つくばフォーラム2019 ワークショップ

基盤設備維持管理技術の研究開発の動向

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NTTアクセスサービスシステム研究所 プロジェクトマネージャ 田中実

NTTアクセスサービスシステム研究所シビルシステムプロジェクトでは、基盤設備の永続化を目標に研究開発を進め、基盤設備のスマートなオペレーションの実現をめざしています。本稿では新たな管路・マンホール設備、およびとう道設備の維持管理業務について紹介します。なお、本特集は2019年11月1日に開催された「つくばフォーラム2019」ワークショップでの講演を基に構成したものです。

田中 実(たなか みのる)

NTTアクセスサービスシステム研究所 プロジェクトマネージャ

めざす維持管理の方向性

NTTでは管路、マンホール、とう道など、多くの基盤設備を構築してきました。その多くは建設後30年以上経過しており、数年後には半数が建設後50年を迎えます。これらの設備に対し延命化を図るために点検、計画、補修というPDCAのサイクルを回してきました。
具体的には、定期点検で異常を発見し、その後に精密点検を行い、その結果を基に最適な補修工法を選定し、補修工事を実施するというサイクルになります。この手法はあくまでも建設を行ってきた側の目線で、いわゆる予防保全・事後保全の取り組みです。悪くなるのを待って補修するので、どちらかというと守りの維持管理になります。
「どの設備が、いつ、どのように悪くなるのか」。設備個々の状態を把握することにより、維持管理業務を大きく変えることができます。すなわち、攻めの維持管理への転換です。そのための一番重要な技術は劣化予測技術です。設備のどの部位からどのようなメカニズムで劣化していくのかを解明し、劣化期間を推定することで、正確な劣化予測が可能になります。
この正確な劣化予測により、設備個々の状態管理が可能になり、計画的補修といった緻密な維持管理につながります。今後、大量建設時代の設備が悪くなることが想定されていますが、この計画的補修により、工事の平準化も容易になります。すなわち、これまでは設備が悪くなるのを待って対処していましたが、管理側で緻密なコントロールが可能になり、保全業務が大きく変わることになります。これが、めざしている保全業務の改革になります。次にその詳細を述べます。

予測保全・予知保全

これまでは構造物のどこが・どのように・いつ悪くなるのかということが予測できませんでした。そのため定期点検を行い、設備耐力がどの程度低下したのかを評価して補修を行ってきました。補修については構造物にとって最適な工法を選定してきましたが、補修後も引き続き点検、補修のサイクルを続けていくことが基本的なスタンスでした。すなわち構造物の劣化メカニズムが解明できていなかったということであり、定期点検を行うことによって、耐力低下のメカニズムが解明できない部分を補ってきたわけです。
現在、基盤設備の劣化メカニズム解明の研究開発を進めており、各種設備の劣化メカニズムが解明できてきました。劣化メカニズムが解明できれば定期点検を行う必要がなくなり、いつどの部位の補修を行えば良いのかタイミングが分かるため、劣化予測による予測保全ができるわけです。これらはマンホールや鉄蓋などの定型設備に適用していきます。
一方で専用橋や橋梁添架設備などの非定型設備については劣化予測が難しいため、モニタリングによって劣化を予知する予知保全を進めていきます。大規模設備のとう道については予測保全と予知保全を組み合わせたハイブリッド方式で進めていきます(図1)。

図1  めざす維持管理の方向性

図1  めざす維持管理の方向性

守りの維持管理から攻めの維持管理へ

これまでは設備を建設から50年以上、100年程度使えるように対処をしてきましたが、これをさらに延ばし150〜200年以上安心して使える設備であるため、従来の守りの維持管理から攻めの維持管理へとさらなる進化を図ります(図2)。そのためにはこれまでの建設の観点からの点検・補修ではなく、新しい観点からの管理手法の構築を進めていく必要があります。この実現のためには技術革新が必要です。究極はメンテナンスフリーの世界であり、実現には新しい材料による築造・補修方法、また新しい点検手法、新しいデータベースの創造といった新たな研究開発を進めていきます。
前述した劣化予測による予測保全・モニタリングによる予知保全が中心的な技術になり、この技術を支えるのがデータベースです。膨大なデータと、さまざまなアプリケーションによる高度な管理の土台となることから、これまでの2次元の紙による管理ではなく、3次元管理あるいは時間軸を加えた4次元管理にデータベースを進化させていく必要があります。データベースが進化すると関連する業務も変わってきます。例えば、3次元管理を行っていくことで地下にある設備が手に取るように分かるようになり、地下空間の視える化が実現できます。誰もがイメージしやすくなり、直感的に理解できます。これまでは紙の図面から頭の中で立体的に組み立てるという作業が必要でしたが、それが不要となりスキルレスで誰もが簡単に同じ地下空間の情報を共有できるようになります。つまりデジタルトランスフォーメーション(DX)化ができるわけです。
高度なデータベース管理上に、AI(Artificial Intelligence)・AR(Augmented Reality)・VR(Virtual Reality)といった技術を駆使することで、自動化をより一層進めます。例えば構造物の点検にはロボットなどによる自動化・無人化が必要であるため、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)などによる自動点検技術の研究開発を進めています。
また、点検時に撮影された写真を用いたAIによる自動劣化判定技術、3次元高精度データベースを使った基盤設備の被災予測技術等の研究開発も行っています。さらには、エンジニアリング業務についてはAI設計やAI算定、現場については自動機械施工が可能となります。立会業務においては現場ARを使用することで効率化が進み、将来的には技術の進化により立会もゼロ化が可能となります。これら3次元データベースについては高精度座標が必要なため、GNSS(Global Navigation Satellite System)による高精度位置情報取得技術に関しても研究開発を進めています。

図2  維持管理の変革

図2  維持管理の変革

基盤設備にかかわる研究開発の取り組み

基盤設備(管路・マンホール)業務

管路やマンホール設備の業務の効率化を進めていくためには正確な位置情報が必要であり、高精度に絶対座標を取得する技術が重要です。具体的には新設管路であれば1周波のGNSSを用いて位置を測量できる技術、既設管路であれば地中レーダなどによって位置情報を取得する技術であり、現在研究開発中です。
高精度に絶対座標が取得できれば、現在国土交通省が進めているi-Constructionの施策に連動するかたちで、他のライフライン事業者の高精度な設備位置情報の共有化ができます。これにより工事竣工処理や占用管理、あるいは設計・算定業務の自動化が可能となります。また、社外立会業務や支障移転工事受付業務の効率化にもつながります。つまりNTT業務に加え、他社業務のDX推進にもつながります(図3)。
続いて、橋梁添架設備の点検を効率化するために取り組んでいるAIを活用した劣化判定の事例について紹介します(図4)。現在は各種点検画像をマルチコプターや特殊機材もしくは作業者が直接撮影などさまざまな手段で画像を取得しています。この画像をスキル者が見てどの程度劣化しているかを判定しています。このスキル者による判定作業を自動化し、誰もがスキルレスで判断できるようにしたいと考えています。
技術のポイントは、はじめに他社設備とNTT設備を撮影画像から見分け、NTT設備を抽出することです。次にNTT設備抽出後、どの設備が腐食しているのか腐食エリアを検出します。この検出作業は高確率で検出できるようになってきており、今後研究開発成果として出し、さらには劣化度の判定についても自動でできるように現在研究開発を進めています。これらにより写真さえあれば設備の腐食や劣化状況が明確になり、業務の効率化につながります。

図3 高精度絶対座標取得による効果

図3  高精度絶対座標取得による効果

図4 AI劣化判定

図4  AI劣化判定

基盤設備(とう道)業務

とう道設備については3次元モデルで管理を行うための研究開発に取り組んでいます。イメージは衛星画像から地下空間の状況をストリートビューのように可視化し、点検個所履歴も参照することができるようにします(図5)。まるで自分がとう道内にいるかのような感覚で設備を立体的に見ることができるようになります。また、とう道をスケルトン表示させることで鉄筋の配置状況イメージが分かるようになります。シールドとう道の場合、さらに一次覆工のセグメントの状況も見ることができ、任意の点検個所を断面的に確認できます。今はまだ研究開発中ですが、誰もが見たい角度、見たい方向、見たい断面をいつでも見ることができます。これが実現するとさらに業務の効率化につながります。
とう道管理業務に関してどのように効率化を進めるかについて説明します。現在取り組んでいる内容は3点あり、①3次元モデルによる監視・点検のフルオート化、②3次元モデルによる設備情報の一元管理、③作業者遠隔支援、です。とう道監視については集中監視センタで全国のとう道を監視し、設備情報についても3次元情報を用いて見ることができるようにします(図6)。また、とう道内の温度や酸素濃度等の環境変化についてはセンサからリアルタイムで情報が入ります。さらに、作業の危険個所の監視や自然災害発生時の構内状況などカメラで一元的に監視することができます。さらにマルチコプターやロボットなどを活用し、災害発生個所へ駆けつけることも可能にしていきたいと考えています。
続いて3次元モデルによる設備情報の一元管理についてです。設備位置情報をすべて絶対座標で管理します。ストリートビューのようにとう道内状況が可視化でき、点検履歴情報や設備の配筋の配置、セグメントの配置状況なども閲覧でき、さらにカメラでリアルタイムに監視が可能です。
最後に作業者遠隔支援についてです。とう道内、特に東京は非常に複雑になっているため、点検や補修でとう道内に入構した作業者に対し、タブレット等の端末に温度や湿度、酸素濃度などの環境条件をリアルタイムに通知することに加えて、過去の点検結果や補修履歴が分かるようなります。また、ナビゲーション機能により現在の位置情報や目的地までの進路情報などを表示します。非常時の際は避難誘導も可能で、避難方向を表示するとともに、集中監視センタと連絡を取ることもできますので、リアルタイムで作業者を遠隔で支援できるようになります。

図5 3 Dモデルによる可視化イメージ

図5  3 Dモデルによる可視化イメージ

図6 3 Dモデルによる監視・点検のフルオート化

図6  3 Dモデルによる監視・点検のフルオート化

今後の展開

基盤設備に対する維持管理業務をさらに効率化していくため日々進化させていきたいと考えています。また、データベースも2次元から3次元、さらには4次元としていくことで業務のDXが加速していくことが期待できます。シビルシステムプロジェクトは安心・安全な基盤設備をこれからも提供し続けるために、材料・情報・通信・ロボティクスなどの最先端技術、他分野ノウハウを融合し、新たな価値を創出する研究開発を進めます。また、NTT基盤設備のみならず、社会インフラ全体の業務のDXに貢献していきます。

◆問い合わせ先
 NTTアクセスサービスシステム研究所
  シビルシステムプロジェクト
  TEL 029-868-6202
  FAX 029-868-6259
  E-mail asip-pmhosa-p-mlhco.ntt.co.jp

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