映像品質評価法

2.映像品質の客観評価法

2.4.客観評価法の国際標準化動向

(2) 映像品質客観評価モデル

映像メディアの客観品質評価技術は、利用シーンや入力情報の違いにより、以下の5つに分類されて検討されています.具体的には、図2.4.2.1に示すように、Tメディアレイヤモデル、Uパケットレイヤモデル、Vビットストリームレイヤモデル、Wハイブリッドモデル、Xプランニングモデルです.表2.4.2.1に各モデルの特徴を示します。

図2.4.2.1 映像メディアの客観品質評価法の入力情報(プランニングモデルを除く)

図2.4.2.1 映像メディアの客観品質評価法の入力情報(プランニングモデルを除く)

図をクリックすると、拡大図が別ウィンドウで開きます。

(表2.4.2.1)各種客観品質評価モデルの特徴
分類 メディアレイヤ
モデル
パケットレイヤ
モデル
ビットストリームモデル ハイブリッド
モデル
プランニング
モデル
入力 映像画素信号 パケットヘッダ情報 パケットヘッダ・ペイロード情報 左記の組合せ ネットワークや端末の品質設計・管理パラメータ
用途 符号化品質管理

端末機器の性能比較
エンド端末組込型ユーザ品質管理

品質劣化要因切り分け
コンテンツ属性を加味した品質管理
(利用シーン/取得可能な品質情報に応じてモデルを使い分ける)
机上のサービス品質設計・管理
技術
一覧
  • ITU-T J.144
    (SDTV, FR)
  • ITU-T J.247
    (QCIF-VGA, FR)
  • ITU-T J.246
    (QCIF-VGA, RR)
  • ITU-T J.249
    (SDTV, RR)
  • ITU-T J.341
    (HDTV, FR)
  • IETF RFC4445 MDI
  • ITU-T P.NAMS
    (検討中)
  • ITU-T P.NBAMS
    (検討中)
  • ITU-T J.bitvqm
    (検討中)
  • ITU-T G.1070
    (TV電話
    サービス用)
  • ITU-T G.OMVAS
    (検討中)
Tメディアレイヤモデル

メディアレイヤモデルは、映像メディア信号を用いて品質劣化を定量化することで主観品質を推定するモデルで、コーデックのパラメータチューニングやサービス品質の実力把握などに利用できます。現在までに国際標準化が完了しているメディアレイヤモデルは、(A)ITU-T勧告J.144として標準化され、テレビジョン映像(SDTV)を評価対象としたFRモデル、(B)ITU-T勧告J.247として標準化され、PC・携帯端末向けの映像(QCIF〜VGA)を評価対象としたFRモデル、(C)ITU-T勧告J.246として標準化され、PC・携帯端末向けの映像(QCIF〜VGA)を評価対象としたRRモデル、(D) ITU-T勧告J.249として標準化され、テレビジョン映像(SDTV)を評価対象としたRRモデル、(E)ITU-T勧告J.341として標準化され、ハイビジョン映像(HDTV)を評価対象としたFRモデルです。

Uパケットレイヤモデル

パケットレイヤモデルは、IPやRTPなどのパケットのヘッダ情報のみを用いて主観品質を推定するモデルとして分類されています。メディアレイヤモデルのようにメディア信号を復号しないことから、処理負荷が非常に軽く、サービス提供中に実現品質を把握する「インサービス品質管理」への適用が期待されています。メディア情報を用いず品質を推定するため、特に映像・オーディオメディア品質のコンテンツ依存性を考慮した評価は本質的に困難です。このため、取り扱うコンテンツ属性の仮定や、符号化方式などの各種システム情報を事前に得ておくことが必要になります。ITU-T SG12では本技術の標準化を議論しており、2012年の勧告化を目指しています。この勧告案は暫定的にP.NAMS(Non-intrusive parametric model for the Assessment of performance of Multimedia Streaming)と呼ばれています。

Vビットストリームレイヤモデル

ビットストリームレイヤモデルは、パケットのヘッダ情報に加えて、復号前の符号化ビット系列情報(ペイロード情報)を用いて主観品質を推定するモデルです。ペイロード情報までを利用することにより、パケットレイヤモデルでは扱えなかったコンテンツ依存性を考慮した評価の実現が期待されています。パケットレイヤモデルよりも演算量が多くなることから、ユーザ端末等への実装を考えた場合にはCPU負荷等に配慮する必要があります。また、ペイロード情報が暗号化されている場合は暗号化の解除が必要になることから、パケットレイヤモデルとビットストリームモデルは、適用するサービスの仕様に応じて使い分けていく必要があります。ITU-T SG12では本技術の標準化を議論しており、2012年の勧告化を目指しています。この勧告案は暫定的にP.NBAMS(Non-intrusive Bit-stream-layer Assessment of Multimedia Streaming)と呼ばれています。

Wハイブリッドモデル

ハイブリッドモデルは、上記の3つのモデルを組み合わせて構成することで、簡易かつ精度良く主観品質を推定するアプローチで、インサービス品質管理などにおいて取得可能な情報を最大限利用するためのモデルです。ITU-T SG9では本技術の標準化を行うべく基礎検討を開始しており、2012年の勧告化を目指しています。この勧告案は暫定的にJ.bitvqm (Hybrid perceptual/bit-stream models for objective video quality measurements)と呼ばれています。

Xパラメトリックプランニングモデル

前述までの客観品質評価モデルが、メディア信号、パケット情報、ビットストリーム情報などを入力として主観品質を推定するモデルであったのに対して、パラメトリックプランニングモデルは、ネットワークや端末の品質設計・管理パラメータ(例えば、符号化ビットレートやパケット損失率など)を入力として主観品質を推定するモデルです。評価対象となる符号化方式やシステム毎に主観品質評価特性を予め求め、データベース化しておく必要がありますが、サービス設計段階において机上で効率的に品質設計ができるメリットがあります。ITU-T SG12では本技術の標準化を議論しており、この勧告案は暫定的にG.OMVAS(Opinion Model for Video and Audio Streaming applications)と呼ばれています。