して、これらのソリューションを国内外のメンバーとともに創造し、事業に提供しようと考えています。2番目の「リージョン特性に合わせたお客さまへの価値提供の深化」について、私たちがM&Aした会社はそもそも各地域でITサービスを展開しており、グローバルな視点に立ったとしても画一的なビジネスはできません。お客さまにおいても、そもそも展開していた事業でさえも違いますから、それぞれの地域の特性に合わせる必要があります。例えば、米国では現在、4000億円ほどの事業規模があり、アウトソーシングを中心に事業を行っています。ここでいうアウトソーシングというのは、業務アプリケーション開発、維持管理や、サーバ、PC、ネットワーク等のインフラ関連業務の一切合切を引き受けてサービスを展開する「ITアウトソーシング」と、いわゆる「ビジネスプロセスアウトソーシング」です。さらなる成長をめざすためにも、自動化のツール開発やプロセスを整理することもすでに始めていますから、各地域においてもこれと同様に、地域の特性に応じた事業戦略を立てて実行していきます。
そして、最後の「グローバル全社員の力を高めた組織力の最大化」は、当社の共通の価値観であるValues(Clients First、Foresight、Teamwork)を基に、グローバルで社員の力を高めて組織力を最大化することです。現在、社員のデジタル対応力、技術力を高めるためにトレーニングを実施しています。こうした技術を駆使することで、新しいサービスの提案ができるだけでなく、生産性の向上も図ることができます。これは働き方改革にもつながると考えています。また、適切なガバナンス体制を構築して、大きな課題でもある、失敗プロジェクトのような不採算案件の抑止に取り組むとともに、情報セキュリティのガバナンスも強化していきます。特に、情報セキュリティについては、私たちもお客さまも、さまざまな攻撃を受ける可能性があり、それに対応して会社組織やデータを守るためにZENというプロジェクトを立ち上げ、新しいセキュリティやITの仕組みをうまく応用してグローバルで取り組んでいます。

3つの戦略を鑑みたときのカギは何でしょうか。

人や文化の理解と、世の中に求められていることへの先見の明だと思います。
NTTデータグループは現在、国内外に約13万人の社員がおり、そのうちの9万人あまりが国外の社員です。断然国外の社員数が多く、売上も国外は約41%ですから、当然お客さまも国外が多くなってきていることを意味しています。こうした状況において、日本のみの考え方ではなく、国外も含めて戦略を考えていかなければいけません。それぞれの地域、国ごとに文化的背景が異なり、その文化的背景に立脚してビジネスが成立しています。こうした文化的背景をお互いに理解して初めてグローバルとしての戦略になり、NTTデータグループがグローバル一丸となって事業を伸ばしていくことができるのです。
そして、先端技術、イノベーションの推進も重要で、これらをうまく活用していくことで世の中の期待にこたえることができ、経営計画でめざすところに到達できると考えています。これが先見の明です。
私は技術担当として、グループ全体の技術戦略とイノベーション戦略を企画、実行していく立場にあり、グループとして注目すべきテクノロジやその応用、開発を推進しています。新しい技術を、お客さまに分かりやすく、そしてどう役立つかをしっかりお伝えしていくことが必要となりますが、そのためにはニーズを把握し、そこで求められている技術を実現して、安定的に提供していくことが重要となります。これをグローバルで推進していくためには、相応の技術力が必要となります。特に新入社員にはしっかりと技術を勉強してもらい、その後OJT(On the Job Training)で経験を積んでもらっています。
最近の技術として、人工知能(AI)関連はかなり事業も伸びてきていますし、注力しています。AIの活用分野の中でも特に力を入れているのはヘルスケア分野です。分かりやすいのは医療画像のAI診断です。例えばX線やMRI、CTスキャンの画像を放射線科の医師等の専門家が診断していますが、それをAIで支援しています。精度はかなり高いので、医師不足問題への対応や誤診等を少なくするなどにも役立てられています。深層学習の取り組みも増やして国外で連携しています。これに向けて、専門的能力と専門的技術を持ち、指導的立場でその知識を広めることを業務とするCoE(Center of Excellence)を立ち上げました。そこでは、 NTTデータ全体の技術知識集約組織として、良い事例や方法を集約して、お客さまのプロジェクトを支援し、社員のトレーニングも手掛けています。これはかなり大きな動きとなりました。
また、私たちは、国内外でソフトウェアを開発していますが、その生産性向上はとても重要です。現在はソフトウェア開発の自動化に努めています。大きな取り組みでいえば、設計情報から自動的にプログラムのソースコードを生成して動かすこと、そして、クラウド上でのさまざまな開発ツール等を潤沢に準備した開発環境の提供です。

NTTデータ 取締役常務執行役員 技術革新統括本部長 木谷強氏

寸暇を惜しんで交流を図る

これらの任務を遂行する際に大切にしていることを教えてください。

話をすること、コミュニケーションが大切だと考えています。先述のとおり3つの戦略のキーポイントでもありますが、考え方や文化は、もちろん日本国内においても違いますが、世界各国でそれぞれ違いますから、その違いを理解していくことがとても重要だと考えています。理解するためには直接会って話すのが一番で、極力会う機会を設けるようにはしていますが、なかなか難しい部分もありますので、頻繁に電子メールのやり取りや電話をして、お互いに理解することを心掛けています。仕事をしている日中は朝から晩まで予定が詰まっているので、打ち合わせなどに参加している人とは話をできても、遠く離れている場所に出向くことはできませんから、どうしても電子メールや電話に頼ることになり、コミュニケーションをタイムリーに図れないこともあります。ですから、できるだけ時間をつくることやさまざまなかたちのコミュニケーションを図るように努めているのです。このようなことを通して、いろいろな相談や提案をしにきていただくと私も信頼を得ているのだと実感します。これまで日々コミュニケーションを積み重ねて徐々に関係を築いてきたからであろうと思うのです。
私自身も上司には大変恵まれていて、入社以来上司にはよく話を聞いていただいています。私は研究者としてNTTグループでのキャリアをスタートしました。NTTデータに転籍し、それまでのように研究活動がうまくできないことがありました。悩んだ挙句、一念発起して「会社を辞めます。大学へ行かせてください」と、上司に話したのです。実はそのときすでに会社を辞めて米国の大学へ進学をする準備を進めていました。すると上司は、「大学へ進学するなら、会社から行けばいいじゃないか」と言ってくださり、結局会社を辞めずに2年間米国の大学へ進学させていただきました。私はこのときに大学へ行かせていただいたことが今の私の力になっていると確信しています。
この貴重な2年の間に手掛けた研究は自然言語処理で、テキスト分析をベースとするものですが、これは現在再び注目を浴びている分野です。この研究のみならず、米国でたくさんの人たちとコミュニケーションを図り、文化に触れたことは大きく、こうした研究も経験も、今の私の仕事にはとても活きています。まさにコミュニケーションの大切さを体現しました。
この留学も、会社における研究活動に行き詰っていたのがきっかけで、もし、この行き詰まりを挫折というならそうかもしれません。これに限らず小さい挫折はいつもあります。がっかりとすることや後悔もあります。しかし、これらの感情は時間が経つと忘れてしまうことがありますが、そのとき起きていた事象をファクトとしてしっかり覚えておくことが重要だと考えています。そうでなければ失敗や挫折を繰り返してしまいますからね。そして、周囲にもそのファクトを伝えるべきことは伝え、それ以外は忘れるのです。感情が尾を引いてしまうようでは、他の仕事へ影響してしまいます。

NTTデータ 取締役常務執行役員 技術革新統括本部長 木谷強氏

ファクトはしっかり確認し、それ以外は忘れる

これまでのファクトはどのようなかたちで蓄積されているのでしょうか。

打合せのメモも含めて10数年前からノートに書き貯めて保管していましたが、もう紙に書くのはやめました。なぜかというと、外に持ち出せないからなのです。お客さまの情報や会社の機密情報も含まれている重要なメモですから、もし電車などの公共の場で落としてしまったら大変です。ですから、紙ではなく電子メモに変えて、暗号化して安全に保管しています。仮になくしたとしても簡単には読めない状態にしてあります。しかも、コンピュータに記録を残すことで、紙では難しかった検索ができるようになりました。過去のノートは10冊くらいありますが、今では私の机の引き出しの中にしっかりとしまってあります。
過去のメモを振り返ってみると、さまざまな施策を手掛けていることが分かります。私は技術支援をする立場にいますから、お客さまと大きな事業を直接手掛けることはありませんが、この2年間に私のチームの若手メンバーが国内外でいろいろな支援を始めていることも記されており、これは嬉しい軌跡です。

木谷常務にとって仕事とは何でしょうか。また、技術者の皆さんに一言お願いします。

仕事は楽しみです。新しいことができることが楽しいです。中でも最近一番楽しいのは、CoEでしょうか。国内外のさまざまな情報を集約し、それを使って多くの人や物事を支援するのですから、とても楽しいですよ。会社ですから、どうしても業績、数字は重要で、売上や利益に結びつける必要があるのですが、これも喜びの1つです。数字や業績の達成感は私だけではなく、メンバーの喜びにつながります。ただ、それだけではなく何かを達成したことが世の中への貢献につながっているという気持ちが重要なのです。会社に貢献することが社会に貢献することにつながりますからね。ビジネスのみならず、豊洲駅や近隣のゴミ拾い等CSR活動も積極的に取り組んでいますが、これも社会に貢献しているという実感や気持ちを持つことにつながり、楽しいです。
技術者の皆さんには専門家になってほしいとお伝えしています。私たちはマーケットにおいて競争もしていますから、専門知識を高めて、各分野においてトップレベルをめざしてほしいと思います。トップレベルをめざすには日々の勉強とプロジェクトにおいての成果を出すことです。社会にはさまざまな情報があふれています。それを具にみて新しい情報を仕入れて、自分なりに試すことが大切です。
(インタビュー:外川智恵/撮影:大野真也)

木谷強 外川智恵
■インタビューを終えて

NTTデータ 取締役常務執行役員 技術革新統括本部長 木谷強氏

すらりとしたいで立ちの木谷常務のご趣味はジョギングです。今年はインフルエンザや気管支を痛めたこともあって、4カ月ほど走れない時期がおありだったとか。
しかし、秋には復帰して週に2回、1度に約8キロ、ご自宅の周辺を走られているといいます。週末にゆっくりと走りながら頭の中を空にする時間をつくられている木谷常務。「頭が空っぽの状態、実に気持ちがいいんですよ。一度、走りながら暗算をしてみようと思ったら、全くうまくいかない。本当に空っぽになっているんだなと実感しました」と、少年のような笑みを浮かべてお話になられました。研究者としてキャリアをスタートされた常務らしく何事もまずはトライの姿勢で臨まれるようです。卓球や草野球も嗜まれるなど文武両道の木谷常務は11年前に草野球で骨折した経験をお持ちで、この怪我をきっかけにジョギングを始められたといいます。一瞬、マイナスにも思えるきっかけをプラスに転じさせる木谷マジック、10年以上にわたって蓄積されたノートにもその秘訣がしたためられているかもしれません。情熱を携えながら、冷静に社会を見据える姿勢を学ばせていただいたひとときでした。

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