(報道発表資料)
2021年1月28日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)は、広帯域な光増幅を可能とする光パラメトリック増幅技術(OPA)(※1)を光増幅中継器に適用した広帯域波長多重光伝送実験に世界で初めて成功しました。
NTTは、独自の分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN: Periodically Poled Lithium Niobate)(※2)導波路デバイスを用いて、偏波多重光多値信号に対応した光パラメトリック増幅中継器を開発し、1波長あたり毎秒800ギガビットの光信号を多重した10THzの広帯域波長多重信号を用いて、世界初の光パラメトリック増幅器による広帯域光増幅中継伝送に成功しました。同時に、増幅器に入力される光信号の波長数の変動に対して安定した光増幅が可能なことを確認しています。現在、広く用いられている光増幅器(EDFA)の帯域は4THzであり、入力波長数の急激な変動に対しては、過剰応答が発生します。今回開発した光パラメトリック増幅中継器は、従来増幅器の2.5倍以上の10THz超の帯域を増幅でき、その広帯域性と低歪み性から、NTTが提唱するIOWN構想(*)において、豊富な波長資源が活用されるオールフォトニクスネットワークの実現に向けた更なる大容量光増幅技術として期待されます。本技術の詳細は、2月1日発行の論文誌、IEEE Journal of Lightwave Technologyの特集号[1]に掲載予定です。
現在の光ファイバ伝送システムでは、光増幅器EDFAが増幅可能な約4THzの光帯域に、光信号を波長多重し、光信号1波長あたりの伝送容量をデジタルコヒーレント技術(※3)により拡大することで、伝送システムの大容量化を行ってきました。NTTが提唱するIOWN構想を構成するオールフォトニクスネットワークにおいては、豊富な波長資源を活用したフレキシブルな光ネットワークの実現をめざしており、従来の1波長あたりの大容量化とともに、利用可能な波長資源(光帯域)の拡大が求められています。NTTでは、広帯域かつ低歪みな光増幅技術として、PPLN導波路[2]を用いた光パラメトリック増幅に着目し、研究開発を進めてまいりました。PPLN導波路による光パラメトリック増幅では、単一偏波の信号のみが増幅可能であり、単純な光増幅にとっては不要な位相共役光が発生するため、現在デジタルコヒーレント方式で用いられている偏波多重光信号の光増幅中継器として、更なる広帯域化やトラヒックに応じた安定な光信号の挿入抜去を行う際の課題となっていました。
今回、モジュール化したPPLN導波路(PPLNモジュール)を8個用いて、新たな増幅器構成を提案し(図1)、偏波多重光信号の増幅および、利得15dB以上で10.25THzの増幅帯域を実現しました(図2)。本成果では、NTTの超高速信号生成技術[3]を用いた1波長あたり毎秒800ギガビットの偏波多重PS36QAM信号(※4)を検証信号として、利得飽和領域において、単一波長、波長多重信号入力ともに低歪な信号増幅を確認しています(図3①)。また、オールフォトニクスネットワークにおける波長資源の活用で想定される波長数の高頻度な変動を模擬し、1波長と41波長の入力信号切り替えに対する高速応答性も確認しました(図3②)。さらに、開発した光パラメトリック増幅器を、1波長あたり毎秒800ギガビットの波長多重信号伝送に光増幅中継器として適用し、光帯域が10.25THzまで拡張可能なことを実証しました(図4)。
本成果で示した光パラメトリック増幅の10THzを超える広帯域性と増幅性能は、光ファイバが最も低損失となる波長領域(S,C,L帯)をカバーし、従来増幅器(EDFA)の2倍以上の広帯域化が期待できます(図5)。今後は、1波長あたりの大容量化とあわせて、IOWNにおけるオールフォトニクスネットワークの実現に向けた波長資源の拡大技術として検討を推進し、10THzを超える広帯域増幅中継伝送技術の確立をめざしていきます。
先端技術総合研究所 広報担当
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