グループ企業探訪 第222回 株式会社エネット

NTTグループのシナジーとICT活用で環境に優しい電気と付加価値サービスを提供する総合エネルギーサービス企業

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エネット 川越祐司社長
エネット 川越祐司社長

エネットは、2000年の電力自由化のスタートとともに設立。これまで約20年間にわたり、国内電力市場に新しい風を吹き込み、新電力(新規参入の小売電気事業者)の電力市場におけるシェア拡大を先導することで、電力自由化の進展に貢献してきた。電力市場の特徴と事業状況、会社創立20周年を迎えた今後の事業展開について川越祐司社長に話を伺った。

国内電力事業に新しい風を吹き込みお客さまへ環境に優しい電気と付加価値サービスを提供する

設立の背景と目的について教えてください。

エネットは、地域独占であった国内電力事業に対し新風を吹き込み、既存の電気事業者(旧一般電気事業者:旧一電)と同品質かつ低価格な電気をお届けするべく、 NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスが出資し、2000年7月に設立しました。2001年に特別高圧(契約電力2000 kW以上)のお客さまを対象に東京電力エリアと関西電力エリアで事業を開始し、その後自由化の範囲拡大(2004年に契約電力500 kW以上、2005年に契約電力50 kW以上、2016年に家庭用を含むすべての需要家が対象)に合わせ事業エリアを拡大しながら、日本全国10電力会社エリアの約9万4000件(2020年1月末現在)の法人のお客さまにサービスを提供しています。
2019年5月の増資によりNTTグループの連結子会社となり、現在はNTTスマイルエナジーとともにNTTアノードエナジーグループの一員として、NTTグループ各社、東京ガス、大阪ガスとの連携により、小売電気事業のみならずさまざまな付加価値サービスを提供しています。

電力自由化により、市場はどのようになっているのでしょうか。

電力自由化前は、全国10電力会社エリアにおいて旧一電による地域独占で事業が行われてきました。2000年3月に電気事業法が改正され、電力自由化が始まりました。2000年度は新電力が7事業者だったものが、その後の自由化の対象範囲拡大、2016年4月の全面自由化を経て、2020年2月末現在で新電力は632事業者と約90倍に増加しています。
新電力の販売電力量のシェアについては、2001年度は0.1%、2010年度は約2%、全面自由化開始当初の2016年4月で約5%であったものが、2019年10月には15.1%となっており、それを電圧別にみると、特別高圧が5.5%、高圧が22.1%、低圧が16%と、全面自由化により新電力のシェアが急伸してきています。
新電力の中の勢力図は、上位11社のシェアが48.9%(2019年10月)、上位3社で24.9%と混戦状態にある中、当社は18年間首位を維持してきましたが、旧一電の子会社の販売が伸びており、2019年10月現在では東京電力100%の子会社であるテプコカスタマーサービスに僅差で2位となっています。また、新電力ではありませんが、大手旧一電の域外進出分(自エリア域外における販売)のシェアも伸びています。

付加価値でお客さまに選ばれ続ける総合エネルギーサービス企業をめざす

事業の概要と取り組みのポイントについてお聞かせください。

当社の基本事業である電力小売は、株主の両ガス会社をはじめ、全国の発電事業者や日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達し、それをお客さまに小売する事業です。電気は、蓄電池等に貯蔵できるものの流通量に比べて容量規模が非常に小さく、蓄えて在庫として持つことが難しいため、調達・販売価格はその時々の電気の需給状況で変動する市場価格に依存せざるを得ません。
こうした環境の中、当社は、脱炭素社会の実現に向け、ICTや再生可能エネルギー等を活用した付加価値サービスの提供を進め、お客さまに選ばれ続ける総合エネルギーサービス企業をめざして、①付加価値サービスの提供、②営業力強化、③需要予測・需給調整技術のさらなる向上の3点を重点ポイントとして事業に取り組んでいます。
①主な付加価値サービスについてご紹介します。
・人工知能(AI)を活用した省エネルギーサービス「Ennetey®」。お客さま施設の電力データをスマートメーターを通じて自動的に収集し、AIを活用して解析、問題点の抽出や省エネ方法のレポートをお届けするサービスです。このサービスにより、2019年12月に、一般財団法人省エネルギーセンターが主催する「省エネ大賞」において最高位の経済産業大臣賞を受賞しました。
・CO2排出量低減メニュー「EnneGreen (商標登録出願中)」。お客さまの再生可能エネルギー調達やCO2排出量の低減をサポートするサービスです。建物改修や省エネ工事などの大掛かりな対策を実施することなく、環境先進企業が加盟するRE100のような国際イニシアチブや“再エネ100宣言 RE Action”のような国内の取り組み、地球温暖化対策推進法などへの対応をスピーディに行えます。
・オンサイト型太陽光発電による電力供給サービス「EnnetSolar(商標登録出願中)」。お客さまの初期費用ゼロで敷地内にオンサイト型太陽光発電設備(当社資産)を設置、太陽光発電の電気と系統の電気をセットで提供するサービスです。
・NTTグループをはじめ、EV100〔企業による電気自動車(EV)の使用や環境整備促進をめざす国際イニシアティブ〕を宣言する企業や自治体のEV導入を支援し、EVと充電器を低需要・低コストのタイミングで当社が遠隔充電制御する、EVスマート充電サービス「EnneEV (商標登録出願中)」を2020年度下期にサービス開始予定です。
②営業力強化については、直販営業とともにアライアンスパートナーとの連携営業の強化に取り組みます。直販営業では、これまで以上に地域に密着した営業を展開するため、2020年度に北海道支店、信越支店、北陸支店を開設し、本社を含め10拠点体制とするとともに、お客さまへの付加価値サービス提案強化に向け、ソリューション部門の強化を図ります。アライアンスパートナーとの連携営業では、これまでの特定業種・業界に強みを持つ企業や、地域の法人とつながりを持つ企業との連携に加え、NTTグループ連携での販売拡大に向け、通建会社様やNTT代理店・特約店様、光コラボ事業者様との営業連携やアライアンスパートナー化を進めます。
③需要予測・需給調整技術のさらなる向上については、電力の需給状況と市場調達・販売価格が連動しているため、需要予測・需給調整の精度向上を図ることで市場調達コストの上昇リスク回避、利益拡大をめざします。需要予測・需給調整を行う需給オペレーション業務では、これまで蓄積してきた電力需要の実績データを基に、天気予報やカレンダー情報やイベント情報等を用いて、日々大きく変動するエリアごとの電力需要を予測しています。電力需要予測の精度向上に向け、予測サービスや予測技術の調査や検証を進める中で、NTTグループの「corevo®」をはじめとする各種のAIや最新の気象予測技術等を活用し、新たな電力需給調整技術の確立に取り組むとともに、電力先物市場や需給調整市場、容量市場等、新たに立ち上がる市場やDR(Demand Response)*1、VPP(Virtual Power Plant)*2なども含めて、電源調達コストを抑えるオペレーション技術を確立していく予定です。

今後の展開について教えてください。

当社は、2020年7月に創立20周年を迎えますが、再生可能エネルギーの主力電源化、脱炭素ニーズの高まりといった電気事業を取り巻く変化を踏まえて、ICTを活用した新サービス開発を精力的に進めるとともに、株主やパートナー企業との連携を強化しながら、お客さまに選ばれ続ける総合エネルギーサービス企業をめざします。
さまざまなバックグラウンドの人が集まる当社において、社員の想い・ビジョン・価値観の一体感をより高めるために、企業ビジョンを2019年7月に制定し、使命、めざす姿、行動指針を明確化しました。
また、企業を取り巻く情報漏洩問題やサイバー攻撃によるシステム障害、これらに伴うサービス・事業の停滞など、セキュリティリスクが日々高まりつつある中、引き続きお客さまに安心してサービスをご利用いただけるよう、情報セキュリティの維持および継続的な改善に取り組んでいくことを目的に、2019年12月に小売電気事業者では他社に先駆けて、ISO 27000シリーズで規定されている情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得しました。
NTTアノードエナジーグループとして中期ビジョンで 2025年度に6000億円の売上を掲げている中、企業ビジョンやISMS認証取得をはじめ、事業基盤をしっかりと固め、東京ガス、大阪ガスとこれまで同様に連携し、ICTを活用した付加価値サービスを拡充するとともに、NTTアノードエナジーが開発する新たなソリューションも活用して事業規模を拡大することで、4000億円程度の売上をめざします。

担当者に聞く

需給オペレーションが事業のコア需要予測技術を確立し新たなビジネスに

需給本部
需給オペレーション室
担当部長
島陰 豊成さん

島陰豊成さん

島陰 豊成さん

担当されている業務について教えてください。

私は需給本部で需給オペレーション業務を行っています。小売電気事業者の責務として、販売する電力の計画と実績および調達する電力の計画と実績を30分単位で一致させる計画値同時同量を達成するため、全国を10ブロックに分けて需要予測、電源調達、計画策定、当日調整といった業務を24時間365日の体制で実施しています。
具体的には、発電事業者や他の小売電気事業者から調達した電源をお客さまの需要の予測結果に応じて配分し、過不足分をJEPXのスポット市場における売買(30分単位)で調整します。こうして策定した翌日の販売・調達の計画を、電力の安定供給確保と全国の需給状況と系統運用状況を監視する電力広域的運営推進機関(OCCTO)に提出します。当日には、計画値と実績値の乖離の解消をめざして制限時間までJEPXの時間前市場で過不足を調整し、それを反映した変更計画をOCCTOに再提出する、ということを繰り返します。

ご苦労されている点を伺えますか。

JEPXのスポット市場は価格変動が大きく、猛暑や厳冬で需給がひっ迫すると価格が高騰する市場価格変動リスクがあります。また、計画値と実績値の乖離には、インバランスとしてスポット市場よりも不利な条件で行われる精算リスクがあり、事業に与えるインパクトが非常に大きくなります。これらのリスクを低減するためには精度の高い需要予測が求められ、需給オペレーション室では目標とする予測精度の達成に向けて総力を挙げて取り組んでいます。
需要予測は、これまで蓄積してきた電力需要の実績データを基に、天気予報やカレンダー情報やイベント情報等を用いて、日々大きく変動する需要家の翌日の電力需要を正確に予測することが求められます。需要予測を難しくする原因としては、大きな需要家である工場の自家発電設備のトラブルによる電力需要の変動、天気予報が大きく外れて気温が上昇した結果として生じるオフィスや商業設備の冷房需要の増加、台風上陸など特異な気象状況により平常時と大きく異なる電力需要の変化などがあります。

今後の展望について教えてください。

需要予測の面では、外部の需要予測サービスの導入やNTTグループの持つAI技術や最新の気象予測技術等の活用を視野に、さらなる精度の向上に取り組んでいきたいと思います。また、市場価格変動リスクへの対応としては、AIによる市場価格予測、電源ポートフォリオの最適化、天候デリバティブや電力先物商品によるリスクヘッジ手段の活用も考えています。
需給調整における需要側の調整手段としては、DRの活用に力を入れていきたいと考えています。現在も、電力需給逼迫時に当社からの節電要請に応じてお客さまに節電いただくことで、電気料金が割引になるデマンドレスポンスサービス「EnneSmart®」を提供していますが、これを発展させ、DRサービスの高度化・高付加価値化にも取り組んでいきます。将来的には、電気自動車と充電器を低需要・低コストのタイミングで当社が遠隔充電制御する「EnneEV(商標登録出願中)」をDRリソースとしても活用していくことを視野に入れています。
また、新たな取り組みとして、小売電気事業者向けに当社の需給オペレーションや電源調達等の各種機能をプラットフォームとして提供するサービスを2020年4月に開始しました。スポット市場からの電力調達割合が高く市場価格変動リスクにさらされている、あるいは本業を別にお持ちで需給オペレーションにかけられる社内リソースが限定的である方々に、小売電気事業におけるリスクとリソースを小さくして事業環境を安定化させる手段として利用していただきたいと考えています。

エネット ア・ラ・カルト

省エネ大賞受賞

AIを活用した省エネルギーサービス 「Enneteye®」が、2019年度省エネ大賞 製品ビジネスモデル部門経済産業大臣賞(節電分野)を受賞しました(写真1)。エネットとしては2012年度の省エネ大賞 経済産業大臣賞に続く2度目の受賞だそうです。開発に携ったメンバーは、結果発表前は相当のプレッシャーを感じていたそうですが、結果は見事に最高位の賞にあたる経済産業大臣賞。すっかり肩の荷も下り、別の日に行われた表彰式で、牧原秀樹経済産業副大臣より川越社長に表彰状とトロフィーが授与されたときには、その場の雰囲気を思う存分楽しめたそうです。

写真1

写真1

城南信用金庫様

東京都と神奈川県に合わせて86店を展開する城南信用金庫様は、2012年からエネットの電力をご利用いただいているとのことです(写真2、3)。2018年に企業が自社で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギー化する運動であるRE100に、国内金融機関としては初加盟しました。そして、2019年1月に使用電力の全量をエネットの「EnneGreen(商標登録出願中)」に切り替えたことで、100%再生可能エネルギー化を実現し、国内企業初のRE100を達成したそうです。エネットのサービスがこのようなかたちでお客さまに貢献できたことは、とても光栄なことと社員一同大喜びだそうです。

写真2 城南信用金庫本店の屋上に設置されている太陽光発電パネル

写真2 城南信用金庫本店の屋上に設置されている太陽光発電パネル

写真3 屋上の太陽光発電状況を示す表示盤。お客さまに見てもらえるように店内1階に設置

写真3 屋上の太陽光発電状況を示す表示盤。お客さまに見てもらえるように店内1階に設置

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