グローバルスタンダード最前線

ITU世界無線通信会議(WRC-19)報告

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市川 武男(いちかわ たけお)†1/ 齋藤 一賢(さいとう かずよし)†1/ 岩谷 純一(いわたに じゅんいち)†2/ 大槻 信也(おおつき しんや)†2

NTT技術企画部門†1/NTTアクセスサービスシステム研究所†2

電波は国境を越えて空間を伝わるため、各国が国内の取り決めだけで通信や放送等の無線業務に利用すると、近隣の国どうしで有害な電波干渉が生じるおそれがあります。このため、国連の電気通信に関する専門組織ITU(International Telecommunication Union)において、国際電気通信条約付属無線通信規則(RR: Radio Regulations)として、電波の周波数ごと、地域ごとの利用ルールを規定しています。このRRを改正するために世界各国から関係者が集まり、約4年ごとに開催される国際会議がITU世界無線通信会議(WRC: World Radiocommunication Conference)です。WRCにより改正されたRRは、日本では電波法等の法令に反映されますから、携帯電話や無線LAN等の無線サービスや無線システムをお客さまに提供し、また固定マイクロ波通信、離島衛星通信、災対無線等を自社のネットワークに利用するNTTグループにとって極めて重要な会議です。ここでは、2019年ITU世界無線通信会議(WRC-19)について報告します。

2019年ITU世界無線通信会議(WRC-19)

WRC-19は、2019年10月28日〜11月22日にエジプト(シャルム・エル・シェイク)にて開催されました。図1はエジプト大統領も臨席したオープニングセレモニーの模様です。世界の約166カ国から約3300人が参加し、表1に示すようなRR改正に関する議題について審議が行われました。日本からは、総務省、通信事業者、放送事業者、メーカ、研究機関等から約90人(NTTグループからは、NTTアクセスサービスシステム研究所、NTTドコモ、NTTアドバンステクノロジ、NTTデータ経営研究所、NTT技術企画部門)が日本代表団として審議に加わりました。表1の青字で示す議題がNTTグループに主に関係する議題です。無線LANやNTT東日本・西日本の無線利用に関する議題はNTTアクセスサービスシステム研究所とNTT技術企画部門が、携帯電話等のNTTドコモの無線利用に関する議題はNTTドコモが主に担当しました。 WRC-19の審議体制を図2に示します。無線LANや携帯電話に関する議題はCOM4において審議されました。RR改正が認められるためには、最終的にすべての参加国が出席する全体会合にて承認を得ることが必要です。

図1 WRC-19会議模様

図1 WRC-19会議模様

表1 WRC-19の議題一覧

表1 WRC-19の議題一覧
図2 WRC-19の審議体制

図2 WRC-19の審議体制

5GHz帯無線LANの屋外利用周波数の追加

議題1.16として、5GHz帯(5.15〜5.925 GHz)における無線LANを含む無線アクセスシステムに関する規制措置の検討、つまり5GHz帯無線LANの利用拡大のためのRRの改正の検討が行われました。その中で日本に強く関係するものとしては、5.2 GHz帯(5.15〜5.25 GHz)において無線LANの屋外利用と高送信出力化を可能とする検討です。RRでは、5.6 GHz帯は無線LANの屋内外での利用が一定の条件の下で認められていましたが、5.2 Hz帯は屋内利用のみに制限されていました。また、最大送信出力については、等価等方輻射電力(EIRP: Equivalent Isotropically Radiated Power)で、5.6 GHz帯は1Wまで許されていましたが、5.2 GHz帯は200 mWまでに制限されていました。5.2 GHz帯は、すでに国際的に衛星通信等の他システムが利用していたため、無線LANを屋外で利用すると有害な電波干渉が生じる懸念があったからです。
日本では、2015年から情報通信審議会において、東京での2020年の国際的な競技大会を見据えて、無線LANをつながりやすくするための検討の一環として、5.2 GHz帯で無線LANを屋外利用しても衛星通信等と共用可能か、NTTアクセスサービスシステム研究所も参加して技術的検討が行われました。その結果、すでに屋外利用可能な5.6 GHz帯と同じ最大送信出力まで高出力化する条件のもと、屋外利用の無線LAN親機の台数制限やアンテナの仰角制限により、互いに干渉することなく共用可能との結論に達しました。2018年には国内関係法令を改正(台数制限するために屋外利用の無線LAN親機を登録制とする等)し、暫定的に5.2 GHz帯の屋外利用を開始しており、NTTブロードバンドプラットフォーム等が従来の5.6 GHz帯に加えて5.2 GHz帯を屋外利用しています。そこで、WRC-19においては、NTTアクセスサービスシステム研究所が中心となって、日本国内と同等レベル以上の条件での5.2 GHz帯の無線LANの屋外利用と高送信出力化の実現を訴え、衛星通信等に利用している各国との連日の会期末ギリギリまでの協議を経て、RRを改正することに成功しました。これにより、国内で引き続き無線LANは5.6 GHz帯に加えて5.2 GHz帯において、一定の条件の下、屋外利用が可能になります。なお、本件の詳細は本誌2020年4月号に掲載予定です。

携帯電話の周波数の追加

日本では、2019年4月に3.7/4.5/28 GHz帯が5G(第5世代移動通信システム)向けの周波数として携帯電話事業者に割り当て済みであり、海外でも5Gの導入が進められています。このような背景のもと、議題1.13として、準ミリ波、ミリ波帯の周波数を対象に、携帯電話(IMT: International Mobile Telecommunications)の将来開発のためのIMT向け周波数の特定の検討、つまり5G等の携帯電話向けの周波数追加のためのRRの改正の検討が行われました。WRC-19では、日本からはNTTドコモをはじめとする携帯電話事業者や、既存無線システムの関係者が議論に参画して、連日の早朝から深夜に及ぶ協議にて地球探査衛星等の既存無線システムの保護に関する条件の詰めを行い、ほぼ日本の要望どおり、24.25〜27.5/37〜43.5/45.5〜47/47.2〜48.2/66〜71 GHzの計15.75 GHz幅を新たにIMT向けの周波数として追加するRR改正に成功しました(45.5〜47 GHzは、日本は対象外)。このうち、26.6〜27/39.5〜43.5 GHzについては、国内での5G向けの次回割り当てに向けて、情報通信審議会において技術的検討が進められています。なお、本件の詳細はNTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル2020年4月号に掲載予定です。

その他の議題

その他の議題については、NTTグループに主に関係するものに着目して、RRの改正が既存のNTTグループに関する無線システムに有害な影響を与えないように活動しました。WRC-19で合意されたRRの改正において、NTTグループに関する無線システムに有害な影響を与えるものはありません。

2023年ITU世界無線通信会議(WRC-23)の議題

WRC-19では、次回のWRC-23の議題が審議され、表2に示すとおり決定されました。無線LANに関する議題はありません。携帯電話に関しては、議題1.2として、複数の候補周波数帯におけるIMT特定の検討があります。候補周波数帯のうち、7.025〜7.125 GHzは全世界でのIMT特定をめざすもので、日本も関係します。その他の候補周波数帯は、アジア・太平洋地域以外の地域でのIMT特定をめざすもので、日本は関係しません。また、議題1.4として、2.7 GHz帯以下のIMT特定された周波数帯におけるIMT基地局としての高高度プラットフォームステーション(HIBS: HAPS as IMT Base Stations、HAPS: High Altitude Platform Station)利用の検討があります。成層圏等の高高度の飛行体にIMT基地局を搭載し地上をIMTのエリア化することをめざしているものです。

表2 WRC-23の議題一覧

表2 WRC-23の議題一覧

2019年ITU無線通信総会(RA-19)

WRC-19に先立って、RA-19(Radiocommunication Assembly 2019)が2019年10月21〜25日にエジプト(シャルム・エル・シェイク)にて開催されました。RAは、ITU無線通信部門ITU-R(ITU Radiocommunication Sector)の総会であり、WRC同様に約4年ごとに開催され、ITU-Rの研究委員会(SG: Study Group)の議長・副議長の任命、研究課題の承認等を行います。RA-19では、世界の約88カ国から約511人が参加し、日本からは総務省をはじめ約36人が参加しました。図3に示すように、各SGの議長と副議長が任命され、NTTグループからはNTTドコモの新博行氏が携帯電話を含む地上業務についての研究を担当するSG5の副議長の1人として任命されています。なお、各SGでの研究結果は、勧告または報告としてITU-Rから公開され、WRCでの審議において参照されます。

図3 2019年〜2023年研究会期のITU-R SG体制

図3 2019年〜2023年研究会期のITU-R SG体制

今後の予定

次回のWRC-23に向けて、NTTグループに関する無線システムの周波数追加や有害な電波干渉からの保護等を目的に、ITU-Rやアジア・太平洋地域のWRC準備会合、国内の関連会合等において、引き続き活動していく予定です。

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