音声品質評価法

3.音声品質の主観評価法

3.1.MOS (Mean Opinion Score)

2章でも述べましたように、MOSは最も広く用いられている主観品質評価法といえます。MOS評価は、ITU-T勧告P.800に規定される「オピニオン評価」により、評価対象系の品質を測定します。評価対象とする品質要因により、MOS評価の対象は受聴品質と会話品質に分類ができます。それぞれの特徴は以下の通りです。

1)受聴品質
お客様が音声を受聴した時に感じる品質を表します。評価対象音声を再生して評価者が受聴する片方向の評価実験で測定します。遅延やエコーなど片方向では体感することの出来ない品質要因を考慮することが出来ません。
2)会話品質
お客様が会話をした時に感じる品質を表します。2名以上の評価者が双方向の通話を行うことにより評価します。遅延やエコーなど双方向通話によって生じる品質要因を測定することが出来ますが、評価実験に時間を要する、あるいはリアルタイム通話を実現する実験系が必要となるなどの困難性があります。

受聴品質、会話品質どちらを評価するにしても全体的なMOS評価の流れは同一であり、評価者に評価対象系を介した受聴/会話を行っていただいた後に、絶対範疇尺度法(ACR: Absolute Category Rating)を用いて絶対的に評価してもらいます。

(図3.1.1)MOS評価の流れ

(図3.1.1)MOS評価の流れ

図をクリックすると、拡大図が別ウィンドウで開きます。

このときの評価カテゴリは下図に示すように5つに分類され、それぞれには1〜5までの評点が与えられています。ITU-T勧告内における英語表記を()内に示します。充分な数の評価者に対してACRによる評価をしていただき、全員の評点の平均値をMOS値と呼びます。 注:日本語訳と英語が厳密に対応しないことや、国民性の違いに起因して、日本人のMOS値は欧米人のMOS値に比べて低くなることが報告されています。したがって異なる言語による評価結果を単純に比較することは出来ません。

(図3.1.2)ACRの評価カテゴリ

(図3.1.2)ACRの評価カテゴリ

IP電話の総合的な通話品質は会話品質に基づいて議論されるべきですが、符号化歪みやパケット損失歪みのように双方向性のない品質要因のみの評価は、受聴品質に基づいて行うことも可能です。評価対象とする品質要因によって、適切な品質評価法を選択することが好ましいといえます。