3.経営成績及び財政状態

(1)経営成績
 当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益が改善するなか設備投資が増加しており、また、雇用情勢には厳しさが残るものの改善に広がりが見られ、個人消費が緩やかに回復するなど、景気は回復基調で推移してまいりました。
 情報通信分野では、ブロードバンド化やユビキタス化の進展などにともない、市場環境が激しく変化しております。成長を続けるブロードバンド市場においては、厳しい競争のなか、ブロードバンドアクセスの本命である光アクセスサービスの普及に拍車がかかっており、契約数の伸びがADSLサービスの伸びを上回る傾向が顕著になってきております。移動通信市場では、契約数全体の伸びが鈍化傾向にあり、引き続き料金・サービス競争が厳しい状況にあるなかで、第三世代移動通信サービスの契約数は着実に増加しており、料金プランや割引サービスの多様化、アプリケーションの充実などが図られております。一方、固定電話市場では、既存の固定電話サービスからIP電話サービスへの移行が進展しつつあり、市場規模が縮小するなか、基本料を含めた通信料金全般にわたる厳しい競争が継続しております。
 このような事業環境のもと、NTTグループは、「NTTグループ中期経営戦略」(平成16年11月公表)の具現化に向けた取り組みを継続してまいりました。当期における具体的な事業展開といたしましては、光アクセスサービスの普及拡大に向けて、光ならではの高品質なIP電話サービスの提供エリアの拡大およびサービスの拡充、インターネット接続サービス事業者や放送事業者との連携による販売の強化に向けて取り組みました。第三世代移動通信サービス「FOMA」につきましては、お客様にとってわかりやすい新料金プランの提供を開始し、端末の品揃えおよびサービスの充実を図るとともに、携帯電話によるクレジット決済サービスの提供に向けた取り組みを行うなど、「生活ケータイ」をキーワードとして、生活のあらゆる場面における携帯端末の利用方法の多様化を推進し、新たな収益源の確保に向けて努めてまいりました。さらに、固定通信と移動通信の融合を図るサービスを提供するほか、公衆無線LANサービスにつきましては、東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社(東西地域会社)間でのサービスの相互ローミングの開始、グループ会社での基地局の設備の共用など、お客様の利便性の向上や事業の効率化を図る取り組みを推進しました。
 なお、中期経営戦略を実現するため、昨年5月、持株会社に「中期経営戦略推進室」、「次世代ネットワーク推進室」および「ビジネスプロセス改革推進室」を設置するなど体制の強化を図りました。昨年11月には、次世代ネットワーク構築のロードマップ(工程表)やブロードバンド・ユビキタスサービスの展開についてとりまとめ、「NTTグループ中期経営戦略の推進について」として公表し、積極的な取り組みを進めております。
 また、NTTグループでは、CSR(企業の社会的責任)活動に積極的に取り組んでおり、マネジメント体制を明確にするため、CSR委員会を設置するとともに、CSR報告書を発行いたしました。
 以上の結果、当期のNTTグループの連結営業収益は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データおよびエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社において増収を確保したものの、東西地域会社および株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモにおいて減収傾向が続いたことなどから、前期比0.6%減の10兆7,411億円となりました。また、連結税引前当期純利益および連結当期純利益は、前期に計上したAT&T Wireless Services, Inc. 社株式の売却益(5,018億円)の影響がなくなったことなどにより、それぞれ、前期比24.2%減の1兆3,059億円、前期比29.8%減の4,987億円となりました。


当連結会計年度における主要なグループ会社の経営成績等は次のとおりです。

【日本電信電話株式会社(持株会社)】
 当社は、基盤的研究開発を推進しその成果の普及を図るとともに、持株会社として、グループ全体の戦略の立案や事業環境の変化に即した経営資源の再配分を行うなど効果的なグループ経営の推進に努めてまいりました。
 まず、中期経営戦略の実現に向け、次世代ネットワーク構築のロードマップやブロードバンド・ユビキタスサービスの展開についてとりまとめ、「NTTグループ中期経営戦略の推進について」として昨年11月に公表するとともに、ブロードバンドサービスの展開、国際事業の推進に向けた助言、あっせんなどを行いました。これらの対価として、当社は、グループ経営運営収入202億円(前期比3.1%減)を得ました。さらに、次世代のネットワークアーキテクチャを構築するための基盤技術を中心に研究開発を推進するとともに、将来を見据えた基礎技術の開発についても引き続き推進し、基盤的研究開発収入1,268億円(前期比8.9%減)を得ました。
 なお、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモによる同社自己株式の公開買付(買付予定株式数1,686,746株)に際して、当社は株式数1,506,000株、総額2,499億9,600万円の同社株式の売却を実施しました。また、受取配当金として、1,690億円(前期比17.3%増)を得ました。
 以上の結果、当社の当期の営業収益は3,393億円(前期比5.0%増)、経常利益は1,719億円(前期比13.3%増)となりました。当期純利益は、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ株式の売却益2,493億円を特別利益に計上したことなどにより、3,940億円(前期比13.5%減)となりました。

 なお、平成17年6月28日開催の第20回定時株主総会においてご承認いただいた、当社普通株式125万株、取得価額の総額6,000億円を限度とした「自己株式取得」につきましては、当期中において、株式数1,116,743株、総額5,393億8,686万9,000円の取得を実施しました。

【東日本電信電話株式会社・西日本電信電話株式会社】
 東西地域会社は、ブロードバンドサービスの拡充および固定電話市場における競争への対応による収益基盤の確保に積極的に取り組むとともに、引き続き経営の効率化に努めてまいりました。
 ブロードバンドサービスにつきましては、光アクセスサービスならではの高品質なIP電話サービス「ひかり電話」の提供を積極的に展開し、同時に2回線分の通話を可能とする「複数チャネル」サービスおよび最大5つの電話番号が利用できる「追加番号」サービスの提供を開始するなど、光アクセスサービスの普及拡大に積極的に取り組みました。また、法人のお客様向けに提供している広域イーサネットサービスの提供エリアの拡大、「ひかり電話ビジネスタイプ」に組み合わせることが可能な無線LAN対応のモバイルIP電話端末の提供を開始するなど、多様化するお客様ニーズへの対応に取り組みました。
 映像配信サービスにつきましては、ブロードバンド環境を活用した付加価値の高いコンテンツの普及拡大や多チャンネル放送サービスの提供に向けた取り組みなどを行ってまいりました。
 一方、ドライカッパを利用した直収電話サービスが普及するなか、固定電話サービスにつきましては、複数回線の電話料金を一括してお支払いいただいているお客様に対して基本料(回線使用料)の割引を実施するなど、料金の低廉化に努めてまいりました。
 経営の効率化につきましては、各種コスト削減に継続して取り組むとともに、東日本電信電話株式会社におきましては、都道県域の営業系・設備系・共通系の3つのアウトソーシング会社を都道県単位で統合するなど、業務運営体制の見直しを行いました。
 ブロードバンド市場における競争の激化、固定電話市場の縮小および競争の激化など厳しい経営環境のなか、以上のような努力を行ってまいりましたが、当期の営業収益は東日本電信電話株式会社が2兆1,253億円(前期比2.5%減)、西日本電信電話株式会社が2兆296億円(前期比3.3%減)にとどまりました。

【エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社】
 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社は、IPサービスの国内外への普及拡大やグローバル事業の体制の強化を図りました。
 法人のお客様向けには、携帯端末から企業内のシステムに安全にアクセスしたいというご要望にお応えするため、「FOMA」を利用した「スマートBizキット」の提供を開始するとともに、ネットワークからルータ、サーバまでの管理を一元的に提供する「マネジメントアウトソーシング」サービスを提供するなど、多様化するお客様ニーズにお応えできるよう取り組みました。
 個人のお客様向けには、OCNの光アクセスサービス対応メニューである 「OCN 光 with フレッツ」の販売に総力をあげるとともに、情報家電に必要な「OCN IPv6」サービスを提供開始するなど、お客様の利便性向上に努めました。
 一方、グローバル事業の競争力・収益力の強化のため、新たにグローバル事業本部を設置するとともに、欧州・米国・アジアの現地法人を3極体制にまとめました。さらに、グローバル企業のビジネス展開が活発化するインドにおきまして、日本の通信事業者としてはじめて現地法人を設立し、現地の企業ニーズに迅速に対応できる体制を整えました。
 固定電話サービスにつきましては、国内通話、国際通話、携帯電話への通話料を安価にする「プラチナ・ライン」の販売などに取り組み、競争力の強化に努めました。
 以上の結果、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の当期の営業収益は1兆1,278億円(前期比3.5%増)となりました。

【株式会社エヌ・ティ・ティ・データ】
 株式会社エヌ・ティ・ティ・データは、お客様企業との業務提携や共同出資を通じた新規事業を推進するとともに、カスタマーバリューを向上させるシステム・サービスを提供できるお客様満足度No.1の企業を目指し、「基礎体力の向上に向けた施策」および「更なる成長に向けた施策」に取り組みました。
 「基礎体力の向上に向けた施策」におきましては、営業力の強化に向け、営業責任者がお客様満足度調査の結果に基づき策定したアクションプランを確実に実施することにより、営業プロセスの改善に努めました。また、SI競争力の強化に向け、システム開発を効率的に進めるため、プロセスの改善や安定化、業務ノウハウの蓄積とこれらを支えるシステム環境の整備を図りました。
 また、「更なる成長に向けた施策」におきましては、ノウハウやスキルを備えた人材の中途採用の拡大などを通じて法人分野などにおける営業・開発力の増強を図ったほか、無線ICタグ(荷札)を活用した在庫管理システムをお客様企業と共同で開発し、さらに、システムの構築から運用までをオープンソースソフトウェアで実現する基盤の整備などに取り組みました。
 以上の結果、株式会社エヌ・ティ・ティ・データの当期の連結営業収益は9,072億円(前期比6.2%増)となりました。

【株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ】
 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモは、「FOMA」サービスと「mova」サービスの料金体系を統一し、お客様にとってわかりやすい新料金プランを導入したほか、月々の基本使用料を安価に設定した「ファミ割ワイド」の提供開始、「iモード」におけるパケット通信料定額制サービス「パケ・ホーダイ」の適用範囲の拡大など、お客様のニーズに合わせた料金プラン、サービスの充実に努めてまいりました。さらに、新型の端末を積極的に提供するとともに、ニュースや天気などの最新情報を自動的に待ち受け画面に表示する「iチャネル」、同時に最大5人までグループ通話が可能な「プッシュトーク」の提供を開始するなど、端末の品揃えとサービスの充実に取り組み、携帯電話事業の一層の充実強化を図りました。
 また、「おサイフケータイ」の更なる展開といたしまして、新しいクレジットブランド「iD」を立ち上げ、「おサイフケータイ」を活用した新しい決済プラットフォームを提供するなど、新たな収益機会の確保に向けて努めてまいりました。
 移動通信市場における料金・サービス競争の激化など厳しい経営環境のなか、以上のような努力を行ってまいりましたが、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの当期の連結営業収益は4兆7,659億円(前期比1.6%減)にとどまりました。


(2)財政状態
 当連結会計年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、当期純利益及び減価償却費などにより、3兆2,429億円となりました。前期比では、4,131億円(14.6%)キャッシュ・フローが増加しておりますが、これはAT&T Wireless Services, Inc.の減損が、前期に実施した株式売却により税務上損金として認容されたこと等から、法人税等の支払額(純額)が減少したことなどによるものであります。
 「投資活動によるキャッシュ・フロー」については、固定資産の取得などにより、2兆773億円の現金を使用しました。前期比では、3,089億円(17.5%)現金支出が増加しておりますが、これは、AT&T Wireless Services, Inc.株式の売却等で現金収入を得た前期に比べ、長期投資の売却による収入が減少したこと及び三井住友カード株式会社やKT Freetel Co.,Ltd.の株式取得等、長期投資による支出が増加したことなどによるものであります。なお、資金運用に伴う短期投資の増減の結果、現金収入の増加がありました。
 「財務活動によるキャッシュ・フロー」については、借入金の返済及び自己株式の取得などにより、1兆1,399億円の現金を使用しました。前期比では、279億円(2.5%)現金支出が増加しておりますが、これは長期借入金等の返済額が減少した一方で自己株式の取得による支出が増加したことなどによるものであります。
 以上の結果、当連結会計年度末におけるNTTグループの現預金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して289億円(2.1%)増加し、1兆4,108億円となりました。


(3)当期の利益配分
 当期における期末配当金は、1株当たり3,000円を予定しており、中間配当金を加えますと1株当たりの配当金は年間6,000円となります。


(4)次期見通し
 わが国経済は、原油価格などの国際商品市況や金融情勢の動向に留意していく必要はあるものの、企業部門の好調さが家計部門へ波及しており、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれております。
 情報通信分野では、ブロードバンド化とユビキタス化が引き続き進展し、IP化にともなうサービスの融合が加速するなかで、個人や社会にとってより豊かなコミュニケーション環境が整いつつあります。国内外の情報通信事業者は、固定通信と移動通信、通信と放送の連携・融合に対応するため、合併・買収などの事業統合を行うなど、一層の事業構造改革を進めており、新たなビジネスモデルの出現とも相まって、競争は激しさを増すものと想定されます。
 このような状況のなか、NTTグループは、昨年公表した「NTTグループ中期経営戦略の推進について」に基づき、現行法の枠組みのもとで公正競争条件を確保しつつ、効率的で柔軟な次世代ネットワークを構築してまいります。次世代ネットワークにおきましては、既存の固定電話網とIP網の特長を兼ね備えた、安心・安全で便利なサービスの提供を目指すとともに、インターネット接続サービス事業者を含む他社のIP網などとのコネクティビティ(相互接続性)を確保したオープンなネットワークとしてまいります。次世代ネットワークの本格導入に先立ち、品質制御機能やセキュリティ機能などの技術確認およびお客様のご要望の把握を行うため、本年12月よりフィールドトライアル(実証実験)を開始するとともに、東西地域会社のIP網に中継ノードや光波長伝送装置などを導入し、次世代ネットワークのうち中継系の構築に着手します。さらに、来年度下期から加入系の構築やサービス制御機能の導入を開始し、次世代ネットワークによるサービスの本格提供を目指してまいります。
 また、光アクセスサービスの拡充や、固定通信と移動通信、通信と放送の連携・融合に向けた取り組みを推進するとともに、グループ内の経営資源を有効に活用し、インターネット接続・ポータルサービスなどの上位レイヤサービスや法人向けのサービスをさらに充実させていくことで、ブロードバンド・ユビキタスサービスの展開を図ってまいります。このような取り組みを通じて次世代ネットワークによるサービスの普及を図り、2010年度には3,000万のお客様に光アクセスサービスをご利用いただくことを目指します。
 具体的な事業展開としましては、光アクセスサービスの本格的な普及拡大に向けて、他社との連携による営業力の強化、高品質なIP電話サービス「ひかり電話」とのセット販売の強化、お客様のニーズにあわせた光アクセスサービスの新プランの提供、法人のお客様へのサービスの拡充など、引き続きその販売と商品力の強化に総力をあげてまいります。また、「FOMA」サービスにつきましては、「プッシュトーク」、「iチャネル」など、新たなサービスについて一層の利用促進を図るとともに、魅力的な商品やサービスの提供、ネットワーク品質の向上、アフターサービスの充実など総合的な競争力の向上に努めるほか、「iD」をはじめとする「おサイフケータイ」を活用した各種サービスを積極的に展開し、新たな収入源の確保に向けた取り組みを展開してまいります。
 一方、光アクセスサービスをはじめとした営業力の強化に向け、ご注文への迅速な対応やサポート体制の充実など、業務運営体制の確立によるお客様サービスの向上に努めるとともに、コスト削減など経営の効率化に向けた取り組みを継続してまいります。
 そのなかで当社は、グループの経営資源の機動的かつ弾力的な投入や一元的な基盤的研究開発など持株会社方式の利点を活用したグループ運営を推進するとともに、各グループ会社に対する必要な助言、あっせんなどの実施、効率的な資金調達などに取り組んでまいります。
 研究開発につきましては、安心・安全で便利なブロードバンド・ユビキタスサービスの発展を支える基盤技術の創出に向けて全力で取り組むとともに、成果を着実に事業に反映させるため、「総合プロデュース機能」を活用し、各グループ会社と連携した実用化開発を一層推進します。また、引き続き基盤的研究開発の成果の普及に努めるとともに、業界標準を含めた標準化への更なる貢献や他の研究機関などと連携した研究開発活動についても積極的に進めてまいります。
 
 次期の業績については、連結営業収益は10兆8,000億円(前期比0.5%増)、連結税引前当期純利益は1兆1,750億円(前期比10.0%減)、連結当期純利益は5,000億円(前期比0.3%増)を予想しております。
 また、次期の年間配当金につきましては、1株当たり普通配当8,000円とさせていただく予定であります。


(注) 本決算短信に記載されている業績予想の各数値は、現在当社の経営陣が入手している情報に基づいて行った判断・評価・事実認識・方針の策定に基づいて算定しております。また、過去に確定し正確に認識された事実以外に、将来の予想を行うために不可欠となる一定の前提(仮定)を用いて算定したものであります。将来の予想に本質的に内在する不確定性・不確実性および今後の事業運営や内外の経済、証券市場その他の状況変化等による変動可能性に照らし、現実の業績の数値は、予想数値と異なる可能性があります。


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