報道発表資料
                             1996年10月30日
                             日本電信電話株式会社

         21世紀に向けて変革するNTTのR&D

I.はじめに
 
 ディジタル、光、LSI等の技術革新やパソコンの高機能化・低価格化による急激な
普及並びにインターネットに代表されるコンピュータ通信需要の急増等により、情報通
信はマルチメディア化に向けて着実に変革し、マルチメディア時代は萌芽期から成長期
へと向かっております。
 NTTでは、一昨年1月に「マルチメディア時代に向けてのNTTの基本構想」を、
昨年6月には「マルチメディアへの取り組み」を発表し、事業経営の柱としてこのマル
チメディアに向けた取り組みを積極的に推進してきました。このような取り組みの一環
として、本年7月には「新光アクセスシステム(通称:πシステム)」の開発に基づく
FTTHの実現に向けたアクセス網の光化展開計画を、また、10月9日にはマルチメ
ディアの萌芽期から成長期への転換に向けたOCNサービスをはじめとする多様なマル
チメディアサービス提供計画を発表いたしました。
 このような取り組みを着実に進めることによって、21世紀初頭(2005年〜20
10年頃)には、マルチメディアの成熟期を迎え、「情報流通」を主体とした新たな社
会が構築されていくであろうことは、最早、疑う余地のない状況となっております。
 しかしながら、これを実現していくためには、その原動力として、研究開発のたゆま
ぬ努力が必要不可欠であることは言うまでもありません。NTTでは、マルチメディア
成熟期に向けて、今後とも、研究開発に積極的にチャレンジしていく考えです。


ll.NTTのR&Dが目指すもの
 1.NTT事業の変革を支えるR&D目標
  ○「情報」と「NW」が融合し、利便性が格段に向上するマルチメディアの萌芽期
   を迎え、NTTの事業は『電気通信事業』から『情報通信事業』へ脱皮しようと
   しています。
   ・電気通信事業 − ユーザとユーザをつなぐ“線”を提供
   ・情報通信事業 − ユーザと情報をつなぐ“情報共有の仕組み”を提供
             −−あらゆるもの(社会、ビジネス、生活)の変革を支援

  ○「より安心に」、「より快適に」利用できる通信環境の整うマルチメディア成熟
   期に向けて、NTTは、『情報通信事業』から情報に関する“サプライヤとデマ
   ンドをつなぐための情報流通の仕組み”を提供する『情報流通事業』へと発展し
   ていきたいと考えています。

  ○このような事業の変革を実現するためには、アプリケーション、ネットワーク・
   サービス、ネットワーク基盤技術の調和のとれた発展が必要不可欠であり、その
   ための原動力たるべきR&Dの今後の目標は、3つのキーワードに要約されます
   。
   ・エレクトラム・サイバー・ソサイエティ <アプリケーション技術>
   ・メガ・メディア <ネットワーク・サービス技術>
   ・フォトニック・ネットワーク <ネットワーク基盤技術>

2.エレクトラム・サイバー・ソサイエティの実現に向けたR&D
 <電子的な情報、商品、貨幣が流通する豊かな未来社会>
 ○NTTでは、便利で安心な情報社会システムの実現に向けて、エレクトロニック・
  コマース、モバイル・コミュニケーション等、多彩なサービス実現に向けた基盤技
  術の研究や標準化を着実に推進してきました。
  ・MPEG2標準化(エミー賞受賞)
  ・NW、ICカード併用型の実用性の高い電子現金システム
  ・高臨場感マルチメディア通信会議システム
  ・音声認識技術を駆使した腕時計タイプの超小型端末

 ○NTTは、マルチメディアの成熟期に向けて、単なる情報の伝達に加え、ビジネス
  のサプライヤとユーザがネットワーク上で直接触れ合える『出会い』と『発見』、
  『感性の伝達』を可能とする超現実の魅力ある商空間や遊空間を提供し、エレクト
  ラム(*)・サイバー・ソサイエティの実現を目指します。
  *:古代ギリシャ貨幣に用いた琥珀金

 ○そのためには、情報共有の仕組みとして情報共有プラットフォームに加えて、情報
  流通の仕組みを提供する“情報流通プラットフォーム”の確立に向けた研究開発を
  推進していくことが重要であると考えています。
  【情報共有プラットフォーム】
   ・セキュリティ技術(暗号、認証、署名)、通信プロトコル技術(マルチキャス
    ト等)、情報圧縮技術、ディレクトリ技術、データベース技術(事例・常識ベ
    ース等)、サーバ技術(推論サーバ等)、等
  【情報流通プラットフォーム】
   ・ディジタル・キャッシュ技術、セイフティ・コマース技術、メガ・ライブラリ
    技術、バーチャル・リアリティ技術、知的エージェント技術、サイバー・スペ
   ース技術等

3.メガ・メディアの実現に向けたR&D
 ○NTTでは、マルチメディアの萌芽期から成長期への移行を目指して、アクセス系
  の光化を着実に推進するとともに、コンピュータ通信をより便利にご利用いただく
  ために、多様なサービスグレードに応じた多彩な料金体系の実現によるマルチメデ
  ィアサービスの提供を計画しています。
  【アクセス網光化の促進】(7月24日発表)
   ・新光アクセスシステムの開発導入
  【今後提供予定のサービス】(10月9日発表)
   ・OCNサービス(低速系、高速系)
   ・ATM専用サービス
   ・超高速セルリレーサービス

 ○マルチメディアの成熟期に、誰もが、手軽に、エレクトラム・サイバー・ソサイエ
  ティに参加するためには、『より高速』の、『より安価』なネットワーク・サービ
  ス、すなわち、メガ・メディアを実現していく必要があります。

 ○NTTは、このメガ・メディアの実現に向けて、技術的限界にチャレンジしていき
  ます。
  【研究開発の目標】
   ・10Mビットを1秒で送る次世代のマルチメディア・ネットワーク・サービス
    を2005年までに月額1万円程度のコストで実現することを目標に研究開発
    を推進します。
    −映像系、サーバ系、メール系のそれぞれに適した多様なネットワーク・サー
     ビス
    −10Mビット〜150Mビットの多彩な速度メニュー
  【チャレンジすべき技術】
   ・ATM PDS(Passive Double Star))によるシェア
    ド・アクセス技術
   ・高速・大容量ATMバックボーン(リンク/ノード)技術
   ・セルフサイジング等のネットワーク・コントロール技術

4.フォトニック・ネットワークの実現に向けたR&D
 ○電話に代わって、メガ・メディアがトラヒックの主流となるマルチメディア成熟期
  には、極めて超高速・大容量通信を実現するためのネットワーク基盤技術が必要と
  なります。

 ○この次世代のネットワーク基盤技術が光波通信によるテラビット・ペタビットレベ
  ルの全光化ネットワーク技術、すなわち、フォトニック・ネットワークです。
  【現状の光通信】         【フォトニック・ネットワ−ク】
   ・光の点滅による情報伝送−−−−−・光を波長として利用した情報伝送
   ・信号処理は電気レベル−−−−−−・信号増幅、スイッチング等すべての処理
                     を光レベルで実行
 
 ○NTTは、これまでに培ってきた世界トップレベルの光技術に更に磨きをかけ、新
  通信原理に基づくフォトニック・ネットワーク技術の確立に向けて、基礎からシス
  テム化技術に至る幅広い研究開発を積極的に推進していきます。
  【これまでの研究成果】
   ・波長多重技術による1テラビット光伝送
   ・超テラビット級光ATMノードの試作
  【今後の研究開発項目】
   フォトニック・ネットワ−クの実現には、光学理論−光デバイス技術−システム
   化技術の一体的推進が必要
   ・光学理論−−−−−波長多重を含む新しい通信原理の創造
   ・光デバイス−−−−技術−光増幅、光合波/分岐、光メモリ
   ・システム化技術−−光ATM交換機、光情報処理、光伝送ノ−ド、光波アクセ
             ス技術

 ○このフォトニック・ネットワークの実現は、光情報処理を含めた新たな光産業構築
  への架け橋になるものと考えております。

lll.具体的施策
  
  情報通信のマルチメディア化、グローバル化という大きなうねりの中で、エレクト
 ラム・サイバー・ソサイエティ、メガ・メディア、フォトニック・ネットワークの実
 現に向けた研究開発を推進するにあたっては、お客様と一体となった研究開発に加え
 、Center Of Excellenceとして「世界の研究者が集まるマルチ
 メディア研究のコア」となるべく、グローバルな視点で、多種・多様な分野の研究者
 、研究機関等と連携した研究開発活動、並びに、標準化活動を展開していくことが必
 要不可欠であると考えています。

1.オープン・ラボの創設
  通信や情報分野に加えて、社会科学、心理学等多彩な分野の研究者が世界中から参
 加するオープン・ラボを創設し、世界の研究者、学術界への貢献を目指します。

 ○京阪奈R&Dセンタ、武蔵野R&Dセンタをオープン・ラボの拠点として大学や他
  研究機関に開放するとともに、高臨場感通信等最先端の技術で世界を結ぶバーチャ
  ルかつオープンな共同研究の場を構築します。
  ・マレーシアMSCと連携した技術者育成機関としても活用

 ○社会科学、心理学、法学等多彩な分野の研究者が、世界中から参加することにより
  、エレクトラム・サイバー・ソサイエティにおける新しい法律・倫理・慣習を含め
  たコミュニケーションの学際的研究を推進します。

 ○将来的には、異文化交流を活性化するNTTマルチメディアサイバー大学への発展
  を目指します。

2.エレクトラム・サイバー・ソサイエティ・テストベッド
  新たなマルチメディア市場を創造していくためには、世界各国のお客様と一緒に研
 究開発を進めることが必要不可欠です。NTTでは、これまでにマルチメディア共同
 利用実験、VI&P総合実験等を展開してきましたが、今後は、より先進的、かつ、
 グローバルなテストベッドを構築し、実践的トライアルを更に重視した研究開発を進
 めていく考えです。

 ○米国西海岸に設立したマルチメディア研究センタ(9月11日発表)、マレーシア
  MSCプロジェクト、チリ大学プロジェクト等と協力して、エレクトラム・サイバ
  ー・ソサイエティのための情報流通テストベッドを構築します。

 ○バーチャル・リアリティ技術、コンピュータ・グラフィックス技術、オーディオ・
  ビジュアル技術等最先端技術を融合し、お客様やメーカ、あるいは将来のビジネス
  を考えている人や企業に自由にご利用いただきながら、未来社会=エレクトラム・
  サイバー・ソサイエティの検証とシステムのリデザインを展開していきます。

 ○将来的には、欧州等をはじめ、テストベッドの一層の拡大を目指します。

3.フォトニックNWフォーラム
  新しい通信原理の創出と光情報処理を含めた新たな光産業の創造に向けて、フォト
 ニック・ネットワークの研究をオープンに行う場として、フォトニックNWフォーラ
 ムを創設し、研究開発の加速、並びに、グローバルな技術普及の促進を目指します。

 ○世界の主要メーカ、キャリア、並びに大学の参加によるフォーラムを設立します。

 ○フォトニック関連技術のフィージビリティの検証、相互接続性の確認等に向けた日
  米欧を結ぶフォトニック・ネットワークの相互接続実験を通して、従来とは異なる
  革新的なネットワーク技術の研究開発を加速します。

 ○相互接続実験を通したフォトニック関連システムのデファクト標準化、並びに、そ
  れに基づくグローバルな技術普及を促進していきます。

4.国家社会的プロジェクトへの貢献
   NTTは研究開発を推進することにより、我が国の情報通信の創意ある発展に努
  める責務を有しているとの認識から、NTTの保有する技術力をベースとして、情
  報通信社会の発展に向けた国家社会的プロジェクト等へ積極的に貢献していく考え
  です。

  ○医療関連
   ・医療情報のネットワーク化に向けた公的プロジェクトへの技術貢献
    (例)医療システムの効率化、高信頼ネットワークの構築、高度医療技術の利
       用範囲拡大、遠隔診断精度の向上、等

  ○自治体プロジェクト関連
   ・地域の情報化に向けた自治体プロジェクトへの技術貢献
    (例)オンライン行政サービスの実現、災害対策ネットワークの構築、等

  ○地球環境対策関連
   ・地球環境保全に向けた公的プロジェクトへの技術貢献
    (例)災害に強くクリーンで省エネルギー化が可能なシステムの実現、地球環
       境センシングネットワークの構築、等

  ○エレクトロニック・コマース関連
   ・エレクトロニック・コマースの実用化に向けた公的プロジェクトへの技術貢献
    (例)セキュリティ技術、電子現金システム、等

lV.おわりに
  
  技術の進歩が早く、技術の多様化・多層化・多項目化が進むマルチメディア時代に
 おいて、NTTのR&Dは常に数歩先を見据えて、お客様ニーズの先にある将来の夢
 を描ける研究開発を推進していきたいと考えています。
  そうすることがマルチメディアの成熟期を一日でも早く迎えることに必ずつながる
 と信じて、日々、たゆまぬ努力を続けてまいる所存です。


          --21世紀に向けて変革するNTTのR&D--
    



          --サイバーソサエティを支えるR&D--
    



          --世界をリードするNTTのR&D--
    




                              


 

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